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〔大前研一「ニュースの視点」〕KON530「空き家問題・国内経済~心理経済学の観点から消費増税を考える」

2014年8月15日

本文の内容
  • 空き家問題: 国内空き家率13.5%
  • 国内経済: 増税後の谷、予想以上

空き家問題は、各自治体が積極的に問題解決に乗り出すべき



総務省が29日、発表したところによると、

国内の住宅総数に占める空き家の割合が2013年10月時点で

過去最高の13.5%になりました。


人口減少が深刻な地方を中心に増え、

戸数も最多の820万戸に上っています。


中古住宅の活用が進まないうえ、空き家を取り壊すと

税負担が重くなる制度も空き家が増える原因と見られています。


また65歳以上の高齢者がいる世帯が2013年10月時点で

2086万世帯となり、全体の40%に達したとのことです。


おそらく、今後このような世帯も空き家化していく

ことになるでしょう。


空き家率は1本調子で上昇しており、820万戸というのは

大きな数字です。


空き家がさらに拡大して、「空き村」「空き町」

になっている地域もあります。


空き家は固定資産税も支払っていないでしょうから、

市町村にとっても意味が無い存在だと言えます。


自治体がポリシーを決めて、積極的に問題解決に

取り組むことが重要になってくると思います。


都道府県別の空き家率を見ると、

トップが17.2%の山梨県で、愛媛県、高知県と続いています。


田舎は厳しいのでは?と感じるかも知れませんが、

決してそうではありません。


例えば、沖縄県、宮城県、山形県などは

空き家率は10%程度で高くありません。


空き家をどうするか?というのは、その活用を考えれば

商売・ビジネスにもつながるはずですから、民間の解決策も考慮に入れつつ、

各自治体が積極的に問題解決に乗り出す必要があると私は感じています。


消費税率を10%にするかどうか。ポイントは心理予測。



日経新聞は、先月31日『増税後の「谷」予想以上』

と題する記事を掲載しました。


経済産業省が発表した6月の鉱工業生産指数速報値は前月比3.3%

低下したことを受け、民間のエコノミストがまとめた推計で、

実質国内総生産(GDP)は4~6月に年率7.1%減となりました。


1997年の消費増税時よりも大きく減った形で、

冷え込んだ個人消費がどう立ち直るかが、

景気の先行きを左右すると指摘しています。


増税前の政府の自信に満ちた演説によれば、

「増税後の谷は乗り越えられる」という話でしたが、実質GDPは

7%も低下し、年間で見ても、2%成長は絶望的な状況です。


おそらく1.2%程度で推移するでしょう。


このような事態になると、結局、アベノミクスという

経済政策は何だったのか?という根本を問われることになるでしょう。


消費活動の内訳を見ると、一部だけ活況で大部分は

倹約型になっています。


これは、消費税8%という数字に対する「心理的な抵抗の大きさ」

を乗り越えられていないからです。


買い物をするとき、自分の予算に8%の消費税が加わると、

予算を上回るように感じてしまうのだと思います。


オーストリアなどを旅行すると、消費税率25%で支払うわけですが、

旅行者としての立場と生活者としての立場では意味合いが違います。


生活をしながらの8%は大きい数字であり、

来年10%にするかどうかは議論すべきでしょう。


経済予測というよりも、

10%になったときの消費者の心理予測が重要です。


今は高齢者の人たちが頑張ってお金を使っていますが、

一般の人達の心理は冷え込んでいます。


このような現状を見ると、消費税率を10%にするのならば、

生活必需品には軽減税率を導入することも

検討する必要があると思います。


私は長年にわたり心理経済学を提唱していますが、

消費税の問題はまさに「消費者の心理」をどう読み解くかが

ポイントになるでしょう。

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