大前研一「ニュースの視点」Blog

KON1029「静岡県・川勝知事/リニア中央新幹線/政治資金問題」

2024年4月13日 リニア中央新幹線 川勝知事 政治資金問題 静岡県

▼静岡県・川勝知事 6月県議会をもって辞職
学歴偏重、人を見下す人柄が招いた辞職


静岡県の川勝知事は2日、6月の県議会で辞職する考えを明らかにしました。川勝氏は1日の県入庁式の訓示で「県庁はシンクタンク、毎日野菜を売ったり、牛の世話をしたり、物を作ったりなどと違い、基本的に皆さまがたは頭脳、知性の高い方たち。それを磨く必要がある」などと述べ、波紋が広がっていましたが、川勝氏は5日、差別的だと理解する人が急速に増えているとして、自身の発言を撤回する方針を示しました。

この人は非常に鈍感な人です。川勝氏はオックスフォード大学でドクターを取っていることが自慢で、世界のトップクラスの大学で学んだ人は尊敬しますが、それ以外の人は見下しています。そういう人物なのでどうしようもありませんが、そんな人を選んできた静岡県民にも若干の反省が必要かもしれません。ちなみに川勝氏は、後継知事として渡辺周元防衛副大臣に出馬を打診したそうです。

川勝氏は、これまでにも多くの問題発言をしてきました。自民党会派のことを「やくざ」「ごろつき」と呼び、日本学術会議任命拒否の問題においては菅首相の「教養レベルが露見した」と発言しました。早稲田大学とオックスフォード出身の自分に比べて、菅首相は法政大学出身だから教養レベルが低いという考えです。また学長を務めていた大学の女子生徒について、「11倍の倍率を通ってくるんですから、皆きれいです」と発言しました。さらには浜松市の候補者を応援に行ったときには、対抗馬の地元である御殿場市について「御殿場はコシヒカリしかないけれど、こちらには米や魚など何でもある」と言って御殿場市にこてんぱんに叱られました(笑) さすがに川勝氏は謝りましたが、渡辺周氏は御殿場市に近い沼津市の出身です。そしてまた県内のサッカー強豪校に触れたときは、「ボールを蹴るのが一番重要なこと、勉強よりも何よりも」と、ここで急に勉強以外のことを強調しました。シンクタンクである県庁の中枢にいる自分、一番いい学校であるオックスフォードでドクターを取った自分だからと、人を見下しているのです。

静岡県の経済活動で最も多いのは製造業で、特に浜松を含む遠州には世界一の会社がたくさんあります。そして日本一を誇る農林水産品も多くあります。温州ミカン、メロン、芽キャベツ、生シイタケ、カツオなどがあり、カツオの一本釣りは高知ではなく、静岡県だったことは驚きです。他にもアジや、昭和天皇が研究をしていたタカアシガニなど、いろいろなものがあります。静岡はあらゆるものに恵まれ、知事がどういう人物であっても栄えていると言えます。

それから川勝氏は、静岡市長と仲が悪いことでも知られています。静岡市の真ん中にある葵区には井川ダムがありますが、川勝氏は大井川の水の問題で、リニアの工事に関してはJR東海にストップをかけていました。予算を握っているからなのか、知事の意見が通っていたことに静岡市長はとんでもないことだと葛藤していました。基本的には誰とでも仲が悪く、いつも上から目線なのが川勝氏という人物なのです。

ところで静岡県は新幹線が通っている長さは日本一ですが、のぞみは止まりません。それが悔しさの根源であり、静岡県民は皆、JR東海に対する恨みを持っています。私は熱海で旅館の経営をしているのですが、のぞみが止まらないことには私も困っています。東京からだと46分で熱海に来れますが、西からではそうはいきません。先日も熱海の宿で花火鑑賞をしていただこうと招待したのですが、そのうちの1名が大阪の方で、早めに出なければいけないからと、最初の花火を2発だけ見てお帰りになりました。

私は昔、のぞみの何本かに1本を静岡に止まるようにJR東海に申し入れるように「あんたもそれで妥協しねえか?」と、川勝氏に提案したことがあります。私がMITのドクターだと知っているので、川勝氏は私をばかにはせずに対等な目線でいてくれます(笑) 私はJR東海との仲介役を買って出ようとしましたが、「そんな問題じゃありません」で終わってしまい、非常に残念でした。

▼リニア中央新幹線 リニア「迷走の6年」転機
そもそもリニアは必要か、JR東海は原点に立ち返って証明を


日経新聞は4日、『リニア「迷走の6年」転機』と題する記事を掲載しました。これは静岡県の川勝知事が辞意を表明したことで、リニア中央新幹線計画の行方に注目が集まっていると紹介。静岡工区の建設が進展するとの見方から、3日の東京株式市場でJR東海の株価が一時上昇しましたが、難工事への対応や人手不足、資材高騰などで建設費はさらに膨らむと見られ、早期開業に向けた道筋はなお見えないとしています。

先ほどお話ししましたようにリニアは葵区を通りますが、静岡には停車しません。山梨、長野、岐阜には止まりますが、静岡には駅さえありません。リニアが通過する県には駅を一つつくって、その費用はその県に負担してもらうというのが原則であり、神奈川県は相模川辺りに、山梨県は山梨駅から離れたところに、長野県は中津川辺りに駅ができる予定です。静岡県に駅がない理由ははっきりしており、リニアが通るのは掘り始めた場所から1200メートル下といった、どうしようもない深さだからです。ちなみに川勝氏が難癖を付けている大井川の問題は、リニアを反対する理由にはならないと私は思います。

しかし、これまで私は何度も言っていますが、私はリニアには反対です。リニアは時速500キロ、対する今の東海道新幹線はフルスペックで走った場合には350キロ以上の速度が出ます。それらを鑑みると、品川発とするリニアが有利となるのは岡山辺りとなります。また全く止まらなければ大阪へは1時間で行けますが、途中で停車するとなればそうはいきません。名古屋まででは、メリットは全くないのです。しかし現在は、名古屋から先のプランがJR東海にはありません。

さらに名古屋までのリニアを利用する人がいない理由はまだあります。地下20メートルまで下りて乗車し、95%がトンネルのところを何百キロで走るとなれば、怖くて仕方がないと思いませんか。今ある新幹線でも2時間半で名古屋には行けますし、リニアを利用したところで1時間や1時間半程度の違いであれば、怖い思いをしてまで乗る人はいないと思います。しかもリニアはJR東海であるため出発点は品川となり、東京から乗る人はわざわざ品川まで向かう必要があります。

以上のことからリニアにはメリットはないと、私は再三さまざまなところで書いています。決して反対ではありませんが、JR東海さん、気は確かですかと思っているだけです。岡山まで行くのであればメリットはあるでしょう。しかしそうなったとしても、東京から岡山までの利用客はどれくらいいるか、これがまた問題となります。理想は大阪までノンストップで行くことで、1時間で行ければ飛行機を使う人がいなくなるためメリットはありますが、ルートさえ今は決まっていません。そして現在ルートが決まっているところにおいても、工事はほとんど進んでいません。

リニアが完成するのは、少なくとも何十年も先のことになると私は思います。JR東海は非常に苦しい状況で、計画当初は品川・名古屋間の建設費は5兆円としていましたが、今は7兆円まで増加しています。最初はJR東海が自己負担で事業化する方針を立てていましたが、安倍内閣の時代にJR東海・葛西氏と安倍氏の仲がよかったことから国はリニアのために金を出しました。私は納税者の1人ですので、「JR東海さん、ご苦労なことですが、リニアが完成したところで乗る人はいませんよ、もう一度原点に戻って証明してください」と強く言えると思います。

▼政治資金問題 安倍派幹部など39人の処分発表
諸悪の根源をはっきりさせない限り、決着はない


自民党の党紀委員会は4日、派閥の政治資金パーティーをめぐる裏金事件に関わった議員ら39人の処分を決定しました。最も重い処分となったのは安倍派幹部の塩谷元文科大臣と世耕前参院幹事長の離党勧告で、世耕氏は直後に離党届を提出。一方、岸田首相と二階元幹事長は処分の対象から外れたことから、自民党内からは基準が曖昧で場当たり的など不満の声が上がっています。

この件については、決着しない可能性が高いような気がします。恐らくは森氏が諸悪の根源だと思いますが、政倫審においても下村氏はそういった発言をしませんでした。岸田氏は電話で森氏に聞いた、調査をしたと言ってはいますが、森氏は安倍氏の師匠に当たる人であるため、真実はどうだと呼び出して問いただすことはできないのでしょう。

---この記事は2024年4月7日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています。
※本ブログは通常、毎週金曜日の朝7時に更新されておりますが、今週はサーバーエラーの影響で更新作業が遅延いたしました。更新を心待ちにされている読者の皆様には、多大なるご迷惑をおかけしてしまい、心よりお詫び申し上げます。

問題解決力トレーニングプログラム

問題解決力トレーニングプログラム

大前研一 ニュースの視点 Blogトップへ

  • メルマガ

    ニュースの視点メルマガ登録

最近の投稿記事

ニュースの視点メルマガ登録

ブログの更新情報

バックナンバー

  • facebook
  • twitter

各種ソーシャルメディアで様々な情報をお届けしております。

大前研一 ニュースの視点