大前研一「ニュースの視点」Blog

KON1026「東日本大震災/東京電力HD/福島第一原発/欧州AI規制/生成AI活用」

2024年3月22日 東京電力HD 東日本大震災 欧州AI規制 生成AI活用 福島第一原発

▼東日本大震災 津波移転跡地の3割が活用できず
3・11からの復興は、このまま中途半端に終わるのか


東日本大震災で津波に襲われた岩手、宮城、福島で、住民が高台などに集団移転した跡地のおよそ3割について、活用の見通しが立っていないことが分かりました。津波で浸水した面積は東京23区のおよそ9割に及びますが、交通アクセスのよい地域は観光農園などを開き、人気スポットになっている一方、私有地が点在する地域は土地を集約することができず、企業誘致が進まない現状です。

例えば石巻は、津波で何もかも流されてしまいました。私は以前、被災した地域を国が津波プレインに指定して土地を買い上げ、今後は人を住まわせないとすることを提言しました。しかし、それは実現していません。現在、被災地には私有地を持つ人々がばらばらと戻り始め、一方ではそこには戻らず福島や宮城など別の地域に移り住んだ人も多くいます。私有地が点在しているため大規模開発ができず、大変中途半端な状況です。

これは全て政府の問題です。関東大震災の時には政府が素早く動いて復興を推し進めましたが、東日本大震災当時の民主党政権はひどいものでした。ちなみに現自民党政権も、今年の能登半島地震では似たようなものです。このような未曽有の災害においては、復興計画の基本方針を迅速に立て、国が先頭に立って導いていかなくてはなりません。

私は地震の後、バイクで被災地を回りましたが、人が住んではいけなかったと思われる場所がかなりありました。歴史を振り返ると、チリ地震など何百年に1度は津波を伴う大地震が起きています。3月11日が来るたびに私は政府の対応の悪さを思い出し、今後も大変残念な気持ちになることでしょう。

▼東京電力HD 東電、遠い利益目標
実質的倒産である事実を受け止めた上での、目標設定を


時事通信は10日、「東電、遠い利益目標」と題する記事を掲載しました。福島第一原発事故の発生から13年が経過する中、東京電力ホールディングスは他の電力会社と火力発電事業を統合するなどの経営改革を進めてきました。しかし電力の小売自由化で競争力が低下したほか、新たな事業提携戦略も描けていない現状で、年間の利益目標4500億円の実現にはほど遠いとしています。

東京電力は原子力損害賠償・廃炉等支援機構によって生かされているようなもので、実質的には倒産していると言えます。首都圏に電力を供給する東京電力がひっくり返って大混乱となるのを避けるため、実態は倒産でありながら、お金の注入で生かされています。柏崎刈谷原発が再開すれば挽回できると考えられていましたが、その見通しは全く立っておらず、利益目標を立てることすら無駄なことであると思います。実質は“倒産”しているということを前提に考えなければいけません。

▼福島第一原発 核燃料デブリ取り出し方法を提案
デブリ取り出しは諦め、国は土地買取に動くべき


福島第一原発の廃炉の進め方を助言する原子力損害賠償・廃炉等支援機構は8日、3号機の燃料デブリの取り出しに関する報告書を公表しました。デブリに水をかけて冷やした後、原子炉の上や横から取り出す方法や、放射線量が高い部分や不安定な部分は充填剤で固め、デブリを掘削して取り出すことなどを提案したもので、これを受け東京電力は今後1、2年で具体策を検討する方針です。

こちらについても無駄な抵抗で、デブリを取り出すことはできません。これまでは、少しずつ削り出すとしていましたが失敗しています。今後は固めてまとめて出すなどと提案していますが、チェルノブイリやスリーマイルのように今の場所で完全冷却が終わるまで冷やし続け、固めてしまうというのが正解でしょう。削って出すのは無謀の極みです。大熊町や双葉町から国が土地を買い上げ、国有化とするしかありません。

ただし今の契約では、原子炉の寿命が終わった時点で廃炉にして更地にして返すことになっています。デブリの取り出しは無理であるため、早急に大熊町や双葉町に人が戻ることを期待させるのはやめるべきです。しかし東電には意思決定者がおらず、経産省も同様です。経産省の担当者は既に5人も変わっていますので、今のままではどうしようもありません。

▼欧州AI規制 AI包括規制案を可決
AI開発で遅れをとったヨーロッパでは、ルール作りで先行か


欧州議会は13日、AIの開発や利用を巡る包括規制の最終案を可決しました。AIのリスクを4段階に分類し、リスクに応じた措置を企業に義務付けるほか、生成AIで作った画像などについてはAI製と明示するなど透明性の担保を求めたもので、違反した企業には最大3500万ユーロ、およそ56億円か、世界売上高の7%に相当する制裁金を科すということです。

ヨーロッパはAIでは遅れを取ったという認識があるため、ルール作りで先行したということでしょうか。AI規制案は「容認できない」「高い」「限定的」「最小限」の4段階にAIリスクを分類して段階ごとに義務を課すということで、GAFAMや中国のAI企業であってもヨーロッパではこれを守らなければ、最も重い違反であれば年間売上高の7%といった高い制裁金を支払わなければなりません。

アメリカではAI関連企業が自らルールを作り、企業同士で合意してコンセンサスを作るというやり方を採用していますので、今回のように欧州議会が決めるというのはかなりのインパクトがあると言えます。

▼生成AI活用 対話型AI導入支援サービス開始
日本ではAI支援サービスが充実、採用検討すべき時期に


ソフトウエアの操作ガイドを手掛けるテックタッチは13日、企業向けに対話型AIの導入支援サービスを開始すると発表しました。顧客企業の業務ソフトとChatGPTを連携し、従業員が申請した経費精算などのデータが社内規定に適合しているかをChatGPTでチェックできるもので、業務ソフトの改修が不要なことから、導入に必要な期間も大幅に短縮できるということです。

現在はまだAIを導入するとなれば難しい、担当者がいないと躊躇されている段階です。しかしこのサービスにおいてはテックタッチが支援し、それまで使われていた社内システムとの連携も行って、ChatGPTがさまざまなチェックを行うという、従来のITと比べても非常に取っ付きやすいサービスのようです。日本では生成AIのようなシステムをオリジナルで作っている会社はほとんどありませんが、このような楽に使える支援サービスは雨後のたけのこのように出てきています。ぜひ、皆さんも参考にしていただきたいと思います。

---この記事は2024年3月17日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています。

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