大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON525「味の素・東芝・Airbnb~グローバルな視点で市場を観察する」

2014年7月11日


味の素 スイス・ワイルド社の買収に名乗り

東芝 ブルガリア・エネルギーから原発受注見通し

Airbnb 空き部屋60万室、宿泊革命


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▼ 味の素の世界化へ向けた動き/東芝は欧州原子炉に活路

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味の素がスイスの食品原料メーカー、ワイルド・フレーバーズの

買収に名乗りを上げたと報じられましたが、その後、産経新聞は

穀物加工の米アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)が

味の素に競り勝ったと報道しています。


味の素は3000億円で買収を計画していたということです。


ワイルド・フレーバーズは、ドイツ・ハイデルベルグで

設立された、売上規模が1200億円程の企業です。


創業家のワイルド家が経営していますが、米ファンドのKKRが

35%ほど株式を保有しています。


おそらく、このファンドはすぐに売却に応じると思います。


世界の食品香料業界を見ると、

スイスのジボダンが最大企業です。


続いて、同じくスイスのフィルメニッヒ。


ここはダニスコというかつて世界最大規模を誇っていた

デンマークの会社を取り込んでいます。


日本の高砂香料も比較的大きく世界第5位です。


ワイルドフレーバーズは高砂香料に次いでいて、

ほぼ同程度の規模と言えるでしょう。


私は今回の味の素の動きを知りませんでしたが、

もともと食品添加物の会社ですから、

その意図は十分に理解できます。


私ならば、ワイルド・フレーバーズよりも、

その前にダニスコを選んでいたほうが良かったと思います。


一方で、東芝がブルガリアの国営電力会社から

原子力発電所を受注する見通しとなりました。


米子会社のウエスチングハウス(WH)が原発1基を受注し、

原発運営会社の株式も一部取得する案が有力視されています。


東芝は一生懸命原子炉を作ろうと動いてきましたが、

なかなか受注できずに苦しんでいました。


欧州は原発に対して積極的な動きを見せています。


特に油がない地域では顕著です。


フランス以外は原子炉から離れる傾向に

ありましたが、今は英国のようにもう1度

原子炉に回帰する国も出てきています。


このような動きは東芝にとっては

良いニュースだと思います。


実際、東芝の株価も上昇しましたし、

今後の展開に期待したいところです。


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▼ 世界中に広がるAirbnbなどのサービス。日本は独自の規制を考えなおすべき

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日経新聞は、先月17日、「空き部屋60万室 宿泊仲介」と

題する記事を掲載しました。


米西海岸発の「宿泊革命」が世界に広がっているとし、

仕掛け人は2008年創業の米ベンチャー、

Airbnb(エアビーアンドビー)だと紹介しています。


今回紹介されているAirbnb、そしてタクシーの

UBER(ウーバー)は、まさにスマホ時代、

SNS時代の寵児と言える存在です。


Airbnbは60万室を仲介するに至り、世界のホテルチェーンの

トップ5に入る規模になっています。


上場すれば、時価総額は1兆円規模になると見込まれています。


日本では、CCC(カルチャーコンビニエンスクラブ)と

提携して展開していくと話題になっています。


日本も空き部屋が12%あると言われていますから、

Airbnbの仕組みが機能すれば、相当な大儲けが可能だと思います。


しかし、日本には旅館業法という独自の規制があり、

国内で宿泊の営業をするには旅館免許が必要になります。


これが非常に大きな問題になります。


おそらくCCCは旅館業法に抵触しないように、

日本国内向けではなく、海外向け(海外旅行をする人向けの)

サービス展開を考えているのではないかと私は見ています。


先日、外国人観光客向けの簡易宿泊所を無許可で

営んだとして、英国籍の若者が旅館業法違反で逮捕されました。


NHKは英国人男性が手錠をかけられている場面を

放映していましたが、私はそれを見て

「NHK側の姿勢」に問題を感じました。


世界的に、これだけSNSが普及した時代において、

むしろ日本の旅館業法のほうが世界の常識から

外れているのであって、その点を問題提起すべきだと思います。


これ見よがしに、知らずに日本独自の規制に違反してしまった

外国人を槍玉に挙げても、何ら建設的ではないでしょう。


世界の常識は全く違います。


米国では家一軒を貸し出すこともありますし、

イタリア人などは夏になったら自宅をドイツ人に貸し出して、

自分たちはポルトガルにバカンスに行ったりします。


貸し借りについて、ヤフオクと同じような評価制度もあって、

ある程度抑止力もあり、安心して利用できる仕組みもあります。


AirbnbもUBERも、あっという間に「日本をのぞいて」

世界中に広がりました。


これらのサービスが日本独自の規制について、

日本政府とどのように戦っていくのか注目したいと思います。


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