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〔大前研一「ニュースの視点」〕KON515「日中関係・中国レアアース大手~世界と渡り合うために必要なもの」

2014年5月2日


日中関係 中国上海海事法院に約40億円支払い

中国レアアース大手 第1四半期純利益約2650万円


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▼ 日本はどこかで歯止めをかける必要がある

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商船三井は24日、中国当局から船舶を差し押さえられていた問題で、

中国の上海海事法院(裁判所)に約40億円を支払い、

差し押さえが解除されたとのことです。


一方、中国の国営新華社は24日までに、中国政府が1972年の

日中共同声明で放棄した戦争賠償の請求について

「民間・個人の請求権は含まない」と明言する論評記事を配信しました。


これまで曖昧にしてきたのに、中国もこの機に乗じて

「民間・個人の請求権は含まない」と言い出す始末です。


こうなると、次々と訴訟に発展する可能性があります。


商船三井にしてみれば、戦前は「別の会社」だったわけですし、

言いがかりに近いものがあります。


加えて、今は業績も良くないので泣きっ面に蜂状態です。


民間の会社である商船三井に40億円もの支払いを命じるというのは、

非常に厳しいと思います。


共産党の中国のことですから、ピンはねされて政府・役人にも

資金が流れているのは、ほぼ間違いないと思います。


このような状態になってくると、中国だけでなく韓国でも

同じようなことを言い出す可能性があると

私は懸念してしまいます。


この種の問題は、田中角栄氏の時代に決着したはずでした。


ODAや技術提供をすることで一段落したと思っていましたが、

従軍慰安婦の問題など、細かい点をつつかれる事態になっています。


日本としては、今一度どこかで歯止めをかけることが

必要だと思います。


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▼ 日本の政治家は、世界を「肌感覚」で知るべき

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このような問題で中国ともめると、

「中国人とビジネスするのは大変だ」といった人種による

議論になることがあります。


しかしこれまで中国を含め、世界各国の人たちと交流し、

ビジネスをしてきた経験から言わせてもらえば、

中国人だろうが韓国人だろうが、どこの国の人でも

基本的には同じです。


米国人だからといって、ステレオタイプではない人も

大勢いますし、日本人ともさして大きく変わりません。


人種による違いが問題なのではなく、日本人が海外の人を

「実際には」知らないことが問題だと私は思います。


特に、日本の政治家はあまりにも自分自身の体験として

世界を知らなさ過ぎます。


口先だけで世界と接しているのでは、

お話にならないと私は思います。


この点において「さすが」だと感じたのは、

故・小渕元首相です。


まだ首相になる前でしたが、故・竹下元首相から

「将来、日本の首相になる人物」だと私は紹介を受けました。


その時、小渕氏は「首相になろうという人間が、

華僑の一人すら知らないのは恥ずかしいから、

ぜひ紹介して欲しい」と依頼されました。


私が希望通り、華僑の知り合いを紹介したところ、

小渕氏は実際にその人物に会いに行き、

名刺交換をして交流されていました。


「肌感覚」として世界を知ろうという姿勢が

素晴らしいものだと思います。


政治家として世界の国と渡り合うのなら、

単に外国の文化を知るとか、旅行するというレベルではなく、

子供の頃から海外の人と文通するくらいの「肌感覚」を

身につけてもらいたいところです。


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▼ 中国レアアース業界の低迷は、自業自得

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中国レアアース生産大手の五鉱稀土が発表した今年第1四半期の

純利益は、前年同期比94%減約2650万円となりました。


レアアース業界の低迷により、販売が大幅に減少したことが

原因とのことですが、私に言わせれば自業自得です。


日本に嫌がらせをしたことで、中国のレアアース業界は

窮地に追い込まれ、中国国内でもこのまま生存できないと

危惧される状況になっています。


日本では、電子材料、触媒・電池材料など各分野で、

レアアース・レアメタルの代替戦略が進められています。


また同時に、「都市鉱山」から掘り出したり、

カザフスタンやオーストラリアなど、

中国以外のルートを開拓したりしています。


中国は天に向かってつばを吐いてしまったということでしょう。


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