大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON464「日産・ヤクルト・米ボーイング社・ANA~企業の取り組みや考え方を理解する」

2013年5月3日


 日産・ルノー連合 夏までにルノー工場で日産車生産

 ヤクルト本社 海外での提携を解消

 米ボーイング 787運行再開へ向け改修作業完了

 ANA 連結営業利益1100億円



 -------------------------------------------------------------

 ▼ 日産はゴーン氏と袂を分かつか逆買収せよ

 -------------------------------------------------------------


 日産・ルノー連合のカルロス・ゴーンCEOは、先月13日、

 「夏までにルノーの工場で日産車を生産する計画を発表できるだろう」

 との見通しを示しました。


 現在、両社の業績格差は広がっていますが、フランス政府も

 日産がルノーを手助けするのは当然とコメントするなど圧力を

 強めており、負担を強いられる日産社内からはルノーへの

 出資比率を引き下げる議論も出始めたということです。


 これは非常におかしな話だと思います。


 ルノーの純利益算定の構造を見ると、2012年の利益の大半は

 日産が生み出したものです。


 今では「ルノー=日産」と言っても過言ではありません。


 それなのに、オランド仏大統領は、

 「フランスで日産の車を作り、ルノーの工場を閉鎖しないように」

 と言っています。


 フランス政府はルノーの株式を保有している株主ですから、

 ルノーの得になることを提言しているのです。


 こうした状況に対して日本政府が黙っている理由はありません。


 「日本の雇用を考えてもそんなことは受け入れられないし、

 ルノーのことはルノーが考えろ」と主張するべきだと私は思います。




 確かに、日産がV字回復を成し遂げることが出来たのは、

 カルロス・ゴーンCEOのお陰ですが、もうその義理も

 果たしたのではないでしょうか。


 今、ゴーン氏の給与の大半は日産から支払っています。


 それにも関わらず、ゴーン氏は日本に不利な動きばかりして、

 フランス政府にベッタリ近づいています。


 もうそろそろ、ゴーン氏と袂を分かつか、あるいは日産が

 ルノーを逆買収するということも検討しても良いと私は思います。


 -------------------------------------------------------------

 ▼ ヤクルトはTOBの危険性が大

 -------------------------------------------------------------


 ヤクルト本社は26日、同社の筆頭株主の仏食品大手ダノンとの

 戦略的提携関係を解消することで合意したと発表しました。


 ヤクルト株を20%持つダノンは株式の買い増しや提携関係の強化を

 求めていましたが、条件が折り合わなかったためです。


 戦略提携を解消することは両社の決別を意味するのではなく、

 むしろダノン社によるヤクルトのTOBへとつながる

 可能性がある動きです。


 すでに20%の株式を保有しているわけですから、

 33.3%まで買い増していくことはそれほど難しい話ではありません。


 ヤクルトとしては防ぐのは難しいかも知れません。


 ヤクルトは、乳酸菌の研究などが進んでいるため、世界的に見ても

 非常に評価が高い企業ですから、TOBの可能性は大いにあります。


 これまでにもヤクルトの経営陣は様々なトラブルを

 起こしてきましたが、今回のような事態を招いてしまったのも、

 ひとえにヤクルト経営陣の怠慢さだと私は思います。


 -------------------------------------------------------------

 ▼ ボーイング787の運行停止がむしろプラスに働いた

 -------------------------------------------------------------


 米ボーイングは新型機「787」の運航再開に向けた改修作業を

 週内にほぼ終える見通しです。


 改修が終われば米連邦航空局(FAA)など各国当局が正式に

 営業運航の許可を出します。


 1月の相次ぐ発煙事故で起きた安全問題はヤマ場を越え、

 同社にとっては、運航停止に伴う航空会社との補償交渉と

 信頼の回復が次の課題となる見通しです。


 日本でもすでに国交省の承認がおりて、6月から就航開始が

 決定しています。


 実は面白いのは、ボーイング787の運行が停止していたのに、

 全日空の決算を見ると全く数字が悪くないということです。


 むしろ、ボーイング787の運行が停止していたから良かったと

 さえ言えるかも知れません。


 全日空は、赤字になりそうな路線に対して、燃料効率が良いという

 理由でボーイングの新型機「787」を割り当てました。


 しかし結局、運行することができず、赤字になりそうな路線が

 飛ばなかったおかげで、驚くべき数字が出てきたのです。


 全日空の連結営業利益は1000億円を超え、前期比7%増です。


 コスト削減の結果だと発表されていますが、

 私は「787」の運行停止がプラスに働いたのではないかと見ています。

 

 結果論ですが、燃料効率が良い飛行機が開発されたからと言って、

 手放しに不採算路線を復活させるのは危険だと言えるでしょう。

問題解決力トレーニングプログラム

問題解決力トレーニングプログラム

大前研一 ニュースの視点 Blogトップへ

  • メルマガ

    ニュースの視点メルマガ登録

最近の投稿記事

ニュースの視点メルマガ登録

ブログの更新情報

バックナンバー

  • facebook
  • twitter

各種ソーシャルメディアで様々な情報をお届けしております。

大前研一 ニュースの視点