大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON428「尖閣諸島とオスプレイ問題~前提となるファクトを考える」

2012年8月24日

 尖閣諸島問題

 香港活動家らが魚釣島上陸

 オスプレイ

 オスプレイ配備は「死活的に重要」


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 ▼ 尖閣諸島については、中国との間に密約が存在する

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 沖縄県石垣市の尖閣諸島・魚釣島に15日、香港の活動家らが上陸し、

 沖縄県警と海上保安本部は不法入国、不法上陸の疑いで14人全員を

 現行犯逮捕しました。


 17日の午後には全員が強制送還されました。

 

 また19日には日本人10人が上陸。

 周辺の海域で洋上慰霊祭を行なっていた団体のメンバーと見られています。


 政府の許可を得られていなかったことから、県警や海上保安庁が

 対応を検討しているとのことです。


 香港の活動家なる人物たちが、海上保安庁の目をかいくぐり、

 どうして上陸することができたのか?海上保安庁は防ぐことが出来なかったのか?

 という点は、ニュースを見ているだけでは釈然としません。


 おそらく香港の活動家の背後には、どこぞのお偉いさんがいて

 お金を出しているのではないかと私は想像しています。


 日本政府の対応について、日本国民の中には「対応が甘い」

 「裁判にかけるべき」といった怒りの声もあるようですが、

 私は今回の政府の対応は正解だと思います。


 正確に言えば、この方法を取るしかないということです。



 尖閣諸島の最も大きな問題は、かつて自民党が中国と「密約」を結んでおり、

 それを国民はもちろん、民主党の議員さえも知らされていなかった

 という点にあります。その密約の内容は以下の様なものだと言われています。


 ・中国は、実効支配の原則から尖閣諸島を日本領土として認める

 ・しかし一方で、中国も国内法では領土権を主張する


 以前、事情を知らない民主党の三輪氏が「国内法」として領土主張した際には、

 中国から「その点は妥協できない」と大きな反発がありましたが、

 当然のことなのです。


 活動家が尖閣諸島に上陸した際には、日本で裁判にかけるのではなく、

 逮捕して中国側に送り返すというのが、「密約」に従えば「正解」です。


 ゆえに、今回は中国政府も公式には大きく騒ぎ立てるようなことを

 していないのです。


 かつて私は日経BPに『「尖閣問題」の歴史を知らない民主党の罪』

 という記事を書きましたが、まさにこのタイトルに問題の本質が

 凝縮されていると思います。

 

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 ▼ 沖縄県の「軍政」は未だに米軍に帰属しているという事実

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 尖閣諸島問題と本質的に全く同じ問題を抱えているのが「オスプレイ」問題です。


 米海兵隊のエイモス司令官は16日、新型輸送機MV22オスプレイに関する

 声明を出し、安全性を強調した上で、米国にとって日米安保条約の防衛義務を

 果たすために沖縄県宜野湾市の普天間飛行場にオスプレイを配備することは

 「死活的に重要だ」と訴えました。


 日本国民、特に沖縄県民の中にはオスプレイの配備に反対する人も

 多いと思いますが、実は「オスプレイは日本から要求して然るべきものであり、

 拒否するというのは考えられないもの」なのです。


 というのは、日本政府と米軍の間には日本国民には知らされていない

 「沖縄返還の条件」があり、オスプレイの配備など「軍政」に関することは

 米軍の意向に従うのが約束だからです。


 『「民政」的には沖縄を返還するが、「軍政」的には現状(米軍)のまま』

 というのが、沖縄返還の条件だったのです。


 沖縄返還を実現したのは当時の自民党ですが、表では沖縄返還という大きな

 成果を発表しながら、裏では「軍政」は米軍のままという条件を

 日本国民に隠したのです。


 米軍が沖縄を「軍政」的には占領当時のまま利用するのは、この点から言えば、

 当然のことです。


 ベトナム戦争でも湾岸戦争でも、日本の国防に関係ない争いでも

 沖縄を利用しましたが、これも当たり前のことだと言えます。

 それが約束なのです。


 沖縄県知事がオスプレイの安全性について米軍に問い質したということですが、

 私に言わせれば、沖縄県知事ともあろう人が事情を知らずに

 何を言っているのかと思います。


 日本政府(国)が合意しているのですから、沖縄県知事にも「軍政」の

 権限はないのです。


 実は、このようなことは北方領土の問題にも当てはまります。


 かつて裏の事情を知らなかった前原氏に私が資料を見せて説明したところ、

 率直に驚いていました。


 結局、かつての自民党が国民に隠しながら裏で合意した内容があり、

 それらを知った上で外交に臨まなければ絶対に上手くいかないのです。


 北方領土に関して言えば、森喜朗元首相は歴史的な事情も知っていますし、

 その理解は非常に正確です。


 ロシアとの外交問題は、森氏に任せるのが正解でしょう。


 残念ながら、民主党には歴史的な事情を理解している人も少ないですし、

 外交センスもありません。


 尖閣諸島、沖縄、北方領土のいずれの問題にしても、民主党は自民党の力を

 借りなければまともに外交政策を進められないと私は思います。

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