大前研一「ニュースの視点」Blog

KON1023「コナカ/ビッグモーター/ファミリーマート/アステラス製薬」

2024年3月1日 アステラス製薬 コナカ ビッグモーター ファミリーマート

▼コナカ サマンサタバサを完全子会社化
同病ブランド取得では業績改善は望めない


紳士服大手コナカは20日、子会社のサマンサタバサジャパンリミテッドを完全子会社にすると発表しました。サマンサは1994年に創業し、主力製品のバッグなどで若い女性の支持を集めましたが、近年はブランド力が低下し、8期連続の最終赤字となる見通しで、コナカは完全子会社にすることで抜本的な立て直しを図る考えです。

コナカのサマンサタバサ買収は間違っています。サマンサタバサが駄目になった本当の理由を、コナカが分かっていないからです。現在、世界的に新古品に近いような中古のネット通販が隆盛を極めており、そこで売れるものは、いわゆる定番品です。サマンサタバサのようなシーズンごとの流行が強く反映されたブランドは、アメリカでも日本でも人気が落ちつつあります。SHEINやFOREVER 21、ユニクロのようなワンシーズンでOKというブランドであればよいのですが、メルカリ効果によるのか、サマンサタバサのバッグを2年後に欲しいという人はおらず、そこをコナカは分かっていないということです。

「サマンサタバサの連結業績の推移」のグラフを見ると、売上高は200億円強で利益は出ていません。そして、「コナカの連結業績の推移」のグラフでも同じような状況です。コナカがサマンサタバサを完全子会社にしたのは、同病相哀れむといったところでしょうか。サマンサタバサは2年後、3年後に通用する定番を持っていないので苦労をしているのであって、コナカはそれを分かっていません。

「コナカのセグメント別売上高」のグラフによると、ファッション関連が8.5億円の赤字です。とんかつ「かつや」など、飲食業に力を入れている場合ではありません。コナカが弱いとされているレディース部門にサマンサタバサを加えようと考えているようですが、同病のブランドを加えても悪化するだけです。アメリカのコーチも順風満帆と言える状況ではなく、サマンサタバサの状況はさらに厳しいものだということをコナカは知るべきです。

▼ビッグモーター 伊藤忠、JWPによる買収で最終調整
200億円の行方が不透明なままで、本当の立て直しができるのか


伊藤忠商事と企業再生ファンドのジェイ・ウィル・パートナーズが、中古車販売大手、ビッグモーターを買収する方向で最終調整に入りました。ビッグモーターを二つに分割し、新会社に中古車販売や整備などの主要事業を移す一方、旧会社では全国で相次ぐ訴訟や債務の返済などに対応する計画で、ビッグモーターの雇用は維持し、伊藤忠グループの事業を活用して立て直しを図る考えです。

伊藤忠が手に入れる中古車販売事業を行う新会社には創業家は関与せず、創業家は100億円を出資して訴訟や債務問題に対応するようですが、まずは伊藤忠商事が支払う200億円の行方をクリアにすべきです。今回の買収は伊藤忠にとって全てが悪い話ではないとは思いますが、ビッグモーターは社会的信用を失っている上に、同業者に比べて倍以上の給料が支払われていたため辞めた人も少なく、この買収はうまくいくのかは疑問です。今回の件を取材している記事をさまざまな角度から調べましたが、200億円を誰が受け取るかを明記したものは見つけられませんでした。しかし今のところ、200億円が支払われる先は、ビッグモーター株を100%所有している兼重親子だと考えるのが妥当です。ビッグモーターは一度つぶして、のたうち回った後の資産だけを伊藤忠が無料で引き受けるのが正しいと、私は思います。伊藤忠は確かな会社ではありますが、兼重親子に金を渡しては駄目だということを分かっていないのでしょうか。私は、その点を心配しています。

▼ファミリーマート コカ・コーラ ボトラーズの委託トラックを活用
ルートセールスの見直しが、24年問題解消を担う


ファミリーマートが今月から神奈川県海老名市などの、およそ240店舗向けに、コカ・コーラ ボトラーズジャパンの委託トラックで、常温商品を配送する取り組みを始めました。両社は2023年2月からSDGs分野の連携協力事業を推進しており、これによりコカ・コーラもトラックの稼働率を1台当たり、およそ1割高められるということです。

シンクラン会長の鶴賀氏より、コカ・コーラ、サントリー、アサヒ、キリンなど、配送業務等、自社で行っていたルートセールス部門について、今後は共同で行えないかという申し込みがいくつかあったという話を聞きました。これらの調整は24年問題解消の寄与となるため、私はようやくここまで来たか、大変素晴らしいことだと思っています。ブランドや自販機は違うというのは分かっていますが、ルート側から再編される動きとなれば、24年問題の若干のプラスとなるでしょう。

▼アステラス製薬 居住地の制約撤廃へ
居住地条件撤廃が目指すべきは、世界を巻き込んだ新薬開発か


アステラス製薬が、従業員の居住地の条件を撤廃する見通しが明らかになりました。現在、同社の従業員は勤務地から片道2時間圏内に住む必要がありますが、テレワークが可能な職種、およそ2200人を対象に、出社を前提としない働き方を認める方針で、これにより多様な働き方ができる環境を整える考えです。

NTTグループは2022年、3万人規模にテレワークを導入しましたが、地方自治体からのNTT従業員への積極的なアプローチはなかったようです。今回のアステラス製薬の従業員において、地方自治体への誘致が成功すれば大変なブレインパワーとなるはずですが、地方自治体側は補助金がもらえるならと消極的な姿勢です。欠けているものは金ではなく、人だということを地方自治体自身が気付いていません。アステラス製薬でテレワークが可能な職種であれば有能な人材が多いと思いますので、本来であれば、わが町に来てくださいと地方自治体が殺到するはずですが、NTTの例を見ると残念ながらそうはならないのではと思います。

今回のアステラス製薬による居住地条件の撤廃は素晴らしい施策ですが、これがプラスに働くのは新薬開発の面においてかもしれません。例えば製薬会社のイーライリリーなどは、カナダやオーストラリア等、世界にいる医薬品関連を学んで卒業した人、製薬会社等を辞めて守秘義務期間を終えた人などをメンバーとしてチームを構成しています。そしてそのチームに対してプロジェクトを提示し、ネット上で競わせるといったやり方を進め、新しい導入品の半分を実現しています。自社内だけで開発を進めるのではなく、海外の有能な人材を大量に組み込んでいくことも今後は行わなければいけません。単に従業員の居住地条件を撤廃するというだけでは広がりに欠けると思いますので、世界に目を向けた動きに期待しています。

---この記事は2024年2月25日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています。

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