- 本文の内容
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- 日本銀行 「来年にかけ一段とチャレンジングに」
- 日本経済 円に2つの24年問題
- サイバーエージェント 広告効果の高い商品画像を自動生成
- 国内ユニコーン OPN HDが新たなユニコーンに
▼日本銀行 「来年にかけ一段とチャレンジングに」
年末年始、アベクロの修正がやっと実行される
日本銀行の植田総裁は、7日の参議院財政金融委員会で今後の政策運営への抱負を問われ、「チャレンジングな状況が続いているが、年末から来年にかけ一段とチャレンジングになると思っている」と答えました。これを受け、日本銀行が続けてきた金融緩和の早期正常化観測が広がり、7日のニューヨーク市場では一時1ドル141円60銭台と、およそ4カ月ぶりの円高ドル安水準となりました。植田総裁は元々経済学者でしたので、アベクロの修正は当然行うだろうと、私はずっと言ってきました。このところ円安ドル高が続いていましたが、日本の動きによっては均衡が取れ、皆が米ドルに走るということはなくなるでしょう。しかし、円自体の問題はまだ残っていると思います。
▼日本経済 円に2つの24年問題
対外純資産首位からの転落は、国の衰えによるものではない
日経新聞は4日、「円に2つの24年問題」と題する記事を掲載しました。IMFの推計から試算すると、2024年末の対外純資産はドイツが日本を上回り、世界首位になる見通しです。日本の輸出で稼ぐ力が相対的に衰えているほか、中国の景気減速に伴い、対中経常収支で大幅な赤字が続いていることなどが要因ですが、加えて来年1月から始まる少額投資非課税制度、NISAにより証券投資を通じた個人マネーの海外流出が加速し、さらなる円安を招く可能性もあるとしています。ウェルスナビの資産形成ロボットパッケージの内容を見ても明らかで、アメリカの株式および債券、途上国の株式、日本の株式および債券、金、土地など、分散投資が行われます。つまり投資が活発になることは、日本から世界に資産が分散されるということです。NISAによる個人マネーの海外流出は、貯蓄から投資へといった政府の方針であるため仕方のないことです。例えばオーストラリア人などにとって海外投資は当たり前で、いずれ日本もそうなるということです。
実効為替レートはプラザ合意以降、長らく円安に振れています。また、日本の輸出額はあまり伸びていません。しかし統計がこうなっているだけで、日本企業の海外進出は非常にうまくいっています。アメリカで車の製造を多く行うなど、海外進出の結果として日本の輸出額が減ったという側面はありますが、輸出力が落ちたと見るのは間違いで、グローバル化が進んだということです。経常収支の内訳を見ると、貿易収支が大幅に下がっていることからも分かります。
またサービス収支と旅行収支についてですが、例えば、2023年9月の収支は知財などで黒字ですが、クラウドサービス等への支払い、業務サービス、通信・コンピューター・情報サービスについては大変なマイナスです。特に「その他業務サービス」はマイナス1687億円、つまり日本が弱い分野となり、サービスを使えば使うほどマイナスになるというわけです。それに対して、旅行収支は戻ってきています。そして日本の第一次所得収支というのは親会社と子会社間の利子、つまり配当などのことですが、これは30兆円を記録しています。
しかし「主要国の対外純資産」のグラフを相対的に見ると、アメリカはドルが世界中にばらかまれているため大変なマイナスですが、日本はこれまで世界一のところをドイツに追い詰められ、中国や香港も伸びを見せています。その次は、産油国で豊かなノルウェーです。これまでは対外純資産においては圧倒的1位であった日本が、ドイツに抜かれる可能性がある状況ではあります。
▼サイバーエージェント 広告効果の高い商品画像を自動生成
生成AIは広告業界の常識を変えるか
サイバーエージェントは7日、生成AIを活用し、広告効果の高い商品画像を自動生成する機能を開発したと発表しました。これは商品を選んでから「砂浜」「夕暮れの湖畔」などと入力すると、広告に使う背景画像を数分で生成するということで、森や海などでのロケが不要になり、広告制作を効率化できるということです。2024年1月から運用されます。私はこの技術を見る機会がありましたが、とても素晴らしいものでした。電通とは違い、サイバーエージェントのようなネット広告を専門としている会社にとっては十分であり、ロケ地やカメラマンの手配も不要となるため大幅なコストカットも見込めます。
しかし、知的財産権や肖像権などの課題もあり、慎重に進めなければ事故を起こす可能性があります。サイバーエージェントが得意とする技術ではありますが、想像していたよりも早い実現となりました。
▼国内ユニコーン OPN HDが新たなユニコーンに
ユニコーン増加は歓迎するが、眉唾な企業も?
日経新聞がまとめた「NEXTユニコーン調査」によりますと、オンライン決済システムを手掛けるOPN Holdingsが、新たにユニコーンとなったことが分かりました。OPNは東南アジアを中心に企業向けの決済基盤を提供するほか、去年11月にはアメリカの同業をおよそ500億円で買収するなど事業規模を拡大しており、今回の調査でも企業価値ランキングの2位に入りました。23年10月末の「新興企業の企業価値ランキング」で、OPN Holdingsは一気に2位に躍り出ました。1位はPreferred Networksで、3位はSmartNewsです。このランキングを見ると3分の1は眉唾ではないかと思います。Preferredは間違いなくユニコーン企業ですが、トークのうまい経営者がいる会社が上位にいる可能性があります。いずれにしても問題のある企業はあるものの、企業価値500億以上のユニコーン企業が増えてきたのは喜ばしいことです。
---この記事は2023年12月10日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています