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KON1010「中国・碧桂園/ 中国系ECアプリ/ 米テスラ/ 米オープンAI」

2023年11月24日 中国・碧桂園 中国系ECアプリ 米オープンAI 米テスラ

本文の内容
  • 米テスラ テスラ株終値209.98ドル
  • 米オープンAI サム・アルトマンCEOが退社
  • 中国・碧桂園 中国政府が平安保険に救済要請
  • 中国系ECアプリ 10月利用者数が前年同期比2.6倍

▼中国・碧桂園 中国政府が平安保険に救済要請
 中国は独裁国家への道に向かっているのか

ロイター通信が8日報じたところによりますと、中国政府が中国平安保険集団に対し、不動産最大手、碧桂園(カントリー・ガーデンホールディングス)の救済を要請したことが分かりました。9月に広東省の政府と平安の間で救済に関する話し合いが行われ、政府が平安に対し、カントリー・ガーデンに50%以上出資するよう求めたということですが、平安側は報道を否定しています。

中国政府は、やってはいけないことを行いました。ほとんど救いようがない中国最大手である恒大グループとカントリー・ガーデンのどちらかに対し、50%以上の出資を平安保険に要請するなど、まるで中国政府は暴君のようです。自らが招いた不動産不況の救済を平安保険に求めており、平安保険は当然のことながら報道を否定しています。

地方政府が出資・設立した投資会社である融資平台がいろいろと動いているようですが、こういった会社に責任を取らせるべきで、民間企業に肩代わりさせるなど、とんでないことです。中国政府は今、独裁国家へ向かっているのではないかと私は思います。


▼中国系ECアプリ 10月利用者数が前年同期比2.6倍
 米国政府の警戒感に、若者はわれ関せず

10月の世界全体のEC利用者数で、アメリカのAmazon.comが前年同月に比べ4%増加したのに対し、中国初のTemu(ティームー)とSHEIN(シーイン)は合わせて2.6倍に増加したことが分かりました。TemuとSHEINは割安な中国製の雑貨や衣料品を扱うアプリを展開しており、特にアメリカの消費者の利用が伸びているということで、アメリカ政府は警戒を強めています。

TemuとSHEINはアメリカの若者に非常に支持され、アメリカ国内での伸びが大変なことになっています。これらのターンアラウンドタイムは1週間などといった信じられない速さが特徴で、追加生産する場合もあるものの限定品は売ってしまえば終わりなど、新しいやり方で運営しています。SHEINは中国では使えないのでシンガポールに本社が移され、中国とは少し距離を置いているようですが、アメリカでは爆発的に伸びており、アメリカ政府は危険だと考えています。鼻の穴までのぞかれているんだ、やめなさいと訴えても、アメリカの若者にとっては関係ないという感じのようです。


▼米テスラ テスラ株終値209.98ドル
 「シングルマン」リスクが株価急落の要因か

アメリカ、テスラの株価が9日、前の日に比べ5.46%安い209ドル98セントで取引を終了しました。競合のEVメーカーが予想を下回る四半期決算を発表したことや、HSBCのアナリスト、マイケル・ティンダル氏がテスラの目標株価を146ドルとして売りと評価したことを受け、急落した形です。

何となくではありますが、テスラのピークは終わった感じがします。EVはテスラが開拓したことに間違いありませんが、いろいろな会社がテスラに追い付き始めました。テスラには、発明家としては有能ではあるものの何を言うか分からないマッドマンによる「シングルマン」リスクがあります。テスラは高く評価され過ぎているとティンダル氏は評しており、私もそう思います。

「テスラの株価推移」のグラフによると、ピークは2年前であり、今は下がっています。マスク氏はエイプリルフールで「テスラが倒産した」といったメッセージを出すなど非常に変わった人物ですが、この問題でも彼は足を取られたようです。


▼米オープンAI サム・アルトマンCEOが退社
 隠れた理由とマイクロソフトの動きに注目

アメリカのオープンAIは、17日、サム・アルトマンCEOが退社すると発表しました。これについてオープンAIは、アルトマン氏が取締役会とのコミュニケーションに一貫して率直ではなく、取締役会の責任を果たす能力に支障を来していると説明しています。当面は最高技術責任者のミラ・ムラティ氏が暫定CEOに就任し、新たなCEOの人選を進めるということです。

この1件については、私には全く分かりません。サム・アルトマン氏と一緒にやっていた人も同時に取締役を外され、キーマン2名が辞めることになりました。そして暫定CEOのミラ・ムラティ氏は優秀なのかは分かりませんが、略歴によると中東出身の34歳の女性で、4、5年前にテスラからオープンAIに移ってきたようです。

かつてオープンAIには路線論争がありました。設立に関与していたイーロン・マスク氏は、AIには政治問題に絡んだ危険な可能性があると考え、対してサム・アルトマン氏は民営化をして営利企業に向かおうとしていました。しかし、こういった路線対立以外にも何かがあったのではないかと思います。しかしながらサム・アルトマン氏は、今の新しい企業をつくろうという意味においては天才中の天才で、このような人物を失ったことはオープンAIにとっては大きな損失です。またマイクロソフトはオープンAIに1兆円以上の投資をしていましたが、この解任については知らされておらず、相談もなくこの2名を解任したことは非常に疑問です。

以前ウーバー創業者が解任された際には暴力を振るったり罵詈雑言を吐いたりなど明らかな理由がありましたが、今回はそれほど単純ではないように思います。まだ何か納得できない理由、明らかになっていない理由があるのではないでしょうか。そしてマイクロソフトがどう扱うのか、そこに注目したいと考えています。


---この記事は2023年11月19日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています

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