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KON1007「米ウォルト・ディズニー/ 米ネットフリックス/ 台湾・鴻海精密工業/ 中国・滴滴出行」

2023年11月3日 中国・滴滴出行 台湾・鴻海精密工業 米ウォルト・ディズニー 米ネットフリックス

本文の内容
  • 米ウォルト・ディズニー 100歳ディズニー、魔法と試練
  • 米ネットフリックス 会員数2億4720万人
  • 台湾・鴻海精密工業 商用バン「モデルN」試作車公開
  • 中国・滴滴出行 2024年に香港市場上場へ

▼米ウォルト・ディズニー 100歳ディズニー、魔法と試練
 アメリカが誇る100歳企業は動画ビジネスに次の100年を託す

日経新聞は17日、「100歳ディズニー、魔法と試練」と題する記事を掲載しました。米ウォルト・ディズニーの2023年4月から6月期最終損益は4億6000万ドル、およそ690億円の赤字に転落しました。動画配信サービス、Disney+の先行投資がかさみ、苦戦が続く他、巣ごもり需要の反動もあり、配信各社が成長鈍化に直面している現状で、コンテンツの川上を握るディズニーにとって、動画配信ビジネスが次の100年を占う試金石になるとしています。

イーロン・マスクは21世紀のトーマス・エジソンと言われていますが、新しいジャンルを開拓して映像やテーマパークを生み出したウォルト・ディズニーこそ、天才中の天才です。経営的にはいろいろと問題はあったようですが、100歳を迎えたことは素晴らしいと思います。

あまり知られていませんが、ウォルト・ディズニーは弟と一緒に活動していました。ディズニー・ワールドのコンセプトを作ったところでウォルト・ディズニーは肺がんで亡くなりましたが、弟はこのプロジェクトを完遂させることができず、それを救ったのはテキサスの石油王と言われたバス兄弟です。私は三浦雄一郎氏とバス氏がつくったホテルに行って、ギネス挑戦だと1日1万メートルの落差を滑るというひどい目に遭っています(笑)。8歳の次男が最年少記録、バス氏は最年長記録を更新し、もちろん三浦雄一郎氏は軽々とやり遂げました。

現在Disney+ではかなり安くコンテンツを提供し、苦しい状態かもしれません。しかしコンテンツは良質であるため、ディズニーの未来は明るいと思います。私が繰り返し見ているのは『ファンタジア』で、私の子どもの頃もそうでしたが、ディズニーは子どもたちにとても影響を与えています。100年も続いていることは、本当にすごいことなのです。


▼米ネットフリックス 会員数2億4720万人
 無敵のストリーミングサービスは今後さらに拡大へ

アメリカのネットフリックスは18日、7月から9月期の会員数が、コロナ禍以来の伸びとなる前期比876万人増加し、総数は2億4720万人になったと発表しました。力強い番組編成と、友人や家族もアクセスできる有料のアカウント共有プランが功を奏したということですが、合わせてアメリカ、イギリス、フランスを対象に、ベーシックプランとプレミアムプランを値上げする方針を明らかにしました。

ネットフリックスに完全に魅了されている人は、3ドル程度の値上げではアカウントをキャンセルすることはないと思います。それほどの人気があるネットフリックスは、Disney+が最も恐れる存在です。

グラフ「ネットフリックスの有料会員数の推移」によると、今はアメリカ、カナダを抜いて欧州、中東、アフリカが会員数8000万人を超えています。そしてアジア、太平洋地域の伸びも著しく、ラテンアメリカを抜く勢いです。今後さらに伸びる余地は十分にあると思います。


▼台湾・鴻海精密工業 商用バン「モデルN」試作車公開
 スピード感のあるEV開発とセグメンテーションに注目

台湾の鴻海精密工業は18日、6番目の自社開発EVとなる商用バン「モデルN」の試作車を公開しました。これは全長およそ6メートル、最大積載量2.2トン、航続距離は250キロメートルで、都市部の配送業務を想定し、自動車メーカーや物流企業からの受注を狙うと見られます。

スマホなどの電子機器を作っていた鴻海精密工業が、自社開発EV分野に進み始めてわずか数年で6番目の試作車を公開するようです。EVはこれまでのエンジン内燃機関をベースとした自動車とは全く違った、レゴのように組み立てるオモチャのようなもので、受注組み立てを専門とした鴻海精密工業にとっては得意分野であり、それが開発の速さの理由となっています。

これまでに開発した6種類のEVにはそれぞれニーズがあり、パートナーも存在します。かなり細かいセグメンテーションを行っているようですので、今後の動きに注目です。


▼中国・滴滴出行 2024年に香港市場上場へ
 香港市場上場は中国ハイテク企業の今後を前進させる?

中国の配車アプリ最大手、滴滴が2024年に香港取引所への上場を検討していることが分かりました。滴滴は2012年に創業、アメリカのウーバー・テクノロジーズの中国事業買収で急成長し、一時は国内市場のシェアがおよそ9割に達しましたが、中国当局による統制強化によってシェアは7割まで低下した他、企業の評価額もピーク時の2割の水準まで減少しています。

滴滴は、ハーバード大学ビジネス・スクール、ゴールドマン・サックス出身、レノボ創業者の娘である柳青氏が社長を務める会社です。彼女の頑張りで滴滴はニューヨーク市場に上場しましたが、それを好まない中国政府により上場廃止へと追い込まれました。その後、政府の意向に沿う姿勢を見せたことで香港取引所への上場が実現の見込みです。中国政府はハイテク企業に対して統制を行っており、ジャック・マーが操業したアリババに対しても厳しい態度を取りました。今回の滴滴の香港市場上場が実現すれば、一歩前進と言えるのではないかと思います。


---この記事は2023年10月29日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています

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