大前研一「ニュースの視点」Blog

KON1004「三井物産/ 損保大手/ 三菱自動車/ 連合定期大会」

2023年10月13日 三井物産 三菱自動車 損保大手 連合定期大会

本文の内容
  • 三井物産 SAF(再生航空燃料)の量産開始
  • 損保大手 カルテル疑惑で金融庁に報告書
  • 三菱自動車 中国の自動車生産から撤退
  • 連合定期大会 労組と協力して賃上げに取り組む姿勢強調

▼三井物産 SAF(再生航空燃料)の量産開始
 日本のSAF量産への本格参入成功の鍵は、原料獲得にあり

三井物産は先月25日、ポルトガルのエネルギー企業、ガルプと合弁会社を設立し、2026年からSAF、再生航空燃料の量産を開始すると発表しました。三井物産が1億ユーロ、およそ160億円を出資し、ポルトガルに工場を建設する計画で、年間25万キロリットルを生産するということです。

これからはSAF(Sustainable Aviation Fuel)原料の奪い合いになるということです。油脂系や植物から直接作るもの、廃棄物を利用するものなど種類はいろいろとありますが、今その原料が足りておらず、天ぷらを揚げた後の油のような廃食油でさえ、争奪戦の対象となっています。

バイオジェット燃料を製造する会社としては、米国のWorld EnergyやフィンランドのNeste Oil、都市ごみを原料とする米国のFulcrum BioEnergyがあり、これらの原料の奪い合いは非常に激しいものとなりつつあります。ヨーロッパの空港では今後、SAFを15%含んだ燃料でなければ着陸できないという方針を打ち出しており、それが奪い合い激化の要因となっています。


▼損保大手 カルテル疑惑で金融庁に報告書
 損保会社のうみを出し切る機会となるか

損害保険大手による企業向け火災保険のカルテル疑惑で、損保大手4社は先月29日、金融庁に報告書を提出しました。これは複数の損保が保険を引き受ける共同保険について、企業が入札を実施する際、損保側が事前に保険料の水準を調整していた疑いが浮上し、金融庁が報告を求めていたもので、不適切な行為があった取引先は少なくとも合わせて100社以上に上ると見られます。

業界ぐるみの不正が今、明らかになりました。しかし政府でも、恐らくは団体生命保険などでは同じようなことをやっているとは思います。先日のビッグモーター事件が、損保問題が大きく取り上げられたきっかけとなりましたが、今後も次々と解明されていくはずです。


▼三菱自動車 中国の自動車生産から撤退
 EV普及率が高い中国に負けた三菱の今後の方針に注目

三菱自動車が中国の自動車生産から撤退する方針を固め、現地の合弁相手である広州汽車集団と最終調整に入ったことが分かりました。中国ではEVの普及や地場企業のブランド力向上を背景に、ガソリン車に強い日米欧のメーカーは全般的に苦戦しており、三菱自動車も3月から停止していた新車販売の再開を断念する考えです。

三菱自動車はASEANと中南米・中東・アフリカでの販売台数が高く、そして北米、日本、豪州・ニュージーランド、欧州と続きます。世界では割と均等に販売できているようですが、中国では苦戦しています。そして地域別での業績では欧州が厳しく、日本では赤字の状況です。しかしASEAN、北米で業績を上げ、豪州・ニュージーランドでは安定していますので、中国でうまくいかなくても影響は低いということから、新車販売再開を断念したということです。日本のEV分野では三菱と日産が先行していますが、EV普及率が高い中国では三菱の力は及びませんでした。


▼連合定期大会 労組と協力して賃上げに取り組む姿勢強調
 岸田総理は賃上げではなく、給与体系見直しに動くべき

岸田総理大臣は5日、労働組合の中央組織である連合の定期大会に出席し、労組と協力して賃上げに取り組む姿勢をアピールしました。自民党政権の首相として定期大会に出席するのは2007年の福田康夫氏以来で、立憲民主党、国民民主党両党の支持基盤である連合に接近して揺さぶりをかけ、組織票の取り込みを狙うと見られます。

今回の岸田総理の動きについて、私は考えが浅はかであると思っています。労働分配率のグラフによると、最も低い年でも66%で3分の2は労働者に戻されています。企業としては労働者に十分な賃金を戻しているわけで、問題があるとすれば賃上げを求めるのではなく、給与体系そのものの見直しを検討しなければなりません。また企業が創出した付加価値と人件費のグラフを見ても、日本全体では40%に当たる200兆円もの額を人件費に充てていることが分かります。本当の原因を見ずに労組と共に賃上げを叫ぶなど、正しい結果が得られないことは明白です。また日本企業が過去に4分の3を労働者に配っていた時代には、企業成長が衰えたことを思い出さなければいけません。今、岸田総理は冷静な判断をすべきであり、票欲しさに間違った行動をしてはいけないのです。


---この記事は2023年10月8日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています

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