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KON995「米商業用不動産/ 米アップル/ 世界旅行先ランキング/ 訪日外国人客」

2023年8月11日 世界旅行先ランキング 米アップル 米商業用不動産 訪日外国人客

本文の内容
  • 米商業用不動産 今後5年間で満期の商用不動産ローン約390兆円
  • 米アップル 預金サービス残高約1兆4300億円
  • 世界旅行先ランキング 高齢者が楽しめる旅行先首位はイスタンブール
  • 訪日外国人客 政府目標が前倒しで実現見通し

▼米商業用不動産 今後5年間で満期の商用不動産ローン約390兆円
 銀行破綻の連鎖を止めるには心理的問題のクリアが鍵

日経新聞が2日に報じたところによりますと、今後5年間で返済満期を迎える米国の商用不動産ローンは、およそ390兆円分に上ることが分かりました。低金利下の不動産投資ブームで増えたローンが次々と借り換え時期を迎えるものですが、在宅勤務の普及などで、米国の大都市ではオフィス向けローンの延滞や不履行が頻発しており、商用不動産市場における不良債権残高は、現在の2倍の22兆円に膨らむ可能性があるということです。

リーマンショックと同様、銀行破綻の連鎖が起こる可能性が大きい問題であるため、注視する必要があります。1000兆円を超えると言われている中国と比べれば、390兆円は米国にとっては本気を出せば克服できる額ではありますが、不良債権残高の増加が急激に進めば、心理的な問題を含んだ銀行破綻が一気に広がる恐れがあります。今後起こり得る事態に対して、十分な演習をしておかなければなりません。


▼米アップル 預金サービス残高約1兆4300億円
 スマホで簡単、高利率な預金サービスの日本スタートはいつか

米アップルは2日、4月に開始した預金サービスの残高が100億ドル、およそ1兆4300億円を超えたと発表しました。このサービスは年4.15%の利率や、iPhoneですぐに口座を開設できる利便性で利用者を集めたもので、米国の地銀を巡る金融不安で預金が流出する動きが相次ぎ、そうしたお金の受け皿になっているとの見方もあります。

このサービスの裏側にはゴールドマン・サックスが控えており、かなりの無理をして利率4.15%を実現しています。日本ほどではないものの今の米国の預金利率は低く、その4倍以上の利回りであるこのサービスにお金が集まるのは当たり前です。しかし今後さらに殺到すればゴールドマン・サックスがギブアップして、この事業を売却するかもしれず、成功すると困るという皮肉な状況です。また中国でも約4%の利率となる預金サービスが導入され、同じような事態となっているようです。スマホだけで利用できる便利な預金サービスが日本でも利用できるとなれば、現在、利率0.1%以下で預けられている1000兆円は、米国や中国以上に一気に動くのではないでしょうか。


▼世界旅行先ランキング 高齢者が楽しめる旅行先首位はイスタンブール
 高齢の旅行者は安全で平坦な道での散策を好む

米国の旅行保険会社、インシュアマイトリップが行った調査によりますと、高齢になっても楽しめる旅先の首位はトルコのイスタンブールで、2位はギリシャのアテネ、3位はイタリアのローマだったことが分かりました。

今回のランキングは、ローマやアテネ、イスタンブールなど、徒歩で回れる旅先が選ばれており、いずれの場所も私は散策を楽しんだ記憶があります。バルト三国の都市、タリン、ヴィリニュス、リガも歩くには素晴らしく、そしてバンコクは歩くには少々距離があるものの人力車で回るのも面白い。またプラハでは旧市街や古城を下りて橋を渡ったり、ベルリンでは運河で船に乗ってみるのもお勧めで、ヘルシンキは港のそばが気持ちよく自然も楽しめます。私の考えるものとは少し違うものの、このランキングに異論は全くありません。

今回選ばれた場所は安全でフラットな道が多く、それが高齢者に好まれた最大の理由でしょう。ちなみにサンフランシスコは坂道が多く、麻薬中毒の町とも言われており、思い出のサンフランシスコには将来はない、そんなことを私は思います。


▼訪日外国人客 政府目標が前倒しで実現見通し
 訪日外国人を引き付けるのは古き良き日本の町に長期滞在させるプランか

政府が3月末に発表した観光立国推進計画で、外国人観光客数や1人当たり消費額などの目標を掲げたことについて、これらが前倒しで実現する見通しが明らかになりました。

訪日外国人数推移のグラフによると、急回復しているのがはっきりと分かります。特にこの1カ月においては酷暑が続いても急増しており、かつてのピークである3000万人に戻るのもそう遠くないと思います。しかし過去のピーク時にはオーバーツーリズムでしたので、宿泊施設をしっかりと確保しなければいけません。サービス収支と旅行収支の両方は、今後黒字になる可能性は大いにありますが、現在のサービス収支のマイナスをプラスにすべく、確実にもうかる施策が必要です。



国別の外国人旅行者受入数のグラフでは日本は3000万人で、上位国のそれとは桁が違います。アメリカは面積が広いので8000万人とはいっても比較は難しいですが、フランスは9000万人、イタリアは6000万人と、日本との違いは歴然です。フランスやイタリアには細かい町が多く、そういった町での長期滞在が旅行者の心をつかんでいるようです。日本では高山が今、外国人には最も人気があり、馬籠、妻籠などにも多くの外国人が訪れ、そして私は小布施も魅力の町だと思います。しかしこれらの町には宿泊施設が少なく、イタリアやフランスなどを研究して、受け入れ態勢を整えることが急務です。




---この記事は2023年8月6日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています

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