大前研一「ニュースの視点」Blog

KON989「リコー/ 楽天グループ/ ソフトバンクグループ/ セブン&アイHD」

2023年7月3日 セブン&アイHD ソフトバンクグループ リコー 楽天グループ

本文の内容
  • リコー 長期格付けを1段階引き下げ
  • 楽天グループ 株価が上場来安値更新
  • セブン&アイHD セブンが西武池袋本店の改装案提示
  • ソフトバンクグループ 「AI革命の最先端担う」

▼リコー 長期格付けを1段階引き下げ
 優良企業でも業界全体の苦境には耐えられず

アメリカS&Pグローバルは20日、事務機器大手リコーの長期格付けを、トリプルB +からトリプルB に1段階引き下げたと発表しました。ペーパーレス化や事務機市場の縮小により利益回復が遅れる、と判断したもので、2018年に続く格下げとなります。

リコーはいい会社ですが、業界が大変な苦境に立たされています。紙ではなくてネットで情報を得ることが主流になり、ネットでデータを送ってプリントアウトして会議で使うような会社もさすがに減ってきたため、リコーの将来性は低いと判断されたと思われます。

この分野では、日本にはキヤノン、リコー、富士ゼロックス(現・富士フイルムビジネスイノベーション)といった強力な3社が存在していましたが、すべての企業がマーケットの縮小に直面しています。リコーは売上も横ばいで伸びず、収益も安定しない状況で、株価にも上り調子とはいきません。キヤノンも似たような状況ですが、カメラ市場でもスマートフォンに取って代わられたため、より困難な局面に立たされています。


▼楽天グループ 株価が上場来安値更新
 「携帯キャリアは3社」の世界的風潮に向き合う時

楽天グループの株価が23日。一時488円50銭となり上場来安値を更新しました。赤字が続く携帯事業への懸念が強く、売りが止まらない現状で、携帯の新プランや公募増資による資本増強を打ち出したものの、株式の希薄化懸念により売りが加速した形となっています。

赤字のモバイル事業について決断を迫られている状況です。英国ではボーダフォンとスリーの合併が決まり、米国でも3番目と4番目の携帯会社が合併しひとつになりました。このような世界的な流れの中で、日本でも4番目の携帯会社は必要ないのでは?との見方が市場に広がっています。

楽天グループの業績はネットやフィンテック事業では好調ですが、モバイル事業では赤字が数千億円に上っています。数千億円の増資を行っても、一年で消化されてしまう計算です。
いま問われているのは、「4番目の携帯会社が本当に日本に必要なのか?」ということです。楽天グループの三木谷会長は、この大きな意思決定を迫られています。


▼セブン&アイHD セブンが西武池袋本店の改装案提示
 ヨドバシカメラにも「街の顔」は立派に担える

東京都豊島区の高際みゆき区長は22日、セブン&アイホールディングスから西武池袋本店の改装案を提示されたことを明らかにしました。セブンが進める百貨店子会社、そごう西武の売却をめぐり高際氏が計画の具体案の説明を求めていたもので、計画は「百貨店の低層階の部分に家電量販店大手ヨドバシホールディングスが出店する内容」だと言うことです。

区長の発言には具体性が欠けており、計画案について理解が不十分なのではないかと思います。私に言わせれば、ヨドバシホールディングスが資本を投下し権利を獲得したことに対して、区長がとやかく言うべきではありません。

そもそも池袋はただの住宅地域であり、西武百貨店がヨドバシカメラになったからといって地域の格が変わるわけではありません。豊島区の人々は池袋を自慢の街と思ってるのかもしれませんが、客観的に見れば銀座でも芦屋でもないただの繁華街と住宅地です。西武百貨店なら満足なのかもしれませんが、経営がうまくいっていない以上は諦めるしかありません。ヨドバシは秋葉原や大阪の北ヤードでも街の顔として成功しており、池袋でも活気をもたらす存在になれると思います。

この件に関しては、前の区長も今の区長も具体性に欠ける苦情しか言っていないように私には見えます。どうしても口出ししたいなら、せめて「こういうことはやめて欲しい、こういうふうにしてほしい」と議論ができる提案をするべきです。いずれにしても、区長はこんなことに口を挟んでいるより、他にやるべき仕事があると思います。


▼ソフトバンクグループ 「AI革命の最先端担う」
 AIの先端を担うには10年遅い

孫正義会長兼社長は21日、「グループを挙げてAI革命の先端を担っていきたい」との考えを示しました。ソフトバンクグループはビジョンファンドの業績悪化を受け、二期連続で巨額赤字を計上しましたが、孫氏は「守りは十分にできた。反転攻勢だ」と述べ、傘下の英国、アームを軸にAI事業を中核にする考えを強調しました。

孫氏のことを知っている人なら、今はAI熱に取り憑かれているんだな、と分かります。孫氏は『これが行く道だな』と思うと、しばらくの間、繰り返しそのことについて言及する癖があります。そのため、「グループを挙げてAI革命の先端を担っていきたい」といった発言をしてしまうのでしょう。そして、しばらくすると孫氏はまた別のことに熱中し始めます。

孫氏は昨年10月からAI事業に取り組んでいるようですが、OpenAIのサム・アルトマン氏は10年前から大量の資金を投じ、マイクロソフトなどの巨大企業も巻き込んでいます。残念ながら、この程度の資金ではまったく足りませんし、10年遅れていると言わざるを得ません。ビジョンファンドの問題にちゃんと取り組んで欲しい、というのが株式市場の見方でしょう。


---この記事は2023年6月25日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています

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