大前研一「ニュースの視点」Blog

KON988「岸田内閣/少子化対策/人口減少問題」

2023年6月26日 人口減少問題 少子化対策 岸田内閣

本文の内容
  • 岸田内閣 岸田内閣の不信任案否決
  • 少子化対策 「こども未来戦略方針」決定
  • 人口減少問題 外国人入国超過「0」なら2049年に1億人割れ

・岸田内閣 岸田内閣の不信任案否決
「問題山積の中で見苦しい茶番劇」

衆議院本会議で16日、立憲民主党が提出した岸田内閣に対する不信任決議案の採決が行われ、反対多数で否決されました。野党による不信任案の提出は、岸田首相が衆院解散に踏み切る大義になるとの見方もありましたが、この前日、岸田氏は「今の国会での衆院解散は考えていない」と述べるとともに、「先送りできない課題に答えを出していくのが岸田政権の使命」として、賃上げや子育て戦略に取り組む考えを示していました。

登場人物がみんなみっともない状況です。岸田首相が解散を考えていたようでしたが、マイナンバーカードの混乱と息子の不祥事により、適切なタイミングを逸しました。解散しない方針を明らかにしたら、とたんに不信任案を提出する立憲民主党も情けないと思います。

立憲民主党のこの行動は、選挙では勝てないと弱気になっている証拠です。岸田首相はアイデアとスローガンばかりで何も実現できていませんが、立憲民主党はそれさえ出さない状況です。泉代表の指導下では、何も期待できないと言わざるを得ません。このような事態では、いつ解散が行われても自民党が一人勝ちしてしまうでしょう。

一方、日本が直面している問題は深刻です。国民総生産(GDP)ではインドとドイツとの差が縮小し、新たなユニコーン企業の誕生も見られません。人工知能(AI)の時代においても、我々は依然として工業化立国時代の教育を行っているかのように見えます。教育体制は明治時代から大きく変わっていないと言っても過言ではありません。

それにも関わらず、政治家たちはスローガンばかりで、抜本的な改革を実施する様子はありません。情けないことですが、今の政治家に改革を行う能力も気概もないのだと私は考えます。

解散総選挙に踏み切るとしたら、先進国首脳会議(G7)の後に支持率が上がったタイミングだったはずです。岸田首相はもったいないことをしました。


・少子化対策 「こども未来戦略方針」決定
「結婚を増やすのは正道だが結婚の形に拘ることは逆効果」

政府は13日少子化対策の拡充に向けた「こども未来戦略方針」を決定しました。これは2030年代に入るまでの期間を、少子化傾向を反転できるかどうかのラストチャンスと捉え、今後3年間を集中取り組み期間と位置づけたもので、児童手当の拡充や出産費用の保険適用、及び年収の壁に対応する企業支援の強化などを盛り込んだものとなっています。

30年間解決しなかった少子化問題が、たった3年の取り組みで反転すると本当に考えているなら、見通しが甘いと言わざるを得ません。日本は中国や韓国と同様、生涯出生率が非常に低く、必要な2人には遠く及ばず、むしろ減少し続けています。

Z世代に対する調査では、結婚して子供を欲しいと思っている人は半数程度であり、10%の人は結婚にこだわらずに子供を望んでいます。一方、子供を望まない理由としては、お金の問題だけでなく、親の問題や自分の仕事の問題も挙げられます。これらの問題を解決しなければ、子供の数は増えないでしょう。経済的に楽だから、という理由で、多くの人が親と同居していることも問題です。このような人々は結婚や子供を焦る必要を感じません。

Z世代が子供を望まない理由としては、育てる自信がない、子供が好きではない、自由がなくなる、日本の将来に期待ができないなどが挙げられています。これは時代を問わず言われてきたことではありますが、ひとつひとつ改善していかないといけない問題です。

戸籍に関する問題もあります。差別は減ってきていますが、非嫡出子など、戸籍による差別もまだ存在しています。結婚せずに子供が生まれた場合にも、差別が本当にないのならば、結婚にこだわらずに子供が欲しいZ世代などの中から産む選択をする人々も増える可能性もあります。政府は制度上、戸籍による差別はないと主張していますが、社会が変わるまでには時間がかかります。ヨーロッパの例から見ると、制度を廃止してから社会の認識が変わるまでに必要な時間は30年です。

ヨーロッパのように戸籍制度を撤廃すべきですが、日本では撤廃どころか別姓すらも実現できていません。LGBT差別の撤廃にはようやく進展がありましたが、戸籍に関してはまだ時間がかかると思われます。

一方で、結婚している人々に聞くと、ほとんどが2人以上の子供を望んでいます。したがって、少子化を食い止めるには、まず結婚してもらうことが重要です。正式な結婚にこだわることは逆効果です。内縁でも別居婚でもかまいません。戸籍や形式で差別せず、子供を産む人には政府が経済的な支援を行えば、2人の子供を産む人々も増えるはずなのです。しかし、現在の政策は順序が逆になってしまっています。


・人口減少問題 外国人入国超過「0」なら2049年に1億人割れ
「ドイツ式の移民誘致策で外国人に来ていただくしかない」

国立社会保障人口問題研究所が4月に公表した推計によりますと、外国人の入国超過がゼロの場合、2049年には人口が1億人を割る見通しが明らかになりました。また2020年時点の人口1億2615万人を20年後まで維持するには、年間75万人以上の外国人に定住してもらう必要があるとのことです。

以前から主張している通り、日本は毎年100万人の移民を受け入れなければなりません。細かく計算すると75万人でも足りるかもしれませんが、現実的には100万人を受け入れないと労働力不足を解消することはできません。ドイツのように無条件で移民を受け入れる方針を採り、受け入れた人々には適切な教育を提供する必要があります。不適格な移民を選り分けることはその後の課題です。

2005年以降、日本は死亡数が出生数を上回り、総人口が減少し始めました。これは世界的に見ても珍しい現象です。現在、在留外国人の数は約300万人で、そのうち28%が永住者ですが、この割合を増やさなければなりません。技能実習生など一時的な滞在者を増やしても無意味です。ドイツのように、難民であっても永住権を与える方針を採り、言語教育などもしっかり行い、移民先として選ばれる国とならなければなりません。

現在、日本に移住したいと考えている人々は少数派です。言語の問題もあり、給料も安いため、他の国の方が移住先として魅力があります。日本が高い給与水準にあった時の感覚が抜けず、外国人を見下すような受け入れ態度が残っているため、いつまでたっても悪条件で期限付きの外国人労働者しか受け入れようとしない国民や政府は、現実を直視する必要があります。人口減少は国の勤労人口の減少を意味し、それによってGDPや国力も衰えます。移民に反対する人たちは、本当にそれでいいのかと疑問に思います。

本来は、20年以上前にこの問題に取り組むべきでした。私は長らく人口ピラミッドが芋虫型になっていることを指摘し、警鐘を鳴らしてきました。今更慌てている姿にはあきれるばかりです。


---この記事は2023年6月18日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています

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