アダニグループが見限られた証
ノルウェー政府年金基金の運用を担う、ノルウェー銀行インベストメント・マネージメントは、先月、インドのアダニグループの関連の株式をほぼ全て売却したと発表しました。
米国の投資会社であるヒンデンブルグ・リサーチが、1月にアダニの不正会計疑惑を指摘したことを受けたもので、疑惑の段階でも売却しなければ、資金の出し手の信任が得られないと判断したとのことです。
アダニグループはモディ首相と同じグジャラート州のアーメダバードを本拠地とし、空港や鉄道、道路などインフラ事業で財を築いた企業です。
不正会計疑惑によって、20兆円近くあった時価総額は暴落しました。
ノルウェー政府年金基金はリライアンス・インダストリーズを筆頭に多くのインド株を保有しており、そのうちアダニグループへの投資はごく一部でした。
今回の売却は、ノルウェー銀行がアダニグループを見限ったことを意味しています。
成功すれば自動車業界に大きな影響
米国のテスラは1日、メキシコに新たな工場を建設すると発表しました。
テスラは2030年までに年間2,000万台の電気自動車(EV)を生産する目標を掲げており、世界で5か所目となる工場の立地に注目が集まっていました。
国別の自動車生産台数は中国、米国、日本、インド、韓国、ドイツに次いで、メキシコが年間約300万台で世界7位です。
生産実績がありながらもローカルに強いメーカーがいないところが評価された結果、メキシコが選ばれたと考えられます。
テスラは現在、米国に2か所、中国、ドイツに1か所ずつ工場を持っていますが、生産量は年間約150万台で、目標の2,000万台には程遠い状況です。
メキシコでは現行モデルの半額程度のモデルを生産する計画で、北米自由貿易協定(NAFTA)の枠組みを利用し、米国市場へ投入する戦略です。
廉価な新モデルがどれだけユーザーを惹きつけるかはまだわかりませんが、もし戦略通りに実現すれば自動車産業への影響は大きいと考えられます。
日本の航空宇宙工業に取り返しのつかない遅れ
JAXA(宇宙航空研究開発機構)は7日、種子島宇宙センターから大型ロケットH3の初号機を打ち上げましたが、2段目のエンジンの点火を確認できず、人工衛星を予定の軌道に投入できないと判断したことから、機体を破壊する指令を送りました。
H3は2014年に三菱重工業と共同で開発に着手しましたが、2月の打ち上げ中止に続く失敗により、宇宙開発戦略の見直しを迫られることになります。
小型ジェット旅客機の開発もできなかった企業が、ロケットを作っても上手くいかないのは当然のような気もします。
世界の航空宇宙工業の生産額を見てみると、米国が突出しており、日本はその1割もありません。
今回のH3ロケットもコストの大幅削減を目指し、従来の半額の50億円で打ち上げようと試みたものですが、載せていた衛星は380億円をかけて作ったものです。
そもそも開発費を含めれば、ロケット自体にも約2,000億円を費やしての失敗です。
従来のH2までは打ち上げ精度が高かったという実績はありますが、要はH3ロケットの開発が出来ていないということだと私は考えます。
今回の失敗についての説明は、原因を精査してからだというコメントが出されていますが、電気信号が行かなかったというのは初歩的な失敗なはずです。
お金のかけ方も雑で、原因究明は遅く、誰も失敗の責任を取らず、まともな開発もできていない。
恥ずべき状況です。
現在、世界のロケット打ち上げは、米国とロシアに完全に依存しています。
このような無責任な開発が続くようでは、日本の宇宙航空技術がスペースXやロシアに追いつくことはもう不可能だと言っていいでしょう。
粗探しをするだけの原子力規制委員会に疑問
原子力規制委員会は8日、東京電力柏崎刈羽原発の検査の途中経過を公表し、去年9月に確認した27項目のテロ対策のうち、6項目が不十分だと指摘しました。
原子力規制委員会は不備は指摘するものの、どうすれば問題なく再稼働できるかについては一切アドバイスがありません。
審査自体は終わっているにもかかわらず、6項目で対策が不十分だと言うなら、具体的にどうすればいいのかまで提案するべきです。
提案が無いということは、ただ再稼働を妨げるための粗探しだとしか考えられません。
今の原子力規制委員会は、エネルギー政策をより良いものにする気概の無い、無意味な集団に成り下がってしまっています。
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※この記事は3月12日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週は柏崎刈羽原発のニュースを大前が解説しました。
大前は、「原子力規制委員会によるとテロ対策で不十分な点があるとのことだが、どのように改善すべきかを具体的に指摘しないと、いつまで経っても再開できない」と述べています。
問題を特定したあとは、あるべき姿とのギャップを埋めるために具体的にどのような取り組みが必要か検討する必要があります。
机上の空論で終わらせないためにも、具体的に行動プランを作成し、そして実際にプラン通りに行動できたかを振り返ることが大切です。
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