- 本文の内容
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- 国内観光業界 宿泊、旅行関連5,000施設が閉業
- 最低賃金 2022年度の最低賃金時給961円へ
- 行政デジタル化 自治体IT、ベンダー依存深刻
- 旧統一教会 前川氏が名称変更の経緯を証言
訪日制限下では旅行業の復活は遠い
日経新聞社とNTTタウンページが共同で行った調査結果によると、新型コロナの感染拡大が始まった2020年からの2年間で、国内の旅行・宿泊関連の施設が約5,000件減少したことがわかりました。
行動制限が長引き、経営が難しくなったことが要因とみられ、宿泊業からの人材流出も続いており、外国人観光客の受け入れ再開後の業務に支障が出かねない現状ということです。
例えば、熱海の1泊2食付き9,800円くらいの宿泊施設などは、外から見ても営業している様子がありません。
インバウンドで賑わっていたところですから、外国人観光客が来なくなれば成り立たないのは自明です。
5,000件倒産しているというのは多く感じますが、それだけ宿泊業界、特にローエンドの宿泊施設にとって新型コロナは大打撃だったということです。
外国人観光客の訪日も解禁されはしましたが、日本側で「1日あたり2万人までの入国許可」などの制限をかけており、かつては年間3,000万人の観光客がいたことを考えると焼け石に水です。
今後外国人観光客が増えるにしても、日本政府の動向からすれば一気に制限を緩和することはなさそうなので、3,000万人に戻るのは5年後でも難しいと私は考えます。
旅行業界のダメージは大きく、復活には時間を要するでしょう。
来年は最低賃金1,000円を巡る政治的攻防が起こる
厚生労働相の諮問機関である中央最低賃金審議会は1日、2022年度の最低賃金の目安は全国平均で時給961円とする方針を決定しました。
足元で進む物価上昇などを反映しており、前年度に比べ上げ幅は31円と過去最大となりますが、企業は今後賃上げに必要な利益を上げるため、生産性の向上などを迫られることになります。
去年は28円、今年はそれを上回る31円で過去最大と、大幅な値上げが続いている印象があります。
来年は39円以上値上げすると最低賃金が1,000円を超えますので、おそらく最低賃金1,000円をめぐって政治的な攻防が繰り広げられると予想します。
過去最大の上げ幅ですが、諸外国の最低賃金と比べると、ドイツは約1,630円、フランスは約1,470円であるため、日本の賃金の低さは大きな問題だと言えます。
また、東京は既に1,000円を超えていますので、地域格差も存在します。
一方で物価に目を向けると、企業物価は2021年1月に比べて約10%上がっているのに対し、消費者物価は約3%しか上がっていません。
この夏、多くの商品が値上げしましたが、依然として消費者物価への転嫁は進んでいない状況です。
賃金が上がらない以上、今後も転嫁は難しいでしょう。
とはいえ、一時は対前年同月比で約20%値上がりしたエネルギー、約10%値上がりした生鮮食品も、ここ3か月では急落しています。
このまま深刻な物価上昇に至らずに終われば、来年の最低賃金の動向は物価上昇の反映というより、1,000円を超えるインパクトにまつわる政治的な圧力によるものになりそうです。
発注者側に人材がいないことが日本の最大の問題
総務省の調査によると、自治体の情報システム管理をIT企業に発注する際、市区町村の2割以上で責任者が不在だったことがわかりました。
兵庫県尼崎市で住民情報が入ったUSBが紛失した問題では、特定業者が30年以上同じ業務を受託し、市の許可なく業務を再委託するなどシステム管理の甘さが浮き彫りとなっており、デジタル人材の育成とシステム運用体制の見直しが急務となっています。
今頃になって日経新聞が「ベンダーロックイン」などと報じるようになりましたが、この問題は日本がデジタル化後進国に甘んじている原因です。
発注者側に担当者がいないということは、それほど深刻な事態です。
ITがわかる人がいないまま、業者に任せて作らせてしまうとどうなるか。
まず、業者は競合に契約を取られないように、自分たちしか仕組みがわからないようなシステムを作ります。
すると、ちょっとした手直しにも多額の料金を請求されます。
発注者側が手直しを他の業者に頼もうとしても、わからないように作られているので引き受けてもらえず、新しく作り直してもらうしかなくなります。
こんな不経済なシステムを約1,700の市区町村がばらばらに作っているのが、行政のデジタル化が遅々として進まない原因です。
日本の縦割り行政だったら、国がシステムをひとつ作って全自治体に使わせれば済んだはずで、それが中央集権の利点でもあったはずなのですが、中央省庁にもできる人材がいませんでした。
その結果、NECも、日立も、富士通も、利権化した行政システムベンダーの地位に安住し、日本はデジタル化後進国になってしまいました。
今回は行政の話題ですが、企業でも同じことが起こっています。
私がインドの会社と組んだ時も、多くの顧客企業にデジタル化の担当者がいませんでした。
提案した内容をよく理解してもらえないまま「とりあえず」で作らされ、完成してから色々と注文をつけられ、無償の手直しを要求されるトラブルが多発し、結局インドの会社は日本から撤退してしまいました。
発注者側に一人でもITがわかる人材がいれば起こらない問題なのに、その一人がいなかった。
これが日本の最大の問題です。
安倍派が力を失うなど、党内勢力図が変わるきっかけに
前川喜平元文部科学事務次官は、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題をめぐる野党の合同ヒアリングに出席し、2015年に名称変更した経緯を証言しました。
その中で前川氏は「当時の文化庁の宗務課長が説明に来て、名称の変更を認証すべきではないという意見を述べたが、その後認証された」とし、「私のノーを上回り、イエスと判断できる人は事務次官と大臣しかいない」と述べ、当時文部科学相だった下村博文氏が承認したとの見方を示しました。
前川氏は前川製作所の創業者一族なので、経済力があります。
お金に困っていないので、今最も言いたいことが言える元・事務次官という立場にある人です。
ここまで追い詰められた下村元文科相も、「申請を受理しろとは言っていないが、今となっては責任を感じている」と言わざるを得ない状況になりました。
岸田首相は新しい内閣を組閣するにあたり、統一教会との距離も測ると明言しています。
力が弱い議員ほど統一教会の組織力に頼っていたという事実があるので、各議員の本当の影響力が明るみに出るいい機会になりそうです。
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※この記事は8月7日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週は行政デジタル化のニュースを大前が解説しました。
大前は「発注側にシステムに詳しい担当者がいないため、ベンダー側が他社に移行されないよう独自のシステムを構築することで、長期間に渡り同じベンダーへ発注せざるを得ないという状況は大きな問題」と指摘し、「行政だけでなく企業でも同様の問題が生じており、日本はデジタル後進国になっている」と述べています。
テクノロジーと共存する今の時代、誰しもがテクノロジーに関する基礎知識を学ぶことが必要とされています。
進化するテクノロジーを取り入れてビジネスをより発展させていくために、最新のニュースなどから日々学ぶ習慣を身につけることが大切です。
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