大前研一「ニュースの視点」Blog

KON933「日米関係/米中関係~日本は対中姿勢で米国に追従すべきではない」

2022年5月30日 日米関係 米中関係

本文の内容
  • 日米関係 日米、中国を「共同抑止」
  • 米中関係 台湾問題で米国を批判

日本は対中姿勢で米国に追従すべきではない


日経新聞は18日、「日米、中国を共同抑止」と題する記事を掲載しました。

日米両政府は23日の首脳会談でまとめる共同声明に、中国の行動を共同で抑止し対処する方針を明記する調整に入ったと紹介しています。

また、米国の核の傘による日本防衛や両国の安全保障戦略の共有も打ち出す見通しで、米国はインド太平洋の新たな経済枠組みを発足することを表明するなど、アジアへの関与を明確にする方針としています。

「共同抑止」などという言葉は絶対に使ってはいけない言葉だと思います。

確かに、最近の習近平国家主席は権力・経済力を振りかざす傾向があります。

中国国内での地位を保つためとも考えられますが、理由はどうあれ覇権主義を前面に出す中国を牽制したくなる気持ちはわかります。

しかし日本にとって得になることはありません。

米国はインド、オーストラリアと日米による「クアッド」の連携で中国に対抗しようとしていますが、その効果には疑問が残ります。

24日にクアッドの会合が開催されたものの、インドのモディ首相にとっては優先順位が高い問題ではなく、またオーストラリアのアルバニージー首相も政権交代した翌日であるため準備期間が短すぎます。

いくらバイデン大統領が来日するとはいえ、日本がこの会合を主催する価値はあるのでしょうか。

私としては、日本がバイデン大統領に安易に追随するのは危険だと考えています。

理解に苦しむ政策や言動もありますし、米国内での支持率も下がっています。

中国は日本にとって2,000年前から師と仰いできた国であり、日本と中国にはごく一部の「不幸な一時期」を除いた良好な関係があるのです。

その歴史を軽視し、「共同抑止」などという対決姿勢を示すところまで米国と協調するべきではないと考えます。




東アジアに疎い米国が台湾問題で勇み足


米国のサリバン大統領補佐官と中国の外交担当のトップの楊潔篪共産党政治局員が18日、電話で協議しました。

その中で楊氏は台湾問題について、「米国は台湾独立を支持しないと繰り返すが、実際の行動と態度には大きな差がある」と批判。

また、「米国側が台湾カードを行使するならば、必ず情勢を危険な境地に導く」と警告しました。

楊潔篪氏は英語が堪能で、駐米大使も経験している米国通です。

彼のような人物であれば、台湾問題で中国のタカ派を刺激するのは得策ではないと米国を諭していると考えられます。

そもそも台湾がクローズアップされる背景には、ロシアのウクライナ侵攻があります。

北大西洋条約機構(NATO)とロシアの間にウクライナが存在し、米国はウクライナに派兵しないという判断がロシアを強く後押ししました。

中国と米国の間に存在する台湾も同じ構造に見えているために、米国は台湾を守るのか否かが注目されているのです。

しかし両者には3つの大きな違いがあります。

まず、NATOに加盟していなかったウクライナと違い、台湾に対しては直接米国が関与できる余地があります。

また台湾はウクライナに比べ、軍事力も経済力も強大です。

ロシアが苦戦しているのを目の当たりにして、それより強い台湾を直接叩くのは難しいという考えが中国では支配的になっているはずです。

戦闘が長引き、台湾からミサイルなどで反撃される事態になれば、中国側に看過できない損害が生じます。

そして、中国国内の産業の多くを台湾の会社が動かしているという事情もあります。

もしも中国が台湾企業を国有化したり、台湾人を追放したりした場合には中国の経済が回らなくなります。

以上の国際関係的、軍事的、経済的な事情によりウクライナと台湾のリスクは全く異なっています。

しかし米国はこうした東アジア事情の理解が浅いため、単純な比較で勇み足になってしまっているのです。

中国側の事情通が窘めるのは当然のことでしょう。

なにより日本が安易に米国に追従して、「共同抑止」などと打ち出すのは最悪の事態だと私は考えます。




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※この記事は5月22日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は米中関係のニュースを大前が解説しました。

大前は中国と台湾の産業等における関係性について解説したうえで、「アメリカ側が台湾有事の際はウクライナでの事例を参考にするとしているが、中国と台湾の関係性を考えれば再考すべきである」と述べています。

他社の事例を参考にする場合、事例の前提条件や事業環境、事例が発生した時期などを踏まえて判断しましょう。

その事例が成功した理由を深堀し、自社に適用できる部分を慎重に見極めることが大切です。


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