- 本文の内容
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- ウクライナ・ゼレンスキー大統領 ゼレンスキー氏、支持9割
- 国連総会決議 国連決議に141カ国が賛成
- EU情勢 ウクライナのEU加盟へ努力求める決議採択
ロシア・ウクライナ問題は、2つの観点で見る必要がある
ウクライナのゼレンスキー大統領の支持率は昨年夏には3割程度まで落ち込んでいたものの、現在は9割を超えました。
ロシアの侵攻開始後、SNSへ頻繁に投稿し、団結を呼びかけ国民を鼓舞することで、ロシアへの抵抗を牽引していることなどを受けたものです。
コメディアン出身の経歴などから危機への対応が覚束ないとの見方が一変したとのことです。
ゼレンスキー氏はあるテレビ番組に出演したことがきっかけで大統領に当選することになりました。
大統領就任時は支持率は8割ほどありましたが、その後どんどん下がりました。
そして、支持率が3割程度まで下落した頃から、ゼレンスキー大統領の地獄が始まりました。
何とか支持率を回復しようと欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)への加盟を画策したり、ソ連邦時代には核開発の中心地だったウクライナが核を放棄したのは間違いだったと発言したりするなど、様々な動きを見せるようになりました。
それがロシアのプーチン大統領の癪に障って、今回の悲劇を招く結果になりました。
プーチン大統領は当初ウクライナには攻め込まないと言っていたものの、結局、侵攻しています。
その結果、ウクライナ侵攻のやり方に国際的な批判が殺到しました。
そしてロシアは様々な制裁を受けることになり、ロシア国民の生活にも影響が出ています。
ロシア国内に言論統制を敷く状況になるほどですから、もしロシア国民に本音を聞けば、今のプーチン大統領の支持率は1割にも達しないのではないかと私は見ています。
一方ゼレンスキー大統領は毎日同じTシャツを着て、髭を生やしっぱなしで、何があってもキエフに留まるという姿勢を見せて国民を鼓舞し、今や支持率は9割に達しています。
一説にはロシアから暗殺者が送り込まれているとも言われ、身の危険を感じる状況が続いているのでしょう。
先日、米国の議員とオンライン会談を行った際には「生きて皆さんと会えるのは最後かもしれない」などと発言していました。
本音でもあるでしょうが、このあたりの演出はさすが元コメディアンだと思います。
もし今、ゼレンスキー大統領の身に何かあったら、彼は完全に英雄になり、ジャンヌダルクのようになるかも知れません。
一方で、そうなったらプーチン政権は終わりだと私は思います。
ロシアがウクライナに侵攻してからこの約2週間で大きく事態が変化し、両大統領の立場にも影響を与えています。
この情勢を判断するにはこの約2週間でマスメディアを通じて何が報道され、ウクライナの民衆や世界の民衆などがどう変わってきているのかを冷静に見る癖をつけることが重要だと思います。
「ゼレンスキー大統領が悪い、プーチン大統領は正しい」などと発言していた日本の元代議士もいるようですが、この問題の核心からズレていると私は思います。
この問題は「なぜそもそもこういう事態を招いたのか」という部分と、「ロシア侵攻が始まってから約2週間で何が起こったのか」という部分を切り離して考えるべきだと私は思います。
そして今、ロシアは世界から非常に厳しい批判の目が向けられています。
国連決議を棄権したインドと中国
国連総会の緊急特別会合が2日招集され、ロシアによるウクライナ侵攻に最も強い言葉で遺憾の意を表すとの決議を141カ国の賛成多数で採択しました。
決議はロシアに対して軍の即時かつ無条件の撤退を求めたほか、ウクライナ東部の親ロシア派支配地域の独立承認の撤廃などを要請するもので、決議に法的な拘束力はないものの、多数の国が結束してロシアの孤立を印象づける狙いがあります。
国連安保理は拘束力がありますが、ロシアが拒否権を行使したため、国連は総会を開くことになりました。
3日間の議論を経て、圧倒的にロシアへの批判が強いということで今回複数の国が決議を出したという流れです。
今回の決議には3分の2以上の国が賛成しました。
拘束力はありませんが、国際社会としてロシアを非難するメッセージを発することができました。
決議に反対したのは、当然のロシア、ベラルーシ。
そして、ロシアに助けてもらったことがあるアサド政権のシリア、そして北朝鮮、エリトリア。
棄権した国は多くありましたが、特にその中で批判されているのはインドと中国です。
インドはロシアから兵器を買っているので、こういう事態になると逃げる癖があります。
中国は「棄権するのは卑怯だ」と世界から批判を受けています。
ウクライナのEU加盟は一筋縄に行かない
ウクライナのゼレンスキー大統領は先月28日、欧州連合(EU)加盟を正式に申請する文書に署名したことを受けて、欧州議会は1日、ウクライナの加盟に向け加盟国や関係機関に努力するよう求める決議を採択しました。
決議に拘束力はなく、実際に加盟交渉を始めるかどうかは加盟27カ国の全会一致が必要ですが、EUのミッシェル大統領は真剣に検討すると表明しました。
今のウクライナの状況に同情したのでしょう。
EU委員の中には感情的になってウクライナのEU加盟に賛成と発言してしまった人がいます。
しかしウクライナのEU加盟はそんな簡単な話ではありません。
EUには加盟国のほか、EUが認定した加盟候補国があります。
現在の加盟候補国はセルビア、北マケドニア、トルコ、モンテネグロ、アルバニアです。
トルコは20年以上もEU加盟を待ち続けています。
ウクライナがロシアに侵攻されて大変だからといって、こうした国々を追い抜いてすぐにEU加盟を承認されるとなるとまた問題を生むでしょう。
特にセルビア、モンテネグロ、北マケドニアの旧ユーゴスラビア連邦の国との関係性は複雑であるため、ウクライナが加盟するという流れには一筋縄には行かないと思います。
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※この記事は3月6日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週はウクライナ・ゼレンスキー大統領のニュースを大前が解説しました。
大前はプーチン大統領とゼレンスキー大統領の現在までの行動を比較し、「ゼレンスキー大統領がこの1~2週間の間逃げ隠れせず行動し、発信を続けていることで、ウクライナ国民からの支持率が急上昇している」と述べています。
苦境に立たされた際、リーダーが状況を変革するために進むべき道を提示し、自ら率先して実践する姿勢が必要です。
リーダーがあきらめずに行動し続けることでチームからの信頼が得られ、より結束力が強まります。
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