大前研一「ニュースの視点」Blog

KON881「ターゲティング広告/アマゾン・ドット・コム/グローバル課税/企業統治~ターゲティング広告は基本的に禁止すべき」

2021年5月24日 アマゾン・ドット・コム グローバル課税 ターゲティング広告 企業統治

本文の内容
  • ターゲティング広告 「追跡型広告」転換期に
  • アマゾン・ドット・コム 2025年までに米最大小売業に?
  • グローバル課税 GAFA課税、15%どまり
  • 企業統治 投資家、適切な納税促す

ターゲティング広告は、プライバシーの侵害そのもの


日経新聞は先月28日、「『追跡型広告』転換期に」と題する記事を掲載しました。

米アップルが新たに配信したOSで、利用者のアクティビティを追跡するのを許可するか、事前の承認を求める仕組みを導入したと紹介。

世界的な個人情報保護の流れを受けたもので、ネット広告市場を牽引したターゲティング広告は転機を迎えたとしています。

ターゲティング広告は、本人が知らないうちにネットを検索した履歴などを勝手に追跡して、類似した広告を出す仕組みです。

技術的に問題はないのでしょうが、はなはだしいプライバシーの侵害だと私は思います。

ネットの検索履歴情報にクレジットカードの利用履歴情報を合わせると、さらに「使いやすい」個人情報になります。

中国企業の場合、1社でこのような複数情報を取得しているケースが多いのですが、米国企業の場合には、他社と提携してそれぞれの情報を併せて活用するケースや、あるいは他社に情報を売却してしまうケースが見受けられます。

ターゲティング広告について、事前承認制にすると3~4割の人は承認するという意見もありますが、私には全く想像ができません。

私は必要だと思うものは自分で見に行きたいですし、勝手に追跡した情報を活用されるのは気持ちがよくありません。

ターゲティング広告は基本的に禁止すべきだと思います。




アマゾンがウォルマートを抜き去って世界一になる日が見えてきた


日経新聞は先月28日、「アマゾン、米最大小売業に?」と題する記事を掲載しました。

Eコマースの分析会社エッジ・バイ・アセンシャル社がまとめた統計によると、アマゾン・ドット・コムが2025年までにウォルマートに代わる米最大の小売業者になる見通しが明らかになったと紹介。

パンデミック最大の受益者となったアマゾンが大規模なプラットフォームと配送拠点の増設により、ウォルマートの優位性を脅かしているとのことです。

ジェフ・ベゾス氏が1998年にアマゾンを創業したときの「設立趣意書」には、単なる本屋ではなく世界最大の小売業を目指すと記載されていました。

今、まさにウォルマートを視野にとらえ、世界最大の小売業という夢が現実味を帯びてきました。

巣ごもり景気が強烈な追い風になっています。

ウォルマートのような店舗に変わって、インターネットのアマゾンでモノを買う人が一層増えています。

まだウォルマートの売上高のほうが約2倍の規模ですが、Eコマースが急増していることもあり、あと4~5年のうちにはアマゾンがウォルマートを抜き去るのではないかと見られています。

今でもセール時には瞬間的にウォルマートを上回る大きな売上をあげることもありますが、1年間というスパンで見てもアマゾンがウォルマートの売上高を抜いていくのは間違いないと思います。

アマゾンの中で検索すると、本に限らず何でも見つけることができますし、名実ともに世界最大の小売企業になりつつあります。

もしそうなれば、創業時の志を達成したということになるので、ジェフ・ベゾス氏も引退するかも知れません。




米国は法人税として25%ぐらいを目指すべき


日経新聞は9日、「GAFA課税 15%どまり」と題する記事を掲載しました。

世界の主要5万7000社について、会計上の法人税等を税引前利益で割って「税負担率」を算出したところ、米IT大手のGAFAは15.4%と、世界平均の25.1%より9.7ポイント低かったと紹介。

既存の税制は、工場などの有形資産から発生した利益を多く捕捉する傾向にあることが要因で、無形資産をカバーするグローバルなルールの整備が課題としています。

当初バイデン大統領は、巨大企業への課税を2倍にするため、税率を25~30%にすると発言していました。

しかし、その後だんだんと尻すぼみして、15%という数字に落ち着いてしまいました。

GAFAMの業績を見ると、いずれも大きな売上と利益を出しています。

特に利益額が大きいのはアップルで、アマゾンは小売業を伸ばす為にあまり利益を出さずに成長させるというやり方を継続しています。

もしアマゾンが利益を出そうと思えば、アップル並みの利益を出すことも可能でしょう。

GAFAMなどのIT企業は、オペレーション業務をアイルランドで行うなど、全体として実効課税が低くなるように工夫をしています。

15%の税率でも今までより高い水準と言えますが、私は最低でも米国企業には25%ぐらい課税するべきだと思います。

そうすることで、「バイデン計画」で構想している過剰な投資についても、財源を確保することもできるはずです。

主要国の法人税収を対GDP比で見てみると、日本は4%、英国は2~3%、それに対して米国は1%を割り込んでいます。

日本の4%という水準はやや高すぎるという見方もあるので、米国もひとまず英国並みに2~3%を目指すと考えても良いでしょう。

バイデン大統領は富裕層に課税すると言っていますが、富裕企業から法人税として徴収することをもっと考えるべきだと思います。




ノルウェー政府年金基金に世界の模範になってほしい


日経新聞は16日、「投資家、適切な納税促す」と題する記事を掲載しました。

世界の機関投資家の間で、投資先の企業に対して納税の責任を求める機運が高まっていると紹介。

欧州では過度な節税策やその説明も怠る企業への投資を見送る年金基金が出てきており、背景には多国籍企業などが納税回避を続ければ社会の不平などが深まり、企業自身の持続可能性を危うくするとの考えがあるとしています。

この動きは非常に良いと思います。

特に世界最大の政府系ファンドであるノルウェー政府年金基金を運用しているノルウェー銀行には、率先して取り組んでほしいところです。

ノルウェー政府年金基金は世界最大の規模を誇り、また環境・社会・企業統治を考慮する「ESG投資」で運用業界をリードしてきたという特徴があります。

そんなノルウェー政府年金基金が、「ESG」の(特に環境)テーマに沿わない企業には投資しない、という判断をすれば大きな影響があると思います。

また現実的に、率先して実行できるのはノルウェー政府年金基金ぐらいでしょう。

他の基金はどうしても目先の利回りを上げたいと考えていますから、余裕がありません。

むしろ、ESGを守らない企業に投資したほうが目先の利回りを上げやすい、というのが現実です。

現状、ノルウェー政府年金基金は利回りを高く維持できていますし、元々、北海油田の利益を基に運用しているので、短期的な利回りを追い求める必要がないのではないでしょうか。

また、すでにノルウェーの少ない人口に対して将来数十年分の資金を持っているほど、余力があると言われています。

世界最大にして余力たっぷりのノルウェー政府年金基金が率先して模範を示してくれれば、日本のGPIFなど他の基金も追随してくれる可能性があります。

是非、世界の規範になってほしいと思います。




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※この記事は5月16日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています




今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週はターゲティング広告のニュースを大前が解説しました。

大前はターゲティング広告について、「入手した情報を第三者の情報と組み合わせたり、売ったりすることが問題」「プライバシーの侵害であるため、基本的には禁止すべき」と述べています。

ネット上での個人の行動データの追跡や収集されたデータの分析が容易になり、個人情報の観点から多くの問題が発生しています。

自らを守るため、情報技術がどのように活用されているのか、法整備はどこまで進んでいるのか、知っておく必要があります。




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