大前研一「ニュースの視点」Blog

KON875「国内死亡数/国内ワクチン接種/英ワクチン接種/英新型コロナ治療~ワクチン選択発言に見る、河野行政改革相の器」

2021年4月12日 国内ワクチン接種 国内死亡数 英ワクチン接種 英新型コロナ治療

本文の内容
  • 国内死亡数 コロナ禍、超過死亡なし
  • 国内ワクチン接種 ワクチン選択発言は「勇み足」
  • 英ワクチン接種 血栓ができた30人中7人死亡
  • 英新型コロナ治療 退院患者の29.4%が140日以内に再入院

結果だけを見れば、日本は新型コロナによって生き延びた人が多かった1年


日経新聞は先月29日、「コロナ禍、超過死亡なし」と題する記事を掲載しました。

2020年の1年間の死亡数が、欧米では死亡数が平年を上回る「超過死亡」となった一方、日本は11年ぶりに減少しました。

マスクの着用や手洗いの徹底などで季節性のインフルエンザが激減したことなどが要因と見られる一方、国内の新型コロナによる死亡数の9割は高齢者であるほか、集団感染の発生も高齢者施設が最も多く、急所を突いた対策への転換が急務としています。

日本人が様々な「言いつけ」を律儀に守った結果だと言えるでしょう。

手洗い、マスクの着用を徹底し、インフルエンザのワクチン接種も積極的に行ってきました。

海外の論文によると、インフルエンザのワクチンでも、新型コロナウイルスに効果が見られた例もあるとのことです。

日本では、2020年の新型コロナによる死亡数は1673人でした。

感染性胃腸炎による死亡数よりも少ないのは驚きです。

また、インフルエンザの死亡数が前年の3281人から941人に激減しているのも驚異的だと思います。

呼吸器系疾患による死亡数を見ると、肺炎による死亡数は7~8万人ですから、新型コロナによる死亡数とは比べものになりません。

この結果だけを見れば、新型コロナ対策よりも、肺炎対策に力を入れたほうが良いという意見が出てもおかしくありません。

新型コロナウイルス感染が拡大し、その対策をしたことで、日本は結果として「超過死亡」がマイナスになるという世界的に見ても非常に珍しい国になりました。

欧米では新型コロナによる死亡数が多く、「超過死亡」になっています。

すなわち、結果だけを見れば、新型コロナウイルスによって、日本では「生き延びた人が多い」と言えます。




ワクチン選択発言に見る、河野行政改革相の器


河野行政改革相は先月30日、複数の新型コロナワクチンが承認された場合、国民が接種を受けるワクチンを選択できるとした小林内閣府大臣補佐官の発言について、「完全に勇み足」と述べ小林氏の発言を撤回し陳謝しました。

その上で河野氏は「ファイザー以外に今後2社の承認が予定されているが、それをどのような形で接種していくか戦略を検討しているところ」と強調しました。

率直に言って、河野行政改革相の発言は非常にみっともないと私は感じました。

一言でいえば、「器の小ささ」が如実に表れています。

小林氏の発言内容自体に問題はないし、良いことだと私は思います。

小林氏が述べた内容は、ワクチンの接種場所によってそれぞれワクチンを分けておいて、個々人が接種したい場所を選んでいけば良いというものでした。

これは理にかなっています。

少なくともファイザーのワクチンにアナフィラキシーショックの心配がある以上、ワクチンを接種する立場としては、ファイザーではないワクチンを選択できるようにしたいと思うのは当然です。

アナフィラキシーショックの経験がある私もその1人です。

この小林氏の発言に対して、河野行政改革相は「担当大臣」として全面的に否定しましたが、まるでテリトリーを荒らされてヒステリックになっているように私には見えました。

本来なら、「小林氏の発言内容も良いと思うが、実際問題として、混乱が発生する可能性があるため、接種すべきワクチンは原則として指定したい」「その上で、アナフィラキシーなどの理由により、どうしても接種するワクチンを選択したい人は届け出を提出してもらった上で対処する方針だ」という物言いをするべきだったと私は思います。

今回の対応で、河野行政改革相には指導者としての能力がないと私は感じました。

次の首相候補として推す人もいるようですが、その器ではないと私は思います。




もっとデータを集めなければワクチン接種の方針は定められない


英医薬品当局は3日、アストラゼネカとオックスフォード大学が共同開発したワクチンについて、接種を受けて血栓ができた30人中7人が死亡したと発表しました。

英国では今までにこのワクチンが約2000万回接種されていますが、当局はワクチン接種の効果はあらゆるリスクを上回るとして接種の継続を呼びかけました。

もう1つの問題は、2回目のワクチンを接種した後、容態が悪化する人が多いということです。

若者であっても、発熱したり、血栓ができる症例が確認されています。

こういった事実も踏まえて、2回目のワクチンを打つメリットとデメリットについて、オックスフォード大学などは解明して説明するべきだと思います。

また、血栓ができた30人中7人が死亡したということですが、医療制度が確立していれば、血栓を溶かすこともできたはずです。

なぜ、そういう対応ができなかったのか?現時点においては、全く情報が足りていないと感じます。

このままでは、2回目のワクチン接種を受けるのが怖いと感じるのは当たり前です。

しかも、無症状の若者がワクチンを接種した結果、血栓ができて記憶がおかしくなったり、身体のだるさを訴える症例もあるというのですから、恐ろしい限りです。

さらに、英レスター大学や英国家統計局のチームの発表によると、2020年8月までに新型コロナで入退院した患者のうち、治療して退院した患者約4万8千人の中で、140日以内に29.4%が再び入院しており、約12%は退院後に死亡していたというのです。

主な死因は多臓器不全とのことですが、これはかなり深刻なことだと思います。

新型コロナとワクチン接種の問題については、こういった問題がクリアになるまで、安易に方針を決めつけるのは危険でしょう。

現時点でファイザー製ワクチン、アストロゼネカ製ワクチンのどちらが良いとも言い切れないはずです。

それぞれ違った方法で作られたワクチンなので、きちんとデータを取って判断していくべきです。

本来なら、WHO(世界保健機関)がこうしたデータを集めて発表するべきなのに、遠距離からの評論家気取りで何も動いていないのは残念でなりません。




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※この記事は4月4日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています




今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は国内死亡数のニュースを大前が解説しました。

大前は新型コロナウイルス感染症について、様々なデータを参照しながら日本の死亡状況を考察しています。

複数のデータを参照・分析することで、単一データだけでは見えない事実にたどり着くことができます。

各データの関係性を見抜き、洞察することで総合的に状況判断することができ、正しい意思決定や行動に繋がります。



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