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- デジタル庁 平井デジタル改革相に検討指示
デジタル担当大臣は、一段上の立場に置かなくてはいけない
菅首相は17日、平井デジタル改革相にデジタル庁の検討を急ぐように指示しました。
来年1月の通常国会に関連法改正案を提出し、秋までに新設する考えとのことです。
私に言わせれば、デジタル担当大臣は他の省庁の大臣よりも一段上の立場に置かなくてはいけないと思います。
すべての役所に対して、今までと異なるやり方を提案・実施する必要があるので、同列の単なる一省庁の大臣では無理だからです。
私はかつてマレーシアのマルチメディアスーパーコリドーの構築に携わりました。
あらゆる法律を全て書き換えて「マルチメディア法」を作りましたが、このときデジタル担当大臣に相当したのはマハティール首相自身でした。
そうでなければ他の省庁の古いしきたりを壊して、法律も含め新しいものをゼロから作り上げるということはできなかったからです。
また、台湾の天才デジタル担当大臣と言われるオードリー・タン氏を見ても、明らかに他の大臣よりも上の立場に置かれています。
これも同じ理由でしょう。
自らゼロベースで新しい政府の組織運営体制を構築できるような人材が必要です。
そういう意味で、もし私が提案するなら、インドの国民識別番号制度アドハーを作り上げたナンダン・ニレカニ氏を推したいと思います。
現在、ニレカニ氏はボランティア活動のようなことをしているようなので、2年ぐらい日本に来てもらって、デジタル担当大臣としてゼロからすべて構築してもらうように依頼します。
実際のところ、このぐらいの人物を連れてこなければ、デジタル担当大臣としての役割を果たすのは難しいと私は思います。
DX化が進む中、ビジネスパーソンに最も求められるスキル
今後、企業においても「DXの流れ」というのはますます加速していくでしょう。
そういう環境において求められるのは、「単にデジタルに詳しい人材」ではなく、「デジタルを活用したソリューションを考えられる人材」だと私は思います。
DX化が進み、デジタルによって横串を刺すことで、今まで領域が分かれていた仕事を1つのものとして捉える必要が出てきます。
そのとき求められるのは、人海戦術による力技のソリューションではなく、ITを駆使しながら効率の良いソリューションを導き出せる人材です。
その大前提になるのは、ITの知識や経験に加えて、自分自身で答えを導き出せるスキルがあるかどうかです。
今の日本人は、受験勉強の悪い影響もあって、「いきなり答えを求める」という癖がついている人が多いと思います。
そうではなく、ゼロベースで答えを見つけるということです。
どこの国に行こうが、どの会社に行こうが、「自分はこう考える」ということをゼロから自力で考えられることは、DX化が進む今後の時代においても、極めて重要なスキルになると思います。
私は企業のレベルにおいても、国家のレベルにおいても、常にこの訓練を続けてきています。
ビジネスパーソンとして、日頃から問題に直面したときに「自分ならこのように考えて、答えを導き出す」という訓練を続けてほしいと思います。
今、日本が国家として抱えている最大の問題は?
河野太郎行革担当相は18日、自身が立ち上げた行政改革目安箱「縦割り110番」の受付を停止したことについて、予想を超える4000通ものメールが寄せられ、1人で返信する範囲を超えたためと説明したとのことです。
私も提案したいことは山ほどありますが、今の日本という国家にとって最も大きい問題は次の2つだと思います。
まず1つには「飛び抜けた人材」がいないということです。
21世紀においては国を躍進させるためには「飛び抜けた人材」が必要です。
しかし、日本は20世紀の工業化社会に過剰適応した結果、いまだに「平均値の高い人材」を大量生産するという方針を変えていません。
これは文科省だけの問題ではなく、企業を含めて解決しなければならない問題だと思います。
共産主義の中国でも、今は「平均値の高い人材」を育成しようとは思っていません。
米国に負けず劣らず、極めて「飛び抜けた人材」の育成に力を入れています。
世界のトップクラス人材を何人送り出せるかということに、国家として注力しているのが見て取れます。
一方で、日本は未だに「学校に行ったら先生の言うことを聞け」というような20世紀型の教育方針を信じている親も多いと思います。
今の時代、先生の言うことだけを聞いていても飛び抜けた人材になどなれるはずもないですし、私に言わせればはっきり言って時代遅れです。
もうひとつの日本が国家として抱える大きな問題は、「IT」です。
橋本内閣時の行政改革のせいで、複数の省庁内にIT業務が混在し、横断的な働きができる明確なIT担当省庁が置かれていないことが致命的だと思います。
また上述したとおり、IT担当省庁を置いたとしても、それを率いて全省庁に対して働きかけ、ゼロベースで国家の組織運営システムを設計し構築できる人材も見当たりません。
飛び抜けた人材の育成、特にIT分野における人材育成は、今の日本が国家として抱える最大の問題だと私は思います。
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※この記事は9月20日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週はデジタル庁のニュースを大前が解説しました。
大前は、DX化が進む今後の時代において、「ゼロから自力で考えられること」が極めて重要なスキルになると述べています。
問題解決には、受験勉強のような「答え」は存在しません。
ゼロベースで答えを見つけること、そしてその訓練を続けることが大切です。
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