大前研一「ニュースの視点」Blog

KON842「国内造船大手/後発医薬品大手/Zホールディングス/ソフトバンクグループ~日本の銀行はサボっている」

2020年8月17日 Zホールディングス ソフトバンクグループ 国内造船大手 後発医薬品大手

本文の内容
  • 国内造船大手 造船事業の資本提携で協議
  • 後発医薬品大手 武田テバファーマの後発薬事業を買収
  • Zホールディングス 金融事業・サービス名を「ペイペイ」に統一
  • ソフトバンクグループ 英アーム売却で米エヌビディアと交渉

造船業は、日本、中国、韓国で世界トップを争う構図


国内造船8位の三井E&Sホールディングスと4位のツネイシホールディングスが造船事業で資本提携する協議に入りました。

首位の今治造船も2位のジャパンマリンユナイテッド(JMU)へ資本参加する交渉を進めており、生き残りをかけた再編が加速しています。

かつては国内で20%のシェアを占めていた三菱重工がトップで、シェア10%の石川島播磨重工業がそれに次いでいました。

ところが、お高くとまっていたら、いつの間にか今治造船、JMU、そして常石造船にまで抜かれ、業界の情勢は一変しました。

三井E&Sとツネイシが一緒になれば、4位の名村造船所を上回ります。

また、今治造船とJMUが一緒になれば日本国内ではダントツです。

これはかなり大きな動きのように見えますが、世界の造船業界の勢力図で見ると、日本勢は全般的にそれほど強くありません。

世界のトップには韓国の現代重工業や大宇造船海洋が君臨しています。

それでも今治造船とJMUが合併すると、大宇造船海洋を抜いて世界2位の規模になります。

ここで言う規模とは「竣工量」のことで、すなわち受注する能力です。

コスト競争力はまた別の問題なので、受注できてもコスト競争力がなければ赤字になる可能性はあります。

現時点で、そこまで全て見通すことは難しいかもしれませんが、それでも世界の造船会社に比肩するためには、次々とこのような動きをやっていくしかないでしょう。

かつては日本の造船しか出来ないと言われていた液化天然ガス(LNG)の運搬も今では韓国や中国の造船でも可能になっていて、もはや日本に技術的な優位性はありません。

その意味でも、とにかく竣工量を稼ぐ時代になったと言えると思います。

世界的に見ると、造船業は日本、中国、韓国という東アジアに集約される形になりました。

かつては欧米も盛んに建造していましたが、今では主に軍用船や原子力潜水艦しか作らず、一般の造船からは手を引いています。

日本にとっては、これから中国と韓国と争う最終戦が始まっていくという段階です。

過去には日本の造船所が中国の造船所の買収をしていたこともありましたが、それもうまく機能することはありませんでした。

日本勢としては、竣工量を確保しつつコスト競争力を持つ、という本当の実力をつけていくしかないでしょう。




テバファーマの後発薬を活用できるなら、大きなチャンス


ジェネリック大手の日医工は先月30日、武田テバファーマの後発薬事業を買収すると発表しました。

年間40億錠の生産能力を持つ武田テバファーマの高山工場などを引き継ぐ新会社の全株式を取得するもので、規模の拡大で収益を確保する考えです。

テバファーマは、世界最大の後発薬の会社です。

武田薬品が手を組むと聞いた時には、「本当に武田薬品が後発薬を本格的にやるのだろうか?」と私は疑問を感じましたが、結局、後発薬日本一の日医工が買収するという話に落ち着いたというところでしょう。

もしテバファーマの持っているジェネリックを全て利用できるようになれば、これは相当インパクトが大きいと思います。

日医工としては、2位の沢井製薬に差をつけるチャンスにもなります。

ただし、もしテバファーマの持つジェネリックを全て利用できないなら、この買収にはさほど大きなインパクトは望めないと思います。




「ペイペイ」にブランド統一で、アリペイ化を目指す


ヤフーを傘下に持つZホールディングスは先月31日、銀行や証券など主要な金融サービスの名称を「ペイペイ」に統一すると発表しました。

3000万人超が利用するスマホ決済「ペイペイ」のブランドを全方位で活用し、多様なサービスが利用できるスーパーサービスを目指す考えです。

Yahoo JAPANカードはペイペイカード、ジャパンネット銀行はペイペイ銀行、というようにブランドを統一したスーパーサービスを作り上げるという戦略です。

この業界では、auペイなど様々なものが乱立し混乱していましたが、Zホールディングスとしては、この戦略によって中国のアリペイのような立場を狙うということでしょう。

こうした日本の金融業界の動向を見ていて残念に思うのは、未だに日本の銀行がサボっていて、まともに手をつけていないということです。

先日LINEポケットマネーが信用スコア融資の新規申込者数で、アコムを上回ったというニュースが報じられました。

私に言わせれば、このような信用スコア融資も、LINEがやる前に日本の銀行が手をつけておくべき事業だと思います。

私は三菱UFJ銀行(旧三和銀行)と数十年来の長い付き合いがありますが、彼らは私に対する信用スコアを把握できていません。

その証拠に、私がクレジットカードの申し込みをしたところ、完全に新規と同様の申込書が送付されてきて、全ての情報をあらためて書く羽目になりました。

本来なら、私の三菱UFJ銀行の普通預金口座の利用履歴を見れば、何十年にもわたって支払いなどの記録があるわけですから、信用スコアを把握できるはずです。

三菱UFJ銀行に限らず、他の日本の銀行にも何千万人もの信用スコアに相当するデータが眠っています。

それなのに日本の銀行がサボっていて、台帳の中にあるデータを全く活用しないが為に、LINEなどの企業が手を付ける状態になっているのだと私は思います。




ソフトバンクグループのアーム投資は、大きなマイナスにならずに済む


ソフトバンクグループが傘下の英半導体設計大手のアームの売却をめぐり、米エヌビディアと交渉入りしたことが明らかになりました。

交渉は初期段階と見られ、最終的にまとまるかは不透明ですが、ソフトバンクは、アーム株のIPOを通じた売却の可能性も探っており、同時並行で複数の選択肢を検討していると見られています。

エヌビディアは、ソフトバンクがアームを買収した金額よりも、高い買収額を提示していると言われています。

それなら今すぐに売却してしまうのではなく、IPOを通じた売却という方針もありだと思います。

現在エヌビディアの時価総額は高いので、応じてくれる可能性はあると思います。

ソフトバンクとしては、結局のところスプリントと同様に傘下で活用することができなかったわけですが、ソフトバンク・ビジョン・ファンドとは違い、買収した金額は取り戻せるという見込みですから、ひとまず安心できると思います。




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※この記事は8月9日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています




今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週はZホールディングスのニュースを大前が解説しました。

大前は、日本の金融業界の動向について、「日本の銀行はサボっていてデータを全く活用しない」と述べています。

新しくサービスを始めるときには、データの活用が重要になってきます。

顧客体験の質を上げ、さらに、どのようなコミュニケーションを行うのか。

データ活用力が問われています。


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