- 本文の内容
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- 米イラン関係 イラン・ソレイマニ司令官を殺害
- 北朝鮮情勢 核・ICBM実験再開を宣言
選挙のことしか頭にないトランプ大統領の愚行
米国防総省は2日、イスラム革命防衛隊の精鋭組織「コッズ部隊」のソレイマニ司令官を殺害したと発表しました。
イラクの首都バグダッドの国際空港を出たところで司令官の車列を米軍のドローン機が空爆したもので、これを受けてイスラム革命防衛隊は8日、報復としてイラクの米軍駐留基地を弾道ミサイルで攻撃しました。
今回の攻撃についてトランプ大統領は補佐官がいくつか提示した案の中で最も厳しいものを選び、議会にも相談せずにツイッターで攻撃命令を出したということです。
ツイッターの一言でこのような軍事行動が実行されるとは、とんでもない事態だと思います。
トランプ大統領にとって意外だったのは、今回の軍事行動に対して米国の世論がネガティブに反応したことです。
米国民は今さらイランとの直接交戦は望まないということでしょう。
トランプ大統領の頭の中にあるのは選挙のことだけですから、「世論がネガティブに反応するなら…」ということで、急に身を引く姿勢を示しはじめました。
一方のイラン側もそのような米国側の身を引く姿勢を受けて、ヒートアップせずに収束させようとしました。
それにより、この2~3日で急激にこの問題はクールダウンしていく様相を見せています。
今後イランがどのような反撃をするのかという懸念もありますが、現在のところ、米国もイランもお互いに自制する方向で動いています。
イランは中東において非常に大きな影響力を持っている国です。
石油の埋蔵量は世界トップクラスを誇り、国土は日本の約4倍。
人口は8,000万人ほどでシーア派のイスラム系の人たちが大半を占めています。
今回殺害されたソレイマニ氏はイスラム革命防衛隊の司令官です。
イスラム革命防衛隊は、正規のイラン軍とは別組織で、陸上10万人、海上2万人、さらに航空部隊、民兵部隊60万人を抱えています。
イラン軍が正規軍であるのに対し、イスラム革命防衛隊は、正規軍を牽制し、イランの革命を維持するための軍事組織という位置づけです。
そんなイスラム教シーア派のイランと中東で激しく対立しているのが、スンニ派の大国サウジアラビアです。
サダム・フセイン政権下で、イラクもスンニ派が体制の主流であったため、イランと激しく対立し戦争にまで発展しましたが、米国によってスンニ派トップのサダム・フセインが排斥され、イラクも人口的に多数派であるシーア派が台頭することになりました。
その他の国に目を向けると、シリアはイランと親密で、イエメンでは、同国政府とその後ろ盾であるサウジアラビアの両方と対立する武装組織が勢力を拡大し、レバノンはイスラエルと対立する、など、各国で複雑な関係性が築かれています。
今週のニューズウィーク誌では、このような中東情勢において「もしイランの指導層をひっくり返したら、どのようなことが起こるのか?」という特集記事が掲載されていましたが、その結論は「イスラム国(IS)が復活する」というものでした。
イスラム国(IS)はスンニ派の過激派組織であり、シーア派の撲滅を目指しています。
シーア派の盟主として君臨しているイランの体制が崩壊すれば、イスラム国(IS)が復活してくることは間違いない、と私も思います。
そうなってくると、米国は今まで中東において何のために10年以上も苦労してきたのか?という疑問が残りますし、ニューズウィーク誌がそのように指摘をするのも当然でしょう。
トランプ大統領は選挙のことしか頭にありませんから、そこまで考えが及ばずにやってしまったのでしょうが、何とも情けない話です。
強気の姿勢を見せていた金正恩委員長が受けた大きな衝撃
朝鮮中央通信が報じたところによると、金正恩委員長が核・大陸間弾道ミサイル(ICBM)実験の一時停止を撤回したことがわかりました。
金正恩委員長は党中央委員会総会で、「公約に我々が一方的に縛られている根拠がなくなった」と述べるとともに、「世界は遠からず朝鮮民主主義人民共和国が保有することになる新たな戦略兵器を目撃するだろう」と語ったとのことです。
金正恩委員長は、昨年末に4日連続で大会を開いて、何度も「正面突破」という単語を連呼し、威勢のよい強気の姿勢を示し続けました。
「今後は自分たちだけが制裁を受けるのを受け入れない」と。
ところが、イランのソレイマニ司令官が米国のドローン攻撃であっさりと殺害されてしまい、今はすでに雲隠れしている状況になっています。
韓国の新聞でも、金正恩委員長がよほど衝撃を受けたのだろうと報じられています。
今回のソレイマニ司令官の殺害を見ると、米国は各国の要人がどこにいるかをつぶさにチェックしていることが伺えます。
そして、(金正恩委員長を暗殺する)「斬首作戦」を実行する機会というのは、あまりにも身近だと言えるでしょう。
しかも、今回のように近い距離からドローンを飛ばしてターゲットを狙う場合には、かなりの精度で本人を確認することができるようです。
今回のドローン攻撃では、イラク側の政府の要人が一緒にいるときには攻撃をしないように命令がされていたようです。
きちんと、イラクの要人がいないことを確かめてから攻撃を実行したということです。
北朝鮮の体制の保証を主張してきた金正恩委員長に対して、米国のボルトン前大統領補佐官は、「斬首作戦もあり得る」と述べてきました。
その言葉の意味と重みを、金正恩委員長は今寒気とともに痛感していることでしょう。
米国は対立するイランと北朝鮮とに対して、両面作戦は避けたいという思惑があると言われてきました。
金正恩委員長の頭の中にも、そのような算段はあったかもしれません。
しかし、今回のようにドローンを飛ばして殺害するくらいであれば、負担も少ないため「両面作戦」を展開することも十分に可能でしょう。
米軍によるソレイマニ司令官の殺害を、金正恩委員長はそうした米国側の強いメッセージとして受け取ったのだと私は思います。
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※この記事は1月12日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週は、米国とイラン、米国と北朝鮮の関係について大前が解説しました。
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