- 本文の内容
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- 米ウィーカンパニー アダム・ニューマンCEOが辞任
- ソフトバンクグループ 孫正義が狙うLINE買収
- ベンチャー投資 「上場で成長」今は昔
- 米ウーバーテクノロジーズ サブスクリプションを本格開始
投資先の雲行きが怪しいソフトバンク・ビジョン・ファンドの打開策は?
米ウィーカンパニーの共同創業者、アダム・ニューマン氏は先月24日、最高経営責任者(CEO)を辞任すると発表しました。
当初、9月中の新規株式公開(IPO)を目指していましたが、赤字が続く事業や企業統治について、機関投資家から疑問の声が相次ぎ、IPOを延期。
米メディアは、筆頭株主であるソフトバンクグループが、ニューマン氏の辞任を求めていたと報じています。
赤字ではあっても将来性を期待され高い時価総額を設定されたウィーカンパニーには、筆頭株主でもあるソフトバンクも大いに期待していたはずです。
しかし、近年この類の企業が上場しても、その後の調子が良くない状況があります。
ウィーカンパニーも赤字のまま、競合に対する明確な差別化もできない状態で、企業価値もピーク時の1/3に下落し、さすがに不安を払拭できなくなったのだと思います。
安売りをやめ、黒字化の目処が立つまで上場を延期するように、ソフトバンク・ビジョン・ファンドが強制したと言われています。
そのソフトバンク・ビジョン・ファンドの投資先企業の一覧を見ると、有望と言われるユニコーン企業がたくさん並んでいます。
しかし、3兆円規模の投資を受けている半導体テクノロジーのアームについて、当時取締役を務めていた日本電産の永守氏が「自分なら3000億円でも買わない」と話していたこともあるなど、その投資価値については疑問視する声もありました。
そして、ユニコーン企業のチャンピオンとも言われる立場だったウィーカンパニーの問題が起こってしまいました。
そんな中、文春オンラインは4日、「ソフトバンクグループの窮地で孫正義が狙うLINE買収」と題する記事を掲載しました。
ウィーカンパニーの上場延期などを受けて、ビジョンファンドが投資する他のユニコーン企業にも疑念が持たれ始めています。
この危機を乗り切る奇策として、孫正義氏が狙っているのがLINEで、もし買収が実現すればアマゾンにも対抗できるとする関係者の見方を紹介しています。
Weibo(ウェイボー)とも親しいソフトバンクの孫正義社長なら、韓国系の企業であるLINEとも話をまとめられる可能性がある、ということが背景にあるのでしょう。
たしかに、その可能性はありますし、実際ソフトバンクがLINEを買収しSNSを手に入れると大きなプラスになると思います。
ソフトバンク・ビジョン・ファンドに多額の出資をしているみずほ銀行も背中を押していると言われています。
未公開時に高い時価総額を想定された企業が収益化しない現実
日経新聞は6日、『「上場で成長」今は昔』と題する記事を掲載しました。
世界の未公開企業がベンチャーキャピタルから調達した資金額は、2018年2580億ドルとなり、上場時の調達額2236億ドルを上回りました。
金余りの中、利回りに飢えた投資家が成長著しいベンチャー企業への投資に殺到していることが要因です。
こうした投資は過剰評価になりやすく、企業が生む富も特定の人間に集中しかねない問題もあり、資本主義を支えてきた株式市場の存在意義があらためて問われているとしています。
ソフトバンク・ビジョン・ファンドは10兆円規模の大きなファンドです。
他にも、ブラックストーン、ベインキャピタルなどベンチャー企業に多額の投資をするベンチャーキャピタルが多数あります。
これらのベンチャーキャピタルには、資金も情報も集まってくるため、Cラウンド、Dラウンドのベンチャー企業に多額の資金を投じます。
これが上場前のベンチャー企業に異常に高い企業価値が想定される要因です。
最終的な上場前の想定時価総額は、最後に投資した人の1株あたりの価格で決まるため、金余り状態のベンチャーキャピタルが高値で投資するとそのまま高い時価総額が設定されてしまうわけです。
このように機関投資家の「金余り現象」のために、実態以上に時価総額が上がり上場しますが、いざ上場すると今度は一般投資家が相手になります。
一般投資家から見れば、収益が出ていないなど価値を感じない場合が多く、一気に株価が下落するというのが典型的なパターンです。
日本でもNTTの上場時に言われたことですが、一般投資家が上場直後の株を買うと損をすると言われる所以です。
今は、世界的にこういう現象が多発しています。
上場後の時価総額の伸びを見ると、1990年上場のシスコシステムズ、1997年のアマゾン、2002年のネットフリックスまでは、上場前に比べて上場後の伸びが大きくなっています。
しかし、2004年アルファベットの上場以降は、未公開市場での企業価値の伸びが大きく、上場後は伸び悩むパターンになっています。
これは株式市場の存在意義を問われる由々しき問題だと思います。
現状としては、株式市場は、巨大なファンドが素人の一般投資家に売り逃げするために使われているに過ぎないと言われても仕方ありません。
上場前に大きく期待されながら苦戦しているユニコーン企業の代表例が、米ウーバーテクノロジーズです。
そんなウーバーテクノロジーズは先月26日、「サブスクリプション(継続課金)」型のサービスを本格的に始めると発表しました。
月24.99ドル(約2700円)を支払うと、ライドシェアを使うたびに割引が受けられたり、ウーバーイーツの配達手数料が無料になったりするとのことで、まずサンフランシスコなど米国内の10都市で始める見込みです。
この施策は、競合であるリフトもすでに実施していることです。
結局、現時点で言えば配車アプリで収益を上げることができず、ウーバーイーツ、そしてサブスクリプションモデルで現状を打開したいということでしょう。
サブスクリプションモデルで定額支払いをしてくれた人には、割引サービスの提供、ウーバーイーツの配達料の無料化などを考えているそうで、実現すれば一定の評価は得られると思います。
しかし、問題はトータルで黒字にできるかどうかでしょう。
黒字の目処が立たなければ、また新しい企業が収益の見通しもないまま終わっていくことになるかもしれません。
時価総額が数兆円を超えるともてはやされても、実際には収益化しないというお粗末な話の1つになる可能性もあるでしょう。
これは、GAFAが乗り越えてきた道でもあります。
苦戦が続くウィーカンパニー、ウーバーテクノロジーズなどが、この壁を乗り越えることが出来るのかどうか注目したいと思います。
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※この記事は10月6日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週はベンチャー投資について大前が解説しました。
大前は
「機関投資家の『金余り現象』によって、ベンチャー企業が過剰評価されやすくなっている」
と述べています。
ベンチャー企業の企業価値とは何か?
その価値を見極めるためには、どのような情報が必要なのか?
正しい価値を見極めるためには、日頃から情報収集に力をいれる必要があります。
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