大前研一「ニュースの視点」Blog

KON797「サウジアラビア情勢~ドローンが変える世界の軍事バランス」

2019年9月30日 サウジアラビア情勢

本文の内容
  • サウジアラビア情勢 サウジアラムコ施設をドローン攻撃

ドローン攻撃によって、世界の軍事バランスが大きく変わる


サウジアラビア東部で14日、国営石油会社サウジアラムコの石油施設2カ所が無人機の攻撃を受け、出火したことが明らかになりました。

イエメンの反政府武装組織ホーシー派が犯行声明を出しましたが、サウジアラビア国防省は18日、攻撃に使用されたとする無人機や巡航ミサイルの破片を公開。

ホーシー派の犯行可能性を否定するとともに、イランが関与したことの証拠だと主張しました。

今回使用されたドローンは、航続距離1200kmとも言われています。

しかも、価格はわずか150万円程度で製作可能というのですから、驚きです。

このドローンの活用は、世界の軍事バランスを大きく変える可能性があると私は思います。

それほどに今回のニュースは重大な事件です。

例えば、日本は北朝鮮のミサイル攻撃対策として、米国の陸上配備型イージス・システム(イージス・アショア)を、萩と秋田に設置する方針を検討しています。

しかし、今回のドローンを使われたら、イージス・アショアを無力化することが可能でしょう。

ドローンは低空で飛行するため、レーダーに引っかからず、さらにステルス化することもできます。

イージス・アショアでミサイルを検知することはできても、ドローンを検知して対抗することは難しいでしょう。

今回攻撃を受けたサウジアラムコの石油施設の様子を見ると、攻撃力も十分にあるとわかります。

しかもドローンは、最後の瞬間に目視で操作できるため攻撃の的中率が高くなります。

今回のサウジアラムコの石油施設への攻撃でも、ミサイルの的中率は80%ほどでしたが、ドローンからの攻撃は100%命中しています。

米国は日本に北朝鮮の驚異を煽って、イージス・アショアを売りつけようと試みていますが、それを根底からひっくり返す事態です。

価格も安く、若干知識があれば組み立ててプログラムできてしまうのですから、恐ろしい限りです。

現在、世界中で防衛策の基本となっているのはミサイル防衛システムです。

ドローンにはミサイルほどの圧倒的な破壊力は期待できませんが、それでも今回のように、軍事的に重要な拠点・施設をピンポイントで狙うには十分です。

今後は、世界中の国が軍事的に大きな変更を余儀なくされることになると思います。

高額なミサイルの開発は不要になり、ドローンを中心とした攻撃・防衛に切り替わっていく可能性が高いでしょう。




戦争も辞さない強気のイラン、話し合い決着を望む日和気味のトランプ大統領


今回のサウジアラビアの石油施設の破壊を受けても、世界的に原油価格はあまり上がっていません。

サウジアラビアだけでなく、ロシアや米国も多くの原油を産出できる時代だからでしょう。

実際、米国のトランプ大統領は備蓄している原油を出してきて、この機会に一儲けしようという動きを見せています。

今回のドローン攻撃について、ホーシー派はイエメン方面から飛行してきたと述べていますが、サウジアラビアはイラン側から飛来してきたと主張し、真っ向から否定しています。

シーア派の盟主・イラン、スンニ派の盟主・サウジアラビアとしての対立そのものです。

イラクはフセイン大統領の頃には、同大統領がスンニ派であったこともあり、イランと戦争をする立場でしたが、今では人口比率で多数派であるシーア派が名実ともにマジョリティになりイランに取り込まれている状態です。

その他、シリアやイエメンについて見ると、アサド元大統領はアラウィー派ですが、現在のシリアのマジョリティはスンニ派。

イエメンはサウジアラビアの侵攻に対して、イランのバックアップを得たホーシー派が対抗している状況です。

イランの遠隔操作にも関わらず、想像以上にホーシー派が善戦しているため、実はサウジアラビアは軍事的に弱いのではないか?と言われています。

そんな中東情勢において、今回の事件が発生しました。

イランは否定していますが、イランが裏で糸を引いていると思っている人が多いでしょう。

イランは、もし戦争になるならそれも辞さず、という強い姿勢を見せています。

意外にも、そんなイランの態度に及び腰になっているのが米国トランプ大統領です。

今のタイミングで開戦してしまったら、トランプ大統領の選挙期間中も戦争が続くことになるのは間違いありません。

それは避けたいので、何とか話し合いで決着するように促しています。

仮にイランに制裁を加えるとなっても、トランプ大統領にできることは「イランへの送金をできなくする」「イランへの輸出を制限する」などの間接的なことだけです。

そのため、いつもあれだけ強気なトランプ大統領が、珍しく日和った態度を示しています。




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※この記事は9月22日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています




今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週はサウジアラビア情勢について大前が解説しました。

的中率が高く、価格も安いドローンによる攻撃は世界の軍事バランスを大きく変える可能性があります。

ビジネスの場面でも、技術の発展によって世の中の流れががらっと変わってしまうことがあります。

タイミングを見極めたうえで有効な一手を素早く打てるかどうかが、そのビジネスの今後を左右します。


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