大前研一「ニュースの視点」Blog

KON773「楽天/独ダイムラー/米ボーイング~コンピューターと人間の衝突」

2019年4月12日 楽天 独ダイムラー 米ボーイング

本文の内容
  • 楽天 有価証券評価益 約1100億円計上へ
  • 独ダイムラー 中国・浙江吉利に小型車ブランド売却へ
  • 米ボーイング 「737MAX8」墜落事故で装置の誤作動認め

リフトで利益が上がったが、投資案件トータルで見ると?


楽天は1日、米リフトの上場に伴い、2019年1~3月期に約1100億円の有価証券評価益を計上する見通しと発表しました。

一方、リフトの株価は上場2日目にして公開価格の72ドルを割り込み、年内の上場を目論むスタートアップにとっての試金石となっています。

リフトの時価総額は、上場前の推計企業価値115億ドル予想に対して、251億ドルまで跳ね上がりました。

今後のリフトの価値がどの程度になるのかは、まだわかりかねます。

楽天はリフトの株式を11.5%保有しているので、時価総額が約2兆円なら有価証券評価益は2,000億円ほどに相当します。

楽天のリフトへの投資額は約300億円です。

この投資案件だけで見れば、大きく利益が出たと言えますが、その他の投資案件で大きな損失が出ています。

代表的なものを挙げれば、バイ・ドット・コムに2.5億ドル、プライスミニスターに2億ユーロ(のれん代172億円減損)、コボに3.15ドル(のれん代78億円減損)の資金を投じていますが、全く回収はできていません。

さらに大きいのは、ベラルーシのバイバー・メディアに投じた9億ドルです。

現時点で214億の減損処理が行われています。

これらを合わせて考えると、この手の投資案件の結果としては決して悪い結果ではありませんが、楽天の投資全体で考えると、決して手放しで喜べないのではないでしょうか。




スマートはベンツブランドの中で、お荷物だった


独ダイムラーが小型車ブランド「スマート」の株式の50%を中国民営自動車大手の浙江吉利控股集団に売却する交渉を進めていることが、先月26日明らかになりました。

ダイムラーは、ベンツ、マイバッハ、AMG、ふそう、フレイトライナーなどの様々なブランドを保有しています。

スマートは40~50年前のスバルを彷彿とさせる小さい車です。

私は欧州に旅行した際に、何度か運転したことがあります。

販売台数は、SUV、ベンツCクラス、ベンツEクラス、ベンツA/Bクラスに次いでいます。

それでも、約10万台/年間に過ぎず、ベンツらしくないブランドのため、ダイムラーにとっては現実的にお荷物ブランドになっていたのは間違いありません。

ですから、浙江吉利控股集団への売却は良い選択だったと私は思います。

そして、おそらく浙江吉利控股集団であれば、スマートというブランドをもっと良い形で活かせるだろうとも感じます。




ボーイング社の企業姿勢そのものに不信感を覚える


米ボーイングのミューレンバーグCEOは4日、新型旅客機「737MAX8」が昨年12月と今年3月に墜落した事故について、失速を防ぐため自動で機首を下げる装置がいずれも不正確な情報が元で起動したのは明らかと述べ、誤作動が起きたことを認めました。

一方、「私達にはリスクを排除する責任があり、その方法は分かっている」と述べ誤作動の再発防止に自信を示しました。

この事故の原因は、1994年に発生した名古屋空港のエアバス(中華航空140便)墜落事故と酷似しています。

事故の根本的な原因は、コンピューターによる自動制御と人間による判断の衝突です。

今回の事故は、コンピューターセンサーによって機首を下げようとする自動制御の動きと、パイロットの判断が対立したために起きています。

この問題は飛行機事故に限らず、原子力発電所の事故でも発生しています。

米国のスリーマイル島原発事故では、自動制御に対してオペレーターがパニックを起こして手動で動作させたために、大きな事故に発展しました。

今後、車の自動運転が一般化していく際にも、同じ問題に直面するはずです。

明らかにコンピューターが間違っているときには、人間が正しい判断でオーバーライドする必要があります。

その意味でも、スリーマイル島原発事故のように、人間がパニックにならないことも大切です。

今回の事故で言えば、訓練を受けたパイロットでしたから、その判断を尊重して自動運転をオーバーライドできるように設計しておくべきだったと私は思います。

初歩的な安全設計が欠如していたと私は思います。

また、こうした事実をボーイング社が理解していないと思われる点に、私は大いに不安を覚えます。

以前JALとANAが購入したボーイング機のバッテリーから出火した事故がありましたが、本当に原因を解明できたのでしょうか。

企業としての姿勢に誠実さを感じられません。

また、アメリカ合衆国連邦航空局 (FAA)は「737MAX8の性能に問題を確認できない」としていましたが、一体どういうことなのか?と思います。

もはやアメリカ合衆国連邦航空局 (FAA)の信頼は、地に落ちたと言わざるを得ません。



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※この記事は4月7日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています




今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は、ボーイングのニュースについて大前が解説しました。

大前が記事中で述べているように、「コンピューターによる自動制御と人間による判断の衝突」は今後も起こりうる問題です。

今後AI化が進む中で、私たちはいかに機械と付き合っていくのか。

コンピューターが判断を間違えてしまう時も、本質的課題に対応することになるのは私たちです。

今後どんなに技術が進歩するとしても、本質的課題を発見し解決する力は身につけておく必要があります。


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