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- ライドシェア大手 ウーバージャパンと第一交通産業 タクシー配車で提携
- 自動運転 グーグル系独走
ライドシェアでは、自動車メーカーのブランドが通用しない
タクシー大手の第一交通産業とウーバー・ジャパンは4日、タクシーの配車サービスで提携したと発表しました。
国内の配車アプリを巡っては、日本交通系のジャパンタクシーが先行していますが、ウーバーは第一交通との提携でサービスの提供地域を拡大し、日本での影響力を高める考えです。
第一交通は北九州に本社を置く企業です。
私はよく九州に出掛けますが、第一交通のタクシーを指名することも多いです。
というのは、QRコードやSuicaの決済に対応していて利便性が高いからです。(地域によっては利用不可)
ウーバーは日本進出で苦戦しています。
日本の法律ではウーバーの運転手になるには、第2種免許が必要です。
ゆえに第1種・第2種免許を持たないと、日本では白タク扱いを受けますが、世界的に見れば、「空いている人」が運転してくれるというだけで特に大きな問題とならない国もあります。
こうした規制があるために広がらない、日本におけるライドシェアの問題も、第一交通のような企業が介在すると、少しは前進する可能性があるので、期待したいところです。
ユニコーン企業の時価総額ランキングを見ても、ライドシェア企業の躍進が目立ちます。
滴滴出行が3位、楽天が投資している米リフトも上位に食い込んでいます。
また、ライドシェアと自動車メーカーの時価総額を見ても、ライドシェア市場の将来性を感じます。
現在の時価総額ではトヨタが断トツですが、米自動車メーカービッグ3(GM、フォード、クライスラー)の時価総額合計と、ウーバーとリフト2社の時価総額に類する推計企業価値が接近してきています。
そして、ライドシェア市場が大きく成長していこうとしている傾向は、自動車メーカーが多い日本にとっては、脅威以外の何者でもありません。
オーストラリアのライドシェアサービスでは、ほとんど日本製の自動車を使っていないように見受けられます。
値段が半額で性能にそれほど大きな差がないため、韓国製や中国製の自動車のほうが選ばれているのでしょう。
実際、お客さんもライドシェアを使うときに自動車のブランドを気にする人は少ないでしょう。
私がよく見かけるオーストラリアで走っているウーバー車の多くは、韓国のヒュンダイ製です。
これからのMaaS (モビリティ・アズ・ア・サービス)の時代、日本車は相当苦労することになると思います。
今後、車を作るメーカーはトラブルを抱える立場として、一層厳しい状況を迎えることになるでしょう。
自動運転では、走って実績を作った人が勝つ
日経新聞は8日、「自動運転 グーグル系独走」と題する記事を掲載しました。
米カリフォルニア州で公道試験を行う各社の報告を集計したところ、昨年1年間の走行距離は、ウェイモが地球50周分に相当する約202万キロメートルでトップでした。
実用化を控えた競争が激しさを増しているとのことです。
自動運転の世界では、「走って実績を作った人が勝つ」ことになります。
たくさん走行していれば、もちろん事故は起こります。
しかし、そのたびにその事故から学び、AIは賢くなっていきます。
その点で、グーグルのウェイモは、グーグルストリートビューを撮影するために、世界中を「自動運転」で走行していて、その実績は圧倒的です。
地球何周目かに相当する距離を走っているときに事故を起こしていますが、それは目の前の車が急にUターンをしたといった「例外」的な状況に対応できなかった事故でした。
この事故から、またウェイモのAIは一段賢くなったはずです。
このような例外的な事例のデータがたまらないと、自動運転は安全にはなりません。
だから、頭で考えるだけでなく、とにかく走りまくった人が勝ちます。
昨年1年間のグーグルのウェイモの走行距離は200万キロで断トツです。
その他自動運転の走行距離の上位を見ると、上位7位までは米国企業が占めていて、中国企業が続いているという状況です。
すでに、相当遅れている日本ですが、いまだに自動運転の危険性ばかりが強調され、自動運転で走らせる場所すらありません。
ところが、中国などは国が奨励して積極的に自動運転で走らせようとしています。
深センではバスの自動運転の実験が行われているなど、省や市町村単位で許可しているところもあります。
日本は車を製造する技術は世界一かも知れませんが、自動運転のトラックレコードにはトヨタや日産でさえも上位に食い込めていません。
いくらトヨタや日産の優秀な人が、研究室で頭をひねって自動運転のシステムを作ったとしても、間違いなく事故はおきるでしょう。
飛行機などの過去を振り返って見ても、事故がないものは安全にはなりません。
だからこそ、実績が重要です。
今からグーグルのウェイモに追いつくのは、至難の業でしょう。
ウェイモが自動運転技術を盗まれたとしてウーバーと裁判になり、大きな話題になりました。
ある意味、実績に基づいたデータと技術の貴重さを物語っていると言えるでしょう。
自動運転において出来上がった新しい序列を見ると、上位にいるのは自動車メーカーではなかったという状況になっています。
米GMは善戦していますが、それでもウェイモの3分の1の実績に過ぎません。
日本勢は絶望的です。
自動運転は、「石橋を叩いて渡っていて」は絶対にうまくいきません。
まず、この事実を認識してほしいと思います。
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※この記事は3月10日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週は、自動運転の実用化に向けた各社・各国の動きについて大前が解説しました。
記事の中で大前は、自動運転は走って実績を作った人が勝つ、と述べています。
自動運転における走行実績のように、「その業界で勝ち残るために必要なカギ」のことを「KFS(Key Factor for Success)」とよびます。
そして現状、テクノロジーが変化する中で、ビジネスのKFSは時々刻々と変化していきます。
自動運転において出来上がった序列のトップに自動車メーカーがいないところにも、KFSの変化がよく表れています。
このような状況下でKFSを強化するためには、自社の能力を高めるだけでなく、他社との提携も含めて自社がとるべき戦略の選択肢を洗い出し、動いていく必要があります。
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