大前研一「ニュースの視点」Blog

KON760「米中関係/中国ファーウェイ問題/中国サイバースパイ/中国外資規制~米中新冷戦の幕開けが日本に及ぼす影響は?」

2019年1月11日 中国サイバースパイ 中国ファーウェイ問題 中国外資規制 米中関係

本文の内容
  • 米中関係 新冷戦に備えはあるか
  • 中国ファーウェイ問題 中国政府がカナダ人13人拘束
  • 中国サイバースパイ 「APT10」、暗躍の背景は
  • 中国外資規制 外商投資法案の審議開始

米中新冷戦の幕開けが日本に及ぼす影響は?


日経新聞は先月24日、「新冷戦に備えはあるか」と題する記事を掲載しました。これは米国が5Gインフラの整備から中国のファーウェイを排除するなど米国と中国が新たな冷戦に突入したと紹介。こうした中、日本政府にとって重要なのは、日本企業が誤って米国の規制を受けないよう情報提供することや日米防衛産業の秘密保持を徹底することなどとする専門家の見方を紹介しています。

この新冷戦の幕開けは、ペンス副大統領がハドソン研究所で行ったスピーチでした。このスピーチは米中冷戦の宣戦布告と言っても過言ではない内容で、米国で最も中国嫌い・台湾好きなピーター・ナバロ大統領補佐官の戦略を下敷きにしたものでした。

ペンス副大統領のスピーチは、かつて英国チャーチル元首相が、「鉄のカーテン」と称してソ連を批判して押し込んだのと同じような影響があるとも言われています。

今後日本企業としては、不用意に中国企業と協業するだけでも要注意です。日本企業経由で何かしらの米国の情報などが盗まれて中国側に渡った、ということがあれば日本企業が米国から制裁を受ける立場になるからです。

かつての「東芝機械ココム違反事件」では、日本から輸出された工作機械の取引が対共産圏輸出統制委員会(ココム)の協定に違反しているとして大問題に発展しました。同様のことが今後は、「日米中」の間で起こる可能性があるということです。

世間を騒がせているファーウェイ問題は顕在化したごく一部に過ぎず、他にも潜在的に問題に発展する要素はたくさんあります。日本としては常に注意する必要があると思います。

そのファーウェイ問題ではカナダが非常に困った立場に追い込まれています。

カナダ政府は3日、中国ファーウェイの孟晩舟副会長を米国の要請に基づいて逮捕した昨年12月以降、13人のカナダ人が中国当局に拘束されたと明らかにしました。このうち少なくとも8人は解放されたとのことですが、これに対して中国外務省は4日の会見で、「提供できる情報はない」として明言を避けています。

こうした報復措置は中国の常套手段です。日本バッシングが旺盛だった頃は、日本企業の従業員が工事をしていただけで、不審な測量をしているとして逮捕されたこともあります。今現在の中国の報復対象はカナダと米国ですが、今後はどこまで発展するのかはわかりません。

カナダとしては米国に依頼されたので逮捕したものの、ここまで大きな問題になるなら手を引けば良かったと思っているでしょう。とは言え、米国に逆らうのも問題ですし、中国も怖いし非常に困っていると思います。

まさに、今は米中の冷戦の入り口であり、ここから始まっていくことになるでしょう。





中国の監視の目は世界各国よりも、国内に向いている


日経新聞は先月28日、「中国サイバースパイ集団「APT10」、暗躍の背景は」と題する記事を掲載しています。これは米国司法省が先月20日起訴した中国人2人を「APT10」のメンバーと断定し、サイバー攻撃に関与したとして訴追したと紹介。この集団の活動は、遅くとも2009年から確認されており、各国の機密情報や先端技術を狙い、これまで日本を含む12カ国が被害を受けたとのことです。

中国人2名が指名手配となり、FBIによって顔と名前、簡単なプロフィールなどが公表されています。これに対して、現在のところ中国側は無視しています。

実際のところ、中国政府とこのサイバースパイ集団の関わりは不明です。中国政府がお尻を叩いて支援していたのか、あるいはその情報を中国政府が活用していたのか、判明していません。

ただし、1つ確実なのは中国政府の監視の目は「外側」よりも「内側」に向いているということでしょう。中国政府・共産党が最も恐れているのは、国内の暴動や扇動です。共産党政府が崩壊するとしたら、国民が立ち上がったときです。ゆえに中国政府は世界よりも、国内の監視に意識を向けています。実際に予算上も、外側を監視する予算よりも内部を締め付ける公安予算のほうが大きいと言われています。

日本も被害をうけたものの、その対応は呑気に過ぎます。防衛予算の中で、サイバー防衛隊を150人から220人へ拡充するとのことですが、少なすぎると思います。北朝鮮でさえ、同様の部隊に3000人規模の人数を割り当てています。電力システム、政府系システム、我々国民のクレジット情報のシステムなど、国として守るべき重要なシステムがたくさんあります。防衛省はもっと予算を要求して、しっかり整備してほしいところです。




米トランプ大統領の圧力の成果!?


中国の全国人民代表大会常務委員会は先月23日、外資投資を保護する外商投資法案の審議を開始しました。これは外資の技術を行政手段で強制的に移転することを禁じることなどを盛り込んだもので、2019年3月1日までの対中協議で米国が技術移転強制の改善を強く求めていることを受けたものと見られています。

「今さら何を言ってるんだ!?」というのが率直な感想です。自動車メーカーなどが中国に進出するときには中国企業との合弁じゃなければ認めないなど、今までの方針は何だったのでしょうか。

中国がWTOに加盟したときから、この方針を貫いていれば良かったですが、今になって言われても遅すぎます。なぜ中国が今になって方針を転換したのかと思うと、この点においてはトランプ大統領の圧力が効果的だったのかも知れません。





---
※この記事は1月6日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています





今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は、米中関係の話題を中心にお届けいたしました。

米国と中国が新たな冷戦に突入しようとしています。

この話題に対して大前は、ファーウェイ問題は
顕在化したごく一部に過ぎず、他にも潜在的に問題に
発展する要素はたくさんあるため、日本としては
常に注意する必要があると言及しています。

大前の指摘のように、日本や日本企業もかじ取りを誤れば
かつての「東芝機械ココム違反事件」のように
自らの首を絞める事態に直面しかねません。

このような環境の中、重要なことは、
世界中で起きていることや、起こりそうなことに注意を払い、
環境変化を迅速に認識し、変化に適応することです。

情報感度を常に高く持ち、
環境の変化や事業活動に影響を与える要因を探ることで、
将来の環境に基づいて戦略を立案することができます。



▼ 親子で学ぶプログラミングスクール[p.school]よりお知らせ
人工知能(AI)を導入するための実践型ワークショップを開催!
【参加費無料】自社ビジネスへ取り入れるためのポイントをお伝えします
http://bit.ly/2QvZHeq

問題解決力トレーニングプログラム

問題解決力トレーニングプログラム

大前研一 ニュースの視点 Blogトップへ

  • メルマガ

    ニュースの視点メルマガ登録

最近の投稿記事

ニュースの視点メルマガ登録

ブログの更新情報

バックナンバー

  • facebook
  • twitter

各種ソーシャルメディアで様々な情報をお届けしております。

大前研一 ニュースの視点