大前研一「ニュースの視点」Blog

KON752「米中間選挙/米トランプ政権~大統領にふさわしくないトランプ氏の人間性。次期大統領候補は誰か?」

2018年11月16日 米トランプ政権 米中間選挙

本文の内容
  • 米中間選挙 下院で民主党が過半数
  • 米トランプ政権 CNNアコスタ記者を出入り禁止

中間選挙の結果、トランプ大統領を追及できる体制が整った


2年間のトランプ政治の是非を問う米国中間選挙の投開票が6日行われ、下院は民主党が8年ぶりに過半数を奪還しました。上院は共和党が多数派を維持したものの、トランプ大統領は今後ねじれ議会への対応を余儀なくされることになります。

今回の中間選挙は「大きな変化」が起きた結果だと私は認識しています。上院は(未定の3議席はあるものの)僅差で共和党の勝利、下院は民主党が大きく議席を奪還しました。特に下院で女性議員が初めて100人を超えたというのは画期的なことだと思います。

投票率48%というのは米国にとっては史上最高の数字で、新しい考え方の人や若者たちが参加した結果でしょう。米国の選挙は登録制なので、若者にとっては面倒で投票する人が少なかったのですが、民主党が積極的に若者を取り入れていきました。こうした人達の6~7割は民主党に投票したのではないかと思います。

新しい考え方の人、若者、女性が民主党で、白人男性が共和党(トランプ大統領)という構図がはっきりと見えて、この方向性は永続する傾向になりそうだと感じます。

トランプ大統領にとってダメージが大きいのは、下院の委員会の主導権を民主党に握られたことです。各委員会はトランプ大統領の「いかさま」を調査する権利を保有しています。これにより、トンラプ政権はねじれ構造で機能しづらいというレベルではなく、全く機能しないレベルに陥ると私は見ています。

トランプ大統領という人物には、「黒い」部分がたくさんあります。遺産相続時の400億円脱税疑惑、ロシア疑惑、サウジアラビアとの関係性など、怪しい部分を挙げていけば枚挙にいとまがありません。

これまでは、これらに対する追及があっても脅しで乗り越えてきたわけですが、下院の委員会から1つずつ調査されることになると逃げ切れない可能性があります。ですので、今トランプ大統領の心境は穏やかではないでしょう。

第1次大戦終戦100年式典に参加するためにフランスに行ったものの、平和会議には参加せずに物議をかもしていました。仏マクロン大統領とのミーテイングもメチャクチャなまま終わったようで、トランプ大統領の心が乱れている様子がよくわかります。

州知事選の結果などまだ議席数が変動しますが、重要なのは、明確にトランプ大統領に対して「追及」できる体制が整ったということでしょう。





大統領にふさわしくないプ氏の人間性。次期大統領候補は誰か?


サンダース米大統領報道官は7日、CNNテレビのジム・アコスタ記者のホワイトハウス入館のための記者証を「当面、使用停止にした」と発表しました。トランプ大統領の記者会見で、メキシコから北上中の不法移民集団を「侵略者」扱いしたかの質問をめぐり言い争いに発展。取材中の態度や行動を理由にホワイトハウスが記者を「出入り禁止」処分にするのは極めて異例とのことです。

記者会見を受けている最中に、記者と口論し、あまつさえ「CNNのマネジメントに問題がある」などと批判するなど、これまでの世界中の大統領を見渡してもこんな人物はいません。私に言わせれば、独裁者でもこれほどレベルが低いことをする人物はいないと感じるほどです。もはや、ある意味では「お笑い」の次元です。

そもそも記者会見というのは、記者に説明するものではなく、記者の質問を受けて「国民」に説明するものです。トランプ大統領は、この大前提すら理解していないのでしょう。

こうなってくると、トランプ大統領の「次」を意識し始めてもおかしくありません。私が注目しているのは、民主党のベト・オルーク氏。今回の中間選挙において、テキサス州の上院議員選で、現職の共和党候補テッド・クルーズに惜しくも敗れた人物です。

今回の選挙では負けているのですが、2年後の大統領選挙では勝利するのではないかと噂になっています。オルーク氏は演説が上手く、今回の選挙では、約80億円の選挙資金を集めたことでも話題になりました。

次期大統領選挙の候補を考えたとき、共和党は今の状況であってもトランプ大統領で決まりでしょう。トランプ大統領に「借り」を作っている人が多く、誰も立候補できないと思います。一方の民主党は「候補がいない」と言う人もいますが、私は2年後のオルーク氏には期待できると思っています。

いささか気になるのが、すでにオルーク氏が話題になり始めていることです。米大統領選の予備選は2月に始まりますが、当初からの候補はひっくり返ることが多く、6月頃から話題になるほうが当選している人が多いと私は感じています。クリントン氏、オバマ氏などはそのような展開でした。

そう思うと、オルーク氏が今から候補として話題になるのはやや早く、変なところで足を引っ張られることなどがなければ、と懸念してしまいます。しばらくは「候補」として名前が挙がらないような状況のほうが良いのではないか、と思っています。



---
※この記事は11月11日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています




今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は、トランプ大統領の話題を中心にお届けいたしました。

トランプ政治の是非を問う米国中間選挙で、
下院は民主党が8年ぶりに過半数を奪還しました。

これにより、CNNアコスタ記者の出入り禁止など、
異常なリーダーの権化であるトランプ大統領を
追及できる体制が整ったこととなりました。

そのような中で大前は、
次期大統領候補として注目しているのは、
共和党の牙城であるテキサス州で惜しくも敗れた
民主党のベト・オルーク氏だと言及しています。

いくら権力やカリスマ性があったとしても、
リーダーの行動が機能するためには、
信頼されていることが前提となります。

リーダーの行動原則として、ビジョンを掲げ、共有し、
また、模範となり率先して行動していく必要があります。


▼リーダーシップ・アクションプログラム(LAP) 導入事例
【メンバーの主体性と、”人”の尊重が組織を変える】
https://bit.ly/2B4Nucw

問題解決力トレーニングプログラム

問題解決力トレーニングプログラム

大前研一 ニュースの視点 Blogトップへ

  • メルマガ

    ニュースの視点メルマガ登録

最近の投稿記事

ニュースの視点メルマガ登録

ブログの更新情報

バックナンバー

  • facebook
  • twitter

各種ソーシャルメディアで様々な情報をお届けしております。

大前研一 ニュースの視点