大前研一「ニュースの視点」Blog

KON751「川崎重工業/LIXILグループ/日立化成/ヤマダ電機~LIXILの舵取りは、歴戦のプロ経営者でも難しい状況」

2018年11月9日 LIXILグループ ヤマダ電機 川崎重工業 日立化成

本文の内容
  • 川崎重工業 今年度中に鉄道事業の再建策
  • LIXILグループ 瀬戸欣哉社長が2019年に退任へ
  • 日立化成 新たに28製品で検査不正
  • ヤマダ電機 純利益16億円で前年同期比90%減

鉄道車両事業は国内で集結しないと世界と戦えない


川崎重工業は先月30日、米国向け車両のコスト増などで大幅な損失を計上した鉄道事業について、2018年度中に再建策の方向性を決めると発表しました。海外の鉄道市場は成長の見込める分野ですが、国内勢は再編で巨大化するライバルとの激しい受注合戦に加え、現地事業者とのコミュニケーションなど相次ぐトラブルで苦戦しており、川崎重工業は今後他社との協業や撤退を含めて検討するとのことです。

川崎重工の鉄道車両事業は大いに競争力を持っていましたが、中国への輸出などで情報が流出し、ノウハウが真似されて、競争力を失いつつあります。

セグメント別の業績を見ると、モーターサイクルエンジン、航空宇宙、ガスタービン-機械、精密機械という上位4事業は調子が良いものの、それ以外の苦戦が目立ちます。鉄道車両は赤字で、プラント、船舶海洋も利益が少ない状況です。

今の状況からすれば、上位4事業以外をどのように整理するかを考えなくてはいけないでしょう。世界的に見ても、鉄道車両事業は巨大企業の競争領域になっているので、日本でもいくつかの企業が集結していかないと世界とは戦えないと思います。





LIXILの舵取りは、歴戦のプロ経営者でも難しい状況


LIXILグループは先月31日、瀬戸欣哉社長が2019年3月末で退任する人事を発表しました。後任には山梨広一社外取締役が就任するとともに、創業家の潮田洋一郎取締役会議長が1日付けで会長兼CEOに就任。藤森義明・前社長に続いて2代続けて「プロ経営者」に舵取りを託しましたが、ここからは名実ともに潮田体制に移行することになります。

結論から言えば、今のリクシルという企業を経営していくのは極めて難しく、社外取締役を2年ほどやっただけの山梨氏では歯が立たないだろう、と私は思います。

というのは、リクシルが保有する企業・ブランドの数が多岐にわたり過ぎていて、全てを把握して舵取りするのは不可能に近いからです。軽く挙げて見るだけでも、ウォーターテクノロジー事業で、INAX、GROHE、American Standard、COBRAがあり、ハウジングテクノロジー事業で、LIXIL、TOSTEMがあり、その他にもビルディングテクノロジー事業、流通・小売事業、住宅・サービス事業などで多数を抱えています。

山梨氏はマッキンゼー出身者で私もよく知る人物ですが、外部から来た人間がこの状況を把握していくのは無理だと思います。中にはドイツのGROHEなど古い企業もあり、それを御していくのは至難の業です。

厄介なのは、日本国内だけを見ても「発祥が異なる」人が多く、全体としてまとまっていないということです。社内で育った人でも、ある人はINAXのカルチャーで、ある人は東洋エクステリアのカルチャーなど、バラバラの状態になっていると思います。その上、さらに海外の企業を取り込んでいるのですから、かなり混乱しているはずです。

現状、この企業は経営管理不能になっていると思います。潮田氏はシンガポール在住ですが、最低でも日本に居てフルタイムで取り組むようでなければ絶対に上手くいかないでしょう。重要なのは、販売や製造の現場です。そこをきめ細かく見ていくことが必須です。ある雑誌はリクシルを称して「ヤマタノオロチ」と書いていましたが、まさに現状はその通りで、相当数の事業を整理しなければ、「プロ経営者」でも管理できないレベルだと思います。




日立化成の不正は全体の体質/ヤマダ電機のカタログ販売はすでに時代遅れ


化学材料大手の日立化成は2日、6月に発覚した鉛蓄電池や半導体材料の品質検査不正に続き、新たに自動車用バッテリーなど28製品で検査不正や内容改ざんがあったと発表しました。国内7つの事業所全てで不正が行われており、延べ約2400社の取引先に影響が及ぶと見られます。

日立製作所の関連会社として非常にみっともない話です。この実態を見ると、おそらく不正をすることが会社全体の体質になっているのでしょう。これはゼロベースで人材を教育し直さないと治らないと思います。日立製作所にとっては重要な関連会社の1つです。新入社員から全員再教育するべきでしょう。



ヤマダ電機が1日に発表した2018年4~9月期決算は純利益が16億円と前年同期より90%減少したことがわかりました。インターネット通販の普及によって大量仕入れ大量販売による安売り路線が行き詰まっているとのことです。

以前からヤマダ電機は、商品を置かずにカタログだけを見せて、実際の商品は取り寄せにするという販売方法を取っていました。その時から、これではインターネット通販に負けるのは必然だし、全くダメだと私は指摘していました。

実際、私もヤマダ電機に行って「この商品が欲しい」と言っても「現物がないので取り寄せになる」と言われた経験があります。そして、取り寄せに1週間かかりますと言われれば、「それなら、ネットで買ったほうが手っ取り早い」となるのは当たり前のことです。

ヤマダ電機は日本一の販売スペースを誇りますが、カタログ販売ではもう限界です。これだけインターネット通販が習慣化してくると、手も足も出ない状況でしょう。今まで中途半端にカタログ販売にしがみついていた実態が明らかになり、その問題点が形になって現れてしまったということだと思います。



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※この記事は11月4日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています





今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は、国内注目企業の話題を中心にお届けいたしました。

2代続けて「プロ経営者」に舵取りを託したLIXIL。

LIXILの新たな体制について大前は、
日本国内だけを見ても「発祥が異なる」人が多く、
その上、さらに海外の企業を取り込んでいるため、
相当数の事業を整理しなければ、「プロ経営者」
でも管理できないレベルだと言及しています。

異なるカルチャーを持つ企業同士の統合においては、
企業文化への対応は統合の成功を左右する
重要な要素の一つとなっています。

そのためには、大前も記事中で言及しているように、
販売や製造の現場をきめ細かく見ていくことが
重要となってきます。


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