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住宅ローン減税 所得税だけでなく住民税からも控除
自民党税制調査会 柳沢小委員長
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●住宅ローン減税に限定せず、「減価償却」まで広げて考える
自民党税制調査会の柳沢伯夫小委員長は2009年度の税制
改正で検討する項目について、住宅ローン減税では所得税
だけでなく住民税からも税金を差し引ける制度を導入する
考えを表明しました。
これが実現すると、納めている所得税より多く税金を控除
できるため、所得がそれほど多くない人でも過去最大の
住宅ローン減税の恩恵を受けやすくなります。
今回の減税政策は、景気刺激のために非常に有効だと思います。
景気を刺激するには、積極的に消費(投資)を行う人に対し
減税を適用するべきです。その人たちが支払った所得税から
還付する、そして住民税からの控除も認める、という
今回の提案には大いに賛成です。
敢えて言えば、対象を住宅ローンに限定するのではなく、
住宅の減価償却を認め、またローンの金利を経費扱いにできる
ようにするという点まで、私ならば提案したいところです。
すなわち、個人にも法人と同様にバランスシートという概念を
適用し減価償却を認めるという考え方を前提にするべきだ
と思います。
日本という国は、景気が悪いとなるとコストダウンという
発想になる人が多く、本当の意味で景気を刺激し、経済の
パイを大きくするという発想を持てる人があまり居ません。
今年の夏にもお伝えしましたが、世間を賑わせていた大阪府の
橋下知事にしても然りです。
大阪府の財政にメスを入れようという気概と行動力には
賛同しますが、それでもコストダウンという発想から
抜け切れていないという指摘をしました。
※「景気悪化:政策的な閉塞感が国民の消費心理に与える悪影響」
(8月22日配信号)を見る
→ http://www.ohmae.biz/koblog/viewpoint/1167.php
そしてこの時も、経済のパイを大きくするに当たり、景気を
刺激するための第一歩として、減税を考えるべきだと
述べたばかりでした。
私はこのような考え方を数十年に渡って幾度となく主張して
きたのですが、ようやく柳沢小委員長が手をつけてくれる
というのは嬉しい限りです。
●日本の政治家には単年度予算の発想しかない
今回の減税政策を打ち出せたのは、柳沢小委員長が大蔵省
出身の人であり、一般的な日本の政治家よりも実際の
経済活動に精通しているからだと私は思います。
というのは、私の知る限り、極めて恥ずかしいことですが
日本の政治家の中に「減価償却」という概念を正しく理解
している人はほとんどいないからです。
一般的に、日本の政治家は「予算」という概念しか持って
いません。より正確に言えば、「単年度予算」という考え方です。
だから、予算を確保してそれを使い切るにはどうするべきか、
という発想に基づいて物事を考える人がほとんどだと思います。
10年ほど前にITバブルがはじけた時、私は当時の故小渕
首相にIT不況への対策として「書斎減税」という提案を
したことがあります。
具体的には、パソコンやその情報機器関連を含むIT製品の
購入をする場合に、それらを減価償却資産として認める
ようにするというものでした。
そうすれば、IT業界への景気刺激になると同時に、一気に
日本のIT化にも拍車をかけることができると考えていました。
しかし、やはり故小渕首相には「減価償却」という概念が
ピンと来ない様子で、結局そのまま書斎減税なるものが
現実化することはありませんでした。
そして、この日本の政治家の現状は10年経った今も
変わりません。
例えば、購入してから20年~30年も利用する住宅などは、
購入当時から年々その資産価値は減少していきます。
そこに減価償却の概念を適用すれば、償却額に応じて課税所得
が下がり、結果的に税金が下がりますから建て替えなどの
景気刺激にもつながります。
さらに少子高齢化の社会による建て替え需要の拡大を見据えて、
減税政策も実施すれば、なお効果は高いでしょう。
基本的な減価償却の概念を理解していれば、このような景気
刺激施策が次々と頭に浮かんできます。しかし、日本の政治家
はそうならないのです。
日本の政治家は世界の政治家に比べて、経済について勉強不足
であり、経済における常識に欠ける部分は多々ありますが、
さすがに「減価償却」の概念くらいは理解しておいて
もらいたいものです。
一般的な社会人であれば、新人のレベルで理解している事項です。
日本の政治家のスキルについては依然として問題は残された
ままですが、今回は柳沢小委員長による減税施策には
心から拍手を送りたいと思います。