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中国・IT情報開示制度 日米欧の経済界共同で懸念表明へ
ソフト設計情報 知的財産権の保護対象
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●中国は、知的財産の基本すら分かっていない
IT(情報技術)製品のソフトの設計情報開示を求める新制度を、
中国が2009年から導入する計画を進めています。これを受け、
日米欧の経済界が共同で懸念を表明する検討に入りました。
ソフトの設計情報は、通常、知的財産権の保護対象となる
機密情報であるほか、外国企業にとって貿易の障壁に
なりかねないと再考を促すとのことです。
この制度は過去に聞いたことがないほど身勝手な
法律ではないかと思います。
「ITセキュリティー製品の強制認証」という名目のもとで、
中国政府主導で外国企業に対しIT製品を制御する
ソフトウェアの設計図の開示を要求するというものです。
対象となっているソフトウェアの範囲は「基本ソフト(OS)
一体型の製品」「ネットワーク監視システム」など13分野に
及ぶとのことです。
パソコンはもちろんのこと、デジタルテレビ、携帯電話
といったかなりの広範囲の家電製品がその影響を受ける
ことになると思います。
外国企業が中国政府に対して情報を開示しない場合には、
中国国内での販売を禁止するというのですから驚きです。
建前上は「中国政府に対して」開示するといっても、
例えばIC技術などの専門的な設計図を政府の役人が見ても
理解できるわけはありません。
必然的に中国のメーカーに持ち込まれ、外国企業が持つ
技術情報が中国企業に渡るということになるのは
目に見えています。
中国政府は「ITセキュリティー製品の強制認証」のためなどと
言っていますが、私に言わせれば、
中国側が「IP(Intellectual Property)=知的財産」というものを
基本的に理解していない、ということに過ぎません。
●いかに巨大な中国市場とはいえ、このままでは世界から無視される
同じようなケースとして、米マイクロソフトが反トラスト法
違反について欧州委員会と争っていたことを思い出される人も
いるかも知れません。
2004年に独占禁止法違反の判決を受けたマイクロソフトは、
2007年欧州委員会の是正指示に従うことに合意しました。
そして、「オープンソース・ソフトウェア開発者に互換性情報を
提供し、その利用を許可する」、「技術情報の提供料を、
1万ユーロに引き下げ、支払いを1回限りとする」といった
是正措置が実施されることになりました。
しかし、今回のケースでは対象となっている企業の状況も
マイクロソフトが置かれていたものとはかなり違いますし、
何より中国政府と欧州委員会では真の目的が
全く違うところにあると思います。
中国政府が提言している法律は、欧州委員会の是正措置とは
比べるべくもない「暴挙」と言っても過言ではない代物です。
中国がこのような態度に出るのは、自国のマーケットに
それだけの「自信」があるからだと思います。
業界団体の試算によると、日本企業の対象製品は現在の
中国国内での売上高で1兆円規模に上る可能性がある
とのことですが、欧州や米国にしても中国は無視できない
大きな市場になっていることは確かです。
しかし、例え中国といえども、自国マーケットへの自惚れが
過ぎると「致命的」な結果をもたらすことになってしまうと
私は思います。
例えば、中国産の食品や玩具製品などに対する不信感への
対処として、米国では中国製品の使用を止める「China-Free
(チャイナ・フリー)」という現象が起こりました。
中国がこのような身勝手な法律を押し通そうとするなら、
あらゆる業界で「China-Free(チャイナ・フリー)」現象が
発生するかも知れません。
さらには、中国市場での売上を失っても構わないから
中国への輸出も取りやめるという国も出てくるでしょう。
そのような事態は中国にとっても致命的です。
今年8月、中国が独占禁止法を施行したときにも、
中国政府に対する不信感が強まりました。
しかし、今回はそれ以上です。
世界の中でも無視できないほどに大きく成長した中国市場
だからこそ、中国は本当の意味での競争原理とは何か、
そして規制とは何かということをしっかりと考えてもらいたい
と思います。