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〔大前研一「ニュースの視点」〕KON215 収束までには5年! ~サブプライム金融危機~大前研一ニュースの視点~

2008年6月13日

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米金融 米銀行の破綻増加 08年で4件目
米ワコビアのトンプソンCEOが退任
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●米銀行破綻は、金融危機の第2段階の先駆け


 5月末にミネソタ州の小規模銀行である
 ファースト・インテグリティが破綻し、
 今年に入ってから米銀行の4件目の破綻となりました。


 そのような状況の中、米大手ワコビア銀行は、
 ケネディ・トンプソンCEOの退任人事を発表しました。


サブプライム関連で巨額の損失を計上した責任を問い、
 取締役会が退任を求めたものだということです。


 このワコビア銀行の破綻というのは、サブプライムローン問題
 を発端とする金融危機の第2段階に属するものです。


 私は、常々、日本のバブル崩壊も含め、金融危機は3つの段階を
 経て進んでいくということを説明していますが、
 まさにその通りの展開だと言えるでしょう。


 まず、金融危機の第1段階としては、流動性危機に陥った
 銀行や事業会社が倒産します。今回のサブプライム問題による
 金融危機で言えば、ベア・スターンズの倒産が
 この第1段階に相当します。


 日本のバブルで言えば、コール市場からの資金調達が
 できなくなり、キャッシュフローが悪化して自主廃業した
 山一證券がこの段階の代表的な例になるでしょう。


 今年に入って4件目という米国銀行の破綻は、ベア・スターンズ
 の破綻という第1段階を経て、第2段階へ移行しているという
 先行指標的な意味合いを持っていると私は感じました。


 金融危機の第2段階とは、各々の銀行や事業会社が不良債権を
 処理していく中で、少しずつマイナスが積み重なり、
 ボディブローのように財務内容が悪化し、倒産に追い込まれる
 というフェーズです。


 今回のワコビア銀行はトップ10に入っている比較的大きな銀行
 でしたが、世間では知られていないサブプライムローン債権を
 担保にした証券化商品等のレベル3に分類される
 金融資産のなかで不良債権があったと聞きます。


 内紛が勃発して、CEOが退陣するという結果を招いたわけですが、
 そのきっかけとなっているのは、不良債権処理の中で、
 徐々に財務が傷んでいたことです。


 その結果として、企業体力が弱くなってしまい、
 内紛からCEOの退陣へと繋がったと見るべきだと思います。


●サブプライムの勝者が語る・・・金融危機収束は5年


 このサブプライム問題に端を発する金融危機は、
 いつまで続くのか?
 この金融危機の収束の見込みはいつごろなのか?


 という点について、非常に興味深い、
 とある人物の記事を発見しました。


 それは、2008年6月2日号の日経ビジネスに掲載されていた、
 米大手運用会社ブラックロックCEOの
 ローレンス・フィンク会長へのインタビュー記事です。


 ローレンス・フィンク会長と言えば、
 サブプライムの勝者として一躍有名になりました。


 私も以前、サブプライム関連を組み込まずに
 絶妙な運用をした人がいたということで、
 紹介したことがあります。


 シティバンクやメリルリンチが1兆円を超える損失を
 計上したのに対し、ブラックロック社のサブプライム関連
 損失は軽微な額です。


 さらに、同社旗艦ファンドであるオブシディアンは
 不動産価格下落に乗じて大きな収益を得たという慧眼ぶりには
 一目置かざるを得ないでしょう。


 実際、ローレンス・フィンク会長には、色々な銀行や
 証券会社などからトップ就任を請われていると聞きますが、
 それも頷けます。


 そのローレンス・フィンク会長の見解としては、
 この金融危機は5年で収束するという見込みだということです。


 日本はバブル崩壊から15年もの歳月を必要としたが、
 それほど時間をかけるべきではないと指摘しています。


 確かに日本の15年に比べれば短いですが、私としては、
 5年も今の状態が続くのかと思うと、
 少し長すぎると思ってしまいます。


 サブプライムローン問題は、80年代後半から90年代前半
 にかけての米国S&L危機と基本的には同じ構造を持っています。


 S&L危機では、テキサス州を中心とした商業用不動産向けに
 過剰な融資を行なった米銀行が次々と破綻してきました。


 また、カリフォルニアでは、当時この世の春を謳歌していた
 日本の銀行が米銀行の買収をする一方で、やはり多くの米銀行が
 破綻に追い込まれる状況になっていました。


 当時に比べれば、今の状況などまだまだ破綻している銀行は
 少ないですし、それほどひどい状況だと思いません。


 ローレンス・フィンク会長も私と同様、こうした金融危機は
 段階的に何回かに分かれて訪れるものだと指摘しています。


 5年といわず、少しでも早く米国金融危機が回復してくれる
 ことを願ってやみません。


 また、ローレンス・フィンク会長は米FRBからの信任も厚い
 経営者です。ローレンス・フィンク会長のリーダーシップと
 その手腕にも、大いに期待したいところです。


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