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〔大前研一「ニュースの視点」〕KON204 解決の糸口は東京都大田区にある!?韓国の対日貿易赤字

2008年3月21日

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 韓国・対日赤字
 部品・素材 対日依存度20%に削減
 07年対日貿易赤字は過去最大の約298億ドル(約3兆円)
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●総貿易収支は黒字が伸びる一方で、対日貿易赤字は膨らむ


 10日、韓国政府は対日赤字の縮小策を柱とする
 経済分野の行動計画を策定しました。国内で取り扱う
 素材や部品の対日依存度を20%に引き下げる方針で、
 6月末までに包括的な対策をまとめます。


 李明博(イ・ミョンバク)大統領は慢性的な対日赤字について
 「訪日を契機に対策を準備しなければならない」と指摘し、
 新政権の重要課題に浮上していると見解を示しました。


 韓国の2007年の対日貿易赤字は298億8000万ドル(約3兆円)
 と過去最大になっています。


 韓国経済というのは、素材や基幹部品を日本から輸入し、
 韓国または中国で製造し米国や欧州に最終製品を輸出する、
 いわゆる「パス・スルー経済」で飛躍的に成長してきました。


 この長年にわたって定着した対日依存の経済構造に対し、
 一体どのような秘策があってこのような発言をしているのか、
 私は非常に興味深く感じています。


 2000年から2007年にかけての韓国の主な貿易相手国を見てみると、
 生産拠点の中国シフトの結果、輸出入ともに中国が
 飛躍的に伸びています。2000年には欧州、米国、日本に
 届かなかった中国への輸出は、今では820億ドルに達して、
 欧州、米国を押さえて韓国からの輸出1位になっています。


 一方、対日貿易を見てみると、
 輸出は205億ドルから264億ドルへと
 それほど大きく伸びていませんが、
 輸入は318億ドルから563億ドルへと大きく伸びています。


※「韓国の主な貿易相手国と貿易額」チャートを見る
→ 


 韓国の貿易収支総額と対日貿易収支の推移を見ると、
 経済危機で一時的に輸入が激減し黒字幅が拡大した98年を除き、
 それ以降は総じて貿易黒字で推移していますが、


 日本に対する貿易赤字は止まることなく大きく膨らんでおり、
 ここ数年の全体の貿易黒字は減少傾向にあることが分かります。


 2007年韓国の総貿易収支は146億ドルの黒字になっていますが、
 この中に日本に対する貿易赤字298億ドルが含まれています。


 李明博(イ・ミョンバク)大統領が、この日本に対する
 貿易赤字さえ解消すれば、大きく外貨を稼げると考えるのも、
 ある意味、当然といえるかも知れません。


※「韓国の総額及び対日貿易収支の推移」チャートを見る
→ 


●裾の産業を広く育て、根を張ることの必要性


 では、対日貿易赤字を減らしていく為に、どうすればいいか?


 それには先ず、
 なぜ韓国は日本から機械や部品を輸入するのか?
 という理由について考えなければなりません。


 その答えをひと言で言えば、韓国企業が工作機械や基幹部品
 など地道な研究の蓄積が必要なモノを作りたいと思っていない
 ことが最大の原因です。


 そんな面倒なモノを自分で作るよりも、
 日本から製造機械や部品を輸入して中国で生産し
 手っ取り早く儲ける方が良いと言うのが韓国の経営者、
 ひいては韓国産業界のメンタリティなのです。


 日本では、約5,000もの工場があると言われる
 東京都大田区をはじめ、東大阪市、浜松市、諏訪市など、
 根気強くモノづくりを支える中小企業がたくさんあります。


 モノ作りに熱意と根気を持って経営している
 数多くの中小企業が、産業を支える
 インフラストラクチャーとなっているのです。


 韓国が対日貿易赤字を解消するには、
 この日本と同じような体制を作り上げる必要があります。


 しかしそれは、これまで無かったものを整えるということ、
 しかもそのためには経営者及び財界の根本的な姿勢から
 変えなければならないということなのです。


 この問題はとても大統領一代で解決できる
 問題ではないと思います。


 いくつかの韓国企業は、表面的には、大きく成長して
 グローバル化を叫んでいますが、残念なことに
 韓国には産業の根が無い状態です。


 これまでの韓国政財界には、対日不均衡を嘆く人は居ても、
 中核となりうる産業を本気で育成しようという発想は
 全くなかったからです。


 韓国にとって、裾の産業を広く育てることは
 非常に重要な課題であると思います。この点に問題を見出し、
 反省し、もし新しい体制を作り出すことができたならば、


 李明博(イ・ミョンバク)大統領は、偉大な大統領として
 名を残すことになると思います。


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