大前研一「ニュースの視点」Blog

KON557「ソニー・パナソニック・トヨタ自動車・サントリーHD~新しい生態系の中でどう生き残るか?」

2015年2月27日 サントリー ソニー トヨタ自動車 パナソニック

本文の内容
  • ソニー エレクトロニクス全事業を順次分社
  • パナソニック AV機器事業の本拠地 三井不動産に売却
  • トヨタ自動車 新型プリウスを年内発売
  • サントリーHD 連結売上高2兆4552億円

分社化しても、スマートフォンという新しい生態系の中で生き残れない


ソニーは18日、本体で手掛けるエレクトロニクス事業の全事業を順次、分社する方針を明らかにしました。まず携帯音楽プレーヤー「ウォークマン」やブルーレイ・ディスク録画再生機などを扱うAV(音響・映像)事業を、10月1日を目処に分社すると発表しました。

競争環境は厳しさを増しており、意思決定を早めて環境変化に素早く対応し、利益重視の経営を徹底する考えです。

ソニーの問題点は、色々なことに手を出しすぎて、全てにおいてポイントを外してしまっていることだと私は思います。エレクトロニクス事業を分社化し、意思決定を早めるとのことですが、それがソニーの問題解決になるとは思えません。

ソニーはウォークマンがあったためにiPodに敗北し、さらにiPhoneへの流れの中で、ソニーが手がけていたものは、ほとんどスマートフォンに取り込まれてしまいました。

気づいてみたらiPhone6でかろうじてカメラのモジュールとしてソニーのものが使われているという程度です。ソニーは電子部品で生き残ろう、と言われても、何とも残念です。

電話、カメラ、音楽などあらゆる機能を取り込んでいるスマートフォンというのは、新しい生態系・新しい大陸であり、ここに対してどのような策を打つべきかを考えることが重要です。

バラバラの事業部になれば、確かに個々の意思決定は早いかも知れませんが、スマートフォンという新しい生態系・新しい大陸との整合性が取れていないと私は感じます。

* * * * *

パナソニックは大阪府門真市の本社にあるAV(音響・映像)機器事業の本拠地を売却することで三井不動産と基本合意したと発表しました。

AV拠点は社内で「本社南門真地区」と呼ばれ、1970年代からカラーテレビなどの主力製品を生み出してきましたが、同社はデジタル家電事業を縮小し、車載分野などへのシフトを進めており、好立地の不動産を有利な条件で売却できると判断したものです。

パナソニックの業績を見ると、自動車関連事業は非常に高い利益を出しています。また、住宅システム、白物家電でも堅実な利益を上げています。かつての中核事業であるAV機器事業は、黒字ですがそれほど大きな利益にはなっていません。

テレビ製造も撤退を決定したため、工場を含めた門真南を売却するということです。非常に大きな土地であり、良い値段で売却できるのならば問題ないかも知れません。

ららぽーとになれば、パナソニックの社員、その家族がお客さんにもなるでしょうし、成功する可能性も高いと思います。

それにしても、創業当時からの土地であり、松下幸之助氏が生きていれば何と言うだろうなどと思うと、私としてはちょっとした寂寥を覚えます。

 

ハイブリッド戦略を強化するのは、トヨタとして正しい方向性


トヨタ自動車はガソリン1リットルで40キロメートル超を走るハイブリッド車(HV)の新型「プリウス」を年内に発売する見通しです。

10年前と比べて燃費を3割超改善し、欧州など世界各地で自動車の環境規制が強化されるのに備える考えです。

世界各地で、例えば以下のような法律的な環境規制を明示しています。

・日本:2020年までに、1リットルあたり20.3キロ
・中国:2020年までに、1リットルあたり20キロ
・米国:2025年までに、1リットルあたり23.2キロ

世界中がこの方向性に向かっており、チャンピオンの立場にあるプリウスとしては、今年中に1リットルあたり40キロの車を発表するということです。

水素自動車なども話題になっていますが、現実的に考えると、ハイブリッドが中核を担うのは間違いありません。ガソリンに対して、ハイブリッドは数%のシェアを占めるまでになっていますが、その他のものは数値としてカウントできるレベルではありません。

ゆえに、トヨタとしてハイブリッドを追求していくのは間違いではないと私は思います。

 

一方で、国内首位になったサントリーが目指す方向性は正しいのか?


サントリーホールディングス(HD)が国内食品メーカーの首位に立ちました。16日発表した2014年12月期の連結売上高は13年12月期比20%増の2兆4552億円。欧州の清涼飲料事業や14年5月の米蒸留酒最大手、ビーム(現ビームサントリー)の買収などで海外売上高を7割伸ばしています。

これについて新浪社長は「2020年にはウイスキーで世界一を目指す」と力を込めて発表しました。売上でも営業利益でも、キリン、アサヒを圧倒している状況になりました。ただし、海外事業の展開にあたり、借金の額も大きくなっています。世界的に見ると、この業界にはディアジオなど、さらに規模が大きい競合が存在しています。

新浪社長は、サントリーの売上高が2兆円のときにバトンタッチを受けました。おそらく新浪社長に託されたのは、海外事業の倍増と売上高4兆円規模の達成ではないかと私は見ています。

そのためか、今回の記者会見でも「日本一」は単なる通過点に過ぎないという印象で、淡々とした記者会見でした。

新浪社長は「2020年までにウイスキーで世界一を目指す」と発表していましたが、この点について私はやや懐疑的です。世界的に見てもハードリカーの需要は減りつつありますし、日本のハイボールのブームもいつまで続くのか、わからない状況です。ハードリカーの健康への影響問題が湧き上がる可能性もあるかも知れません。

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※この記事は2月22日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています

 

今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


エレクトロニクス事業のほとんどがスマートフォンによってとりこまれてしまったソニー。抜本的な対策が必要とされる中、分社化戦略を取った同社ですが、果たしてそれは正しい選択なのでしょうか?

変化が激しいビジネス社会においては、取り巻く環境を把握し、自社の立場を理解することが求められます。

この変化を正しく読み取らない限り、向かうべき方向は見えてきません。そして本質的な問題解決も行うことはできません。

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