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〔大前研一「ニュースの視点」〕KON166 “年金問題”いつもの手口に騙されるな!

2007年6月15日

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 年金問題 問題点の調査へ第三者機関を設置
 5,000万件のデータ照合は、NTTデータへ
 市場化テスト 官の入札参加ゼロの実態
 05年以降、入札6件は全て民間企業
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●第三者機関もNTTデータも、政府の目くらましに過ぎない。


社会保険庁が管理する公的年金保険料を納めた記録
約5,000万件の持ち主が分からなくなっている問題で、


厚生労働省は歴代の社会保険庁長官に責任があるかを
調査する第三者機関を設ける方針を発表しました。


大学教授など外部の有識者に加わってもらい、記録管理体制の
どこに問題があったのかを調べるとのことです。


この対応への評価として、第三者機関に委託するなど
しっかりと対応していると考えるのは間違いだと思います。


なぜなら、今後、実効性の無い改善策や、データ移行の遅れ
などが発生した場合には、その責任をそれこそ「第三者」に
押し付け、国民の怒りの矛先を逸らそうというのが
本当の狙いだと私は思うからです。


本質的には年金問題の対策のためではなく、単なる選挙対策
としての対応に過ぎないのではないかと私は見ています。


対象者の分からない約5,000万件の年金記録を照合する
新しいプログラムの開発をNTTデータと日立製作所に
委託することを決めたとのことですが、


これも呆れるほど同じ手法で私たちの目を欺こうとして
いるのが分かります。


実際問題として、5,000万件の「手書きデータ」を1年以内に
全て照合させるのは至難の業だと思います。


国民総背番号制やコンピュータ化が実現されていれば
話は別ですが、そうでない現状からすると、
国民全員で取り組まない限り、不可能な数字でしょう。


しかし、万一、そうなった場合であっても、
責任は「NTTデータ」へ転嫁されていて、国民の怒りは
NTTデータへ向かうようになっているというわけです。



●政府による「目くらまし」は、あらゆる政策に見て取れる。


「見せかけ」だけの対応で、国民の目を欺くようなやり方は、
政府の得意な典型パターンなのです。


例えば、年金問題だけではなく、次のような対応にも
現れています。


公共サービスの担い手を官民が競う市場化テストで、
官が入札に参加しない状態が続いていて、2005年度の
開始以降、入札を実施した6件はいずれも民間企業だけの
参加にとどまっているとのこと。


官が「民間に任せてもよい」と判断した小粒な事業だけが
テストの対象になっているためだと言いますが、


私に言わせれば、そもそも本当の意味で「官」がやるべき
業務というのは殆どありません。


「民にできることは民に譲る」という当初の方針に従えば、
かなりの部分の業務を民に移管することになったはずですが、
実際に市場化テストの対象となっている業務を見てみると、
呆れてしまいます。


※「市場化テストの主な対象」チャートを見る
「市場化テストの主な対象」チャート


例えば、「道路や下水道の管理」や「国立公園の管理」と
いうものがあります。


これらは、道路や下水道、国立公園の企画や設計といった
業務ではなく、おそらく「掃除」業務のことだと思います。


要するに、掃除業務という末端部分だけを民に移管したことを
「見せかけ」として発表し、企画や設計等の業務そのものは
天下り先として官に残してあるという構図なのです。


政府の発表の表面的な部分だけを見ていると、
いつの間にか政府・役人の仕掛けに騙されてしまいます。


大切なのは、手法に目を向けるのではなく、その目的を
きちんと見極めることでしょう。


目的に目を向ければ、政府の真の意図が読めます。


日本の政府・役人の体質には呆れるばかりですが、私たちは
そのまやかしを見抜くスキルを身につけることが
重要だと私は思います。


                             以上


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