- 本文の内容
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- 地方創生 地方転職を支援
- 農協改革 農協法改正まとめ
地方創生という言葉だけで、地方に仕事を作ろうとしても効果は期待できない
政府は大都市圏に勤める大企業社員の、地方への転職を後押しするとのことです。2015年度から都道府県ごとに専用窓口を設け、経営幹部を求める中堅・中小企業に大企業の人材を紹介する方針を発表しました。
これもマイクロマネジメントの1つで、決して良い施策とは言えません。地方に職がないので、その支援のために大企業の本社を誘致しよう、ということですが効果は薄いと言わざるを得ません。
効果が薄いことに多額の税金を投入して、ますます地方が衰えていく流れになってしまいます。
現在、大卒者の就職内定率は7割ほどです。就職できない人は、それでも都会に残り、パートタイムやアルバイトを選択しています。地方にはその程度の仕事さえもない、というのが事実です。
一方で、高等専門学校卒の内定率は9割を超えて高く安定しています。地方創生という言葉だけで片付けるのではなく、大学の改革も同時に対処すべきです。
そう考えると、私なら大卒者を地方へ就職させるのではなく、10~20万人単位で海外に送るべきだと思います。海外でのビジネス経験を持った人材が将来日本に戻ってきてくれることを考えると、そのほうがよほど日本のためになるでしょう。
少し話題は変わりますが、山形県庄内町で、報酬アップを求める町議会に対し、町長が「ボランティア議員による夜間・休日議会」の構想を逆提案し、真っ向から対立しています。
私はこの町長の意見に大賛成です。そもそも地方議会にはそれほど大きな権限はなく、中央の法律が規定している範囲内で条例を作ることができるだけです。地方議会はフルタイムの職にせず、1回の開催ごとに報酬を支払うという形でも十分だと思います。
庄内町の原田町長のような感覚を持った人が増えてくれれば、地方創生の議論ももっと生産的なものになるだろうと感じます。
JA全中の権限撤廃は、数少ない安倍政権の正論の1つ
政府は今月始まる通常国会に提出する農業協同組合法改正案の骨格を固めました。
全国の農協組織を束ねる全国農業協同組合中央会(JA全中)の指導・監査などの権限を3年で全廃して任意団体に転換する方針を明らかにしました。これは産業競争力会議における新浪氏の貢献が大きい施策です。
まさにこの問題を焦点として、佐賀県知事選挙が行われています。農業が反転の兆しを見せないのだから、これまで指導してきたJA全中は役割を果たしていない。ゆえに、JA全中の権限の撤廃を求めるという動きです。
そして、既得権益・政治権力の強い人を後ろ盾とする対立候補と争っています。農協の組合会員数を見ても、正組合員数は右肩下がりです。
一方で、准組合員数は増加していますが、これは「なんちゃって農協組合」とも言えます。農協系の金融商品は、金利が優遇されていたり、有利な条件のものが多いため、それらを利用することを目的として会員になっているだけです。
農民の立場から見た問題は、依然として解決していません。未だに農協経由で販売すると、いくつもの中間マージンが乗せられて、最終消費者に届く頃には非常に高い値段になってしまっています。だったら、直接注文を受け付けたほうが良いと判断するのは致し方ないでしょう。
JA全中から開放し、各農協であるべき姿を模索してもらうべきでしょう。このJA全中の権限撤廃の動きは、新浪氏が農水省の役人と渡り合って、ようやくここまで形にしてきました。
この施策は安倍政権による数少ない正論の1つだと思います。ぜひ、今回の佐賀県知事選挙にも期待したいところです。
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※この記事は1月4日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今回は地方創生の話題を取り上げ解説しました。
効果の薄いであろう政策に税金を投入しようとしている政府。労働市場の実態が把握できていないことが伺えます。相手はどのような特徴があるかを事前の情報収集によって掴み、それにあった打ち手を作る必要があります。
ビジネスにおいても同じことが言えるのではないでしょうか?リアリティがないまま戦略を実行に移していては、効果を出すことは出来ません。
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