大前研一「ニュースの視点」Blog

KON546「衆院選・アベノミクス効果~数字の実態を考える」

2014年12月5日 アベノミクス 衆院選

本文の内容
  • 衆院選: 投票したい政党
  • 衆院解散・総選挙: アベノミクス継続訴え
  • アベノミクス効果: 100万人雇用拡大の実情

投票したい政党がないのが事実。橋下氏の不出馬は、ビッグミステイク


日本経済新聞社とテレビ東京が先月21~23日に実施した世論調査で、衆院選で投票したい政党や投票したい候補者がいる政党を聞くと、自民党が35%で最も多かったことがわかりました。

また、安倍首相が衆院選の争点とする経済政策「アベノミクス」については「評価しない」が51%で「評価する」の33%を上回ったとのことです。

今、日本の国民がどれほど今回の選挙に「憤慨」しているか、このアンケート結果からも伺えます。

実施機関によっては、直近の結果ではついに内閣支持率も不支持が上回りました。内閣に対する不信感があっても、民主党も相変わらず低迷しているのは情けないところです。

政権枠組みについての世論調査を見ると、自公連立を希望する人が34%、自民独立が20%、野党中心が18%となっていて、
ここでも野党への期待感はまるでなく盛り上がりようがありません。

そもそも、野党の数が多くなり過ぎて国民にとって非常にわかりづらい状況です。正直に言えば、自民党もその他野党も投票したいところがない、というのが実態でしょう。おそらく投票率は下がるだろうと私は見ています。

維新の会の橋下氏が出馬を見送ったことが話題になっていましたが、これは大きな判断ミスだと私は思います。一部には、衆院出馬によって「大阪都構想」を投げ出す形になる批判を避けたのでは?と言われていますが、大阪府知事から大阪市長になるときに同じことをやっていますから、それは考えられないでしょう。

来年には大阪市長の任期が終了します。仮に再選されたとしても、今の状況を見ると市議会や府議会で橋下氏の主張を通すことは、まず無理でしょう。

橋下氏が推し進めた数少ないクリーンヒットの政策であった、大阪市営地下鉄・バスの民営化議案も、先月21日否決されました。余語氏が立案した黒字化できる素晴らしい計画でしたが、これを見ても、大阪市議会、府議会がとんでもない状況にあると理解できます。

衆院選に出馬していれば、比例区で票を集めることもできたでしょう。任期を考えても、大阪の状況を考えても、ここは出馬しておくべきだったと私は思います。

おそらく次の4年間は、安倍総理は何があっても絶対に自ら解散しないでしょう。その意味でも、今回の橋下氏の判断はビッグミステイクだったと言えます。

 

アベノミクスの実態が明らかに。自民党の放送局への圧力は危険信号


自民党は25日、衆院選で訴える政権公約を公表しました。アベノミクスの柱である2%の物価安定目標について「早期達成に向け、大胆な金融政策を推進する」と改めて明記。

地方創生の推進策としては「地方創生特区」の創設による規制改革を打ち出しました。経済再生を柱とし、アベノミクスの継続を訴えるとのことです。

そもそも、「アベノミクス」が上手くいかなかったから、景気条項を発動し、消費増税を1年半延期したのに、「アベノミクスの継続」を訴えると言われても、困ってしまいます。ついに国民のアベノミクスへの評価も「評価しない」人が50%に達し、事実がわかってきた状況です。

アベノミクスの実態という意味では、ハフィントン・ポストが先月26日掲載した『65歳以上の就業者が激増中!アベノミクス100万人雇用拡大の実情』と題する記事もあります。これは、安倍総理が政権発足後、雇用が100万人以上増加したと強調したことを受けて、各統計に照らしながら検証したものです。

結果、正社員雇用はほぼ変わらず、シニア世代の非正規社員が大幅に増加した実情が浮き彫りになったとのことです。

非正規雇用が増加し、正規雇用が増えていないのは、これまでにも知られていた事実でしたが、シニア世代が増加しているというのは非常に重要な事実です。すなわち、「将来に対する不安」があるから引退できないという心理です。

1600兆円の個人金融資産はその1%でも市場に出てくれば、非常に大きな経済効果を生むのですが、これでは依然として眠ったままでしょう。

安倍総理は100万人の雇用が拡大し、GDPも伸びたと主張していますが、雇用については上記の通りですし、政権発足直後と、直近の為替レートで単純換算するとGDPも対ドルベースで見れば30%下落した、というのが事実です。記者会見を見る限りでは、1つもまともな解釈をしていなかったと私は感じました。

とはいえ、安倍総理の発言はおそらく内閣官房参与の飯島氏の戦略・シナリオ通りなのだと思います。飯島氏は小泉内閣の主席秘書官を務め、郵政解散・総選挙においても大きな役割を果たした人物です。

また、今回の総選挙に際して、自民党が在京キー局に事実上「自民党批判封じ込め」の通達をしたという件について、私も非常に「危険」な状況になってきていると感じます。特に、今回の選挙はほぼ勝ちが決まっているのですから、もっと横綱相撲をとってほしいところです。

自民党以外に期待できる政党もいないだけに、危機感を覚えざるを得ません。

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※この記事は11月30日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています

 

今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今回は衆院選とアベノミクスの話題を取り上げました。

雇用が100万人以上増えたという言葉を聞くと、政策の効果が出ていると受け取ってしまいがちですが、その中身を見てみるとシニア世代が増加しているのが実情です。

皆さんは、数字をしっかり読み取れていますか?実態まで把握することができていますか?誤った事実の理解から導き出す施策では、インパクトある成果を出すことはできません。

事実を正しく解釈し、正しい行動に結び付けることが、問題解決において重要となります。

「ファクトを正しく理解し問題の本質をつかむ」
問題解決力トレーニングプログラム(大前研一総監修)
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