大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON420 「原発と電力問題 ~話題の見方を考える」

2012年6月29日

 原発建設     日立の原発建設に議会承認
 原発再稼働問題  3原発を再稼働候補に
 電力問題     計画停電を見直し


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 ▼ 今は、外国の原発建設で実績と経験を積んでおく
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 リトアニア政府は21日、日立と交渉中だった原発の建設事業権契約について、
 議会の承認を賛成多数で得たと発表しました。


 原発から送電するラトビアなど周辺国から合意を得た後、
 正式契約するとのこと。


 福島第1原子力発電所事故で国内での原発新設が難しいなか、
 事故後の日本の原発プラント輸出の第1弾となる予定です。


 日立・米GE連合、東芝・米ウエスチングハウス連合、三菱重工のそれぞれの
 原発建設の受注状況を見ると、様々な地域の国から引き合いがあるようです。


 日本国内では、福島第一原発事故の影響のため日本の原発建設メーカーは
 敬遠されると言う人もいますが、実際には日本企業は非常に優秀です。


 世界的に見ても原発建設産業では、日本勢に匹敵しうるのは、
 フランスのアレヴァ社くらいしか見当たりません。


 この市場に対しては、韓国や中国も参入を虎視眈々と狙っていますが、
 日本の実績とは比べ物になりません。


 また福島第一原発事故の後、日本メーカーの原発は安全性が格段に
 上昇しています。


 私もレビューに参加させてもらいましたが、東芝・米ウエスチングハウス連合
 の新型炉である「AP1000」は、仮に福島第一原発と同じ状況になっても
 最後まで自力で冷却できるという設計になっています。


 今は日本国内で新しい原子炉を建設することは難しいでしょうが、
 20~30年先、再生可能エネルギーの限界が見えてきたときに
 もう1度カムバックする機会があるかも知れません。


 ぜひ今は外国からの需要に応え、実績と経験を数多く積んでいて
 もらいたいと思います。


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 ▼ 原発の危険性を「客観的に」「冷静に」判断する
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 日本国内の原発に対する姿勢を見ていると、特にマスコミ報道が少し過剰に
 反応している側面があると私は感じています。


 例えば、経済産業省原子力安全・保安院は3つの原子力発電所の
 ストレステスト(耐性調査)結果の審査を8月までに終える方針を固め、
 関西電力大飯原発の次に再稼働させる具体的な作業を進めていますが、
 「住民からの反対」を容易に想像できます。


 「福島第一原発事故の反省をしていない」「政府の説明が下手」という点が
 根本的な問題ですが、加えて大飯原発の再稼働においても住民からの反発が
 強くなってしまったのは、小さな問題が発生するたびにマスコミが大きく
 取り上げて騒いでいたからだと思います。


 そもそも原発の稼働にあたって、小さな問題が発生することは日常茶飯事です。


 だからこそスタートアップする際には3週間~4週間の時間を確保するのです。


 原発という巨大なプラントにおいて、いちいち小さな問題まで全て発表して
 騒ぐという姿勢は、いい加減に改めるべきでしょう。


 また「放射線量が多い地域を発見した」といって除染するなど、
 体内被曝の問題も大きく取り上げられることが多いようですが、
 これについても同じような側面があると思います。


 被曝量が絶対量として多い少ないと議論するつもりはありません。


 しかし「医療被曝」による被曝量と比較して見たとき、どうして
 医療被曝については大騒ぎしないのか?と疑問を感じてしまいます。


 日本医学放射線学会など12学会・団体は、CT検査などの普及で医療の検査、
 治療による被曝が増えていることを受けて、患者ごとに医療被曝の
 総線量を把握する仕組み作りに乗り出しています。


 がんによる死亡率が0.5%増すと言われている被曝量(年間)が
 100ミリシーベルト、職業被曝の年間限度が、50ミリシーベルトです。
 そして、CT検査は1回で5~30ミリシーベルトと推定されています。


 CT検査を複数回受けたら、一体どの程度の被曝量になってしまうのか、
 恐ろしい数値になります。


 日本では複数の病院でそれぞれCT検査を受けることはそれほど
 珍しくありませんが、これはどれほどの危険性なのでしょうか?


 福島第一原発事故の影響だけを大きく取り上げて騒ぐのではなく、
 こうした医療被曝についても心配するべきではないでしょうか。


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 ▼ 計画停電は何が何でも避けるべき
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 原発や放射能に過敏に反応しすぎる反面、計画停電による経済的な
 影響については鈍感に過ぎると私は思います。


 政府は22日、電力需給の関係閣僚会議を開き、今夏の計画停電の手順と
 節電目標の見直しを決め、北海道、関西、四国、九州の4電力管内で
 需給が逼迫した場合に計画停電する方針で、1回2時間、1日1回が
 原則と定めるとのことです。


 今年の夏がどういう気候になるのか分かりませんが、兎にも角にも
 「計画停電は絶対に避けなければならない」というのが私の意見です。


 計画停電は病院や工場にとって恐ろしく大変な事態を引き起こしますし、
 レストランやホテルなどの営業活動にも甚大な被害があります。


 1回2時間だろうが1日1回だろうが、断じて許可するべきではないと思います。


 そのために、例えば私たち国民は電力消費量が95%を超えたらテレビや冷房を
 使わないという形で協力すれば良いですし、工場は操業時間を早めたり、
 休日をずらすことで消費電力が少しでも分散するよう計らうことが
 できるでしょう。


 それぞれの立場で協力できることを行い、何が何でも計画停電を避けることが
 何より重要だと私は思います。


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