- 本文の内容
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- 韓国自動車 2017年のベンツ販売台数6万8861台
- 日産自動車 2022年までに中国に約1兆円投資
- 三菱重工業 三菱自動車株の売却検討
- トヨタ ジャパンタクシーと資本提携
韓国でポジションを確立できなかった日本の自動車メーカー
韓国輸入自動車協会の統計によると、2017年のベンツの販売台数は6万8861台と前年比22%増となりました。日本での販売台数を抜き、過去最高を更新したもので、韓国消費者のブランド志向や国産車が現代グループの寡占市場であることなどが背景にあると見られています。
ベンツは若干日本を上回った程度ですが、BMWにいたっては日本を大きく上回る販売台数になっています。その他の海外自動車メーカーに目を向けると、VWは韓国で販売していないため日本のみで、ボルボとポルシェも日本が優勢、ランドローバー、ジャガーでは韓国に軍配があがっています。韓国の人口は日本の約3分の1、一人当たりGDPや収入なども合わせて考えると、韓国における自動車の売れ行きは異常なものがあります。ベンツやBMWの販売実数で抜かれたことは日本全体にとってショックです。
同時に、日本メーカーにとっては、日本車が韓国において立場を確立できていないことも由々しき事態です。日本のメーカーとしては、韓国においてベンツやBMWと同じような高級車としてのポジションを確立すべきです。
日産自動車と中国の東風汽車集団の合弁会社は5日、中国で2022年までに600億元(約1兆円)を投資すると発表しました。40車種以上を投入し、そのうち半分をエンジンで発電してモーターで駆動する「eパワー」搭載車種を含めた電動車にするとのことです。
中国におけるメーカー別自動車販売台数は、VWやGMなど外資系が強く、日産(東風汽車集団の合弁会社も含む)はそれに次ぐポジションにいます。ホンダ、トヨタは日産の下に位置しています。日産は中国でかなりシェアを伸ばしていると言えます。
そして、その半分を電気自動車に注力していくということです。
ウーバーでも滴滴出行でもなく、日本ではタクシー連合体を目指すトヨタ
中国の滴滴出行は7日、仏ルノー・日産自動車・三菱自動車連合など自動車大手12社と提携し、電気自動車(EV)など新エネルギー車のカーシェアリング事業に参入すると発表しました。オープンなカーシェアのプラットフォームを構築し、滴滴とカーシェア会社のアプリが連携し、手軽に利用できるようになるとみられています。
中国において実質的に独占状態を築き上げている滴滴出行が、カーシェアのプラットフォームを構築するということで、自動車メーカー各社が滴滴出行の柳青総裁の軍門に下ったということでしょう。中国ではウーバーも撤退し、滴滴出行の独占の牙城を崩すことは不可能な状況です。各メーカーにとっても、致し方ない決断だったと思います。
トヨタ自動車は8日、日本交通のグループ会社で配車アプリを開発するジャパンタクシーと資本提携すると発表しました。トヨタが第三者割当増資を引き受ける形で、約75億円を出資します。これにより両社は相互のノウハウや技術を活かし、配車支援システムなどで連携する考えです。
日本では2種免許が必要なため、トヨタとしてはタクシー各社を実質的に束ねているジャパンタクシーに打診したのでしょう。AIを使いながら配車システムを一緒に構築する狙いだと思います。出来る限りトヨタ車を利用してもらいたいという意向もあるでしょう。
日本においては、ウーバーや滴滴出行のようなシステムではなく、2種免許を守ってタクシーの連合体のような形態で、同じくらい利便性の高いものを提供していこうという戦略です。75億円の出資額は何とも中途半端だと感じます。ちょっとしたシステムであれば、75億円も必要ありませんし、逆に数千人の技術者を抱えるウーバーレベルの開発を目指すなら75億円では足りません。
三菱重工の今後の経営はさらに難しくなっていく
三菱重工業が、保有する三菱自動車株の一部売却を検討していることが5日、明らかになりました。主力の火力発電設備の需要現象や小型ジェット旅客機MRJの開発の遅れなどで業績が低迷しており、保有資産を見直し合理化を加速する考えです。
三菱自動車の株の問題ではなく、三菱重工そのものが心配になります。宮永社長は6年目を迎えましたが厳しい状況が続きます。MRJ事業は自ら管轄しながら、後退しているような状態です。その事態に誰も異議を唱えないというのも、私には異様に感じます。
他にも、客船、原子炉などでもトラブルが続発しています。三菱重工の収益を見ると、利益は出ていますが、トラブルによって今後計上が見込まれる損金が大きいのだと思います。今のタイミングで三菱自動車株を処分して資金を必要とする理由でしょう。
三菱自動車の株主構成をみると、日産自動車が33.9%を保有していて、三菱商事と三菱重工を合わせて20%弱になります。三菱重工が三菱自動車株を売却するなら、三菱商事に預けて三菱全体として恥をかかないように、などと考えずに日産に売ってしまうのは正解だと私は思います。
今後はコングロマリットディスカウントが効いてくる局面ですし、三菱重工の経営の舵取りはさらに難しいものになっていくと思います。
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※この記事は2月11日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週は、韓国自動車業界の話題を中心にお届けいたしました。
韓国消費者のブランド志向や国産車が
現代グループの寡占市場であることなどが背景に、
日本車がベンツやBMWの販売実数で抜かれ
立場を確立できていない状況となっています。
これに対して大前は、日本のメーカーとしては、
韓国においてベンツやBMWと同じような
高級車としてのポジションを確立すべきと指摘しています。
ブランドを成立させるプロセスの中に、
自社のポジショニング(差別化)があります。
この差別性を行うにあたっては、
競合とは異なる差別性で、ユニークなもの、
さらにしかも顧客が望んでいる差別性である必要があります。
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価格の安定につながります。
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