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- ソニー 吉田憲一郎氏が社長兼CEOに
- 富士フイルム 米ゼロックスを買収
ソニー平井一夫社長の引き際は見事だが、一方でソニーは油断できない状況
ソニーは2日、吉田憲一郎副社長兼最高財務責任者(CFO)が4月1日付で社長兼最高経営責任者(CEO)に昇格する人事を発表しました。平井一夫・現社長にCFOとして登用され、ここまでの「V字回復」を牽引した人物で、社内外から「あくまで番頭」と評されてきた影の卓役者が表舞台に躍り出ることになります。
今後、平井氏は代表権を持たないということですから、本当に経営の現場から去るつもりなのでしょう。米国育ちの平井氏らしい決断だと思います。まだ余力を残しているという見方もあるようですが、私が平井氏の立場でも、今退任することを考えるでしょう。
平井氏が社長に就任してから、ソニーの業績は一度奈落に沈み、そこから見事にV字回復を果たしました。ただし、利益は過去最高益水準ですが、売上は過去最高までに戻ってはいません。
ゲーム、ホームエンターテイメント、金融、映画、半導体、音楽といった各事業で利益を出せていますが、今後はどうなるのか?と言われると難しいかもしれません。金融と半導体は安定したまま推移すると思いますが、ゲーム、ホームエンターテイメントには不安を覚えます。中でも、黒字転換を果たした映画などは特に「水物」ですから、全く油断できません。
このような状況を見ると、売上として伸びていくものが見当たらず、過去最高益の今を逃さず、拍手喝采のタイミングで退任するというのは、見事な去り方でしょう。売上の回復にまでは至りませんでしたが、V字回復を達成し利益を回復させたのは見事です。テレビ事業を黒字化させたのも重要でした。
富士フイルムが成長していくのは、簡単ではない
富士フイルムホールディングス(HD)は先月31日、事務機大手の米ゼロックスを買収すると発表しました。米ゼロックス株式の50.1%を取得し、傘下の富士ゼロックスと経営統合させる方針で、これに伴い富士ゼロックスは国内外を対象に従業員1万人を削減する他、工場の統廃合など抜本的な構造改革に踏み切る考えです。
競合のリコーやコニカミノルタが低迷する中、富士フイルムは強気にM&Aに踏み切ると発表しました。買収先である米ゼロックスの業績を見ると、売上・営業利益・純利益のいずれも下落傾向です。たしかに、統合することで世界最大「規模」にはなるでしょうが、実質的にこのM&Aにそれほど意味があるとは私は感じません。
もともと富士ゼロックスは、富士フイルムと英ランク・ゼロックスが合弁で作った会社です。その後、富士フイルムが株式を25%買い増し、出資比率は富士フイルム75%:米ゼロックス25%になっていました。富士フイルムからすれば、今回のM&Aは比較的容易なものだったと言えます。
富士フイルム本体の売上も下降傾向にあり、イメージングソリューション(カメラ)、ドキュメントソリューション(コピー機など)いずれも苦労しています。古森会長が推進してきた医療事業ではある程度の利益を出していますが、全体としてそれほど余力があるとは思えません。
今回のM&A、そして今後の見通しについて、古森会長は強気の発言をしていますが、私は相当苦労することになると見ています。古く歴史のある会社はリストラするのも、一苦労で楽観視することはできません。
またこの業界は変化が大きく、ドキュメントソリューションの基盤そのものが揺らぎつつあります。今までのようにゼロックス1社から購入するという顧客も減り、ゼロックス、キヤノン、リコーなど複数社の製品をミックスさせた提案をするソリューションビジネスが台頭してきています。
この業界においては、むしろコニカミノルタのように「強くはないが、堅調に稼いでいる」という方が安定しているかもしれません。富士フイルムのように成長していこうとすると、かなり苦労も多いですし、経営の舵取りも難しい局面が増えてくると思います。
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※この記事は2月4日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週は、ソニーと富士フイルムの話題を中心にお届けいたしました。
事務機大手の米ゼロックスを買収すると発表した
富士フイルムホールディングス(HD)。
統合することで世界最大「規模」にはなるが、
実質的にこのM&Aにそれほど意味があるとは感じないと
大前は記事中で言及しています。
今回の買収に伴い、富士ゼロックスは
国内外を対象に従業員1万人の削減や工場の統廃合など
抜本的な構造改革に踏み切る考えを示していますが、
これらはあくまで成長戦略の準備段階にすぎません。
成長戦略に定石はなく、企業が成長軌道に乗るためには、
何らかの変質(パラダイムシフト)が伴います。
ビジネスモデルを変質させるのか?など、
企業の成長のためには何らかの変化が問われます。
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