大前研一「ニュースの視点」Blog

KON701「英EU離脱問題/イギリス情勢/ドイツ情勢 ~日本の政党はドイツの政党の政策に対する姿勢を見習うべき」

2017年11月24日 イギリス情勢 ドイツ情勢 英EU離脱問題

本文の内容
  • 英EU離脱問題 ロシア関与のツイッターアカウント
  • イギリス情勢 保守党議員40人がメイ首相不信任に同意
  • ドイツ情勢 移民、財政問題で意見対立

ロシアは欧米の情報操作に長けている


英紙ガーディアンは14日、英国の欧州連合(EU)離脱を決めた昨年6月の国民投票で、ロシア政府とのつながりが疑われるツイッターの多数のアカウントが離脱を支持する投稿を繰り返していたと報じました。また、英紙タイムズもロシア関連の15万以上のアカウントが自動投稿の仕組みを使い、離脱投票の呼びかけを行っていたと報じています。

ロシアとしてはEU弱体化を狙い、英国に離脱してもらう方が得策だと感じたのかも知れません。かなり本格的な情報操作が行われています。

ロシアトゥデイやスプートニクニュースなどを使いながら、対象国のシンクタンクに資金拠出し、クレムリンの意向に沿った見解を流布。また映像も大いに活用しつつ、SNSやフェイクニュース作成集団を使い、マルチメディアでクレムリンを利する情報を浸透させ、自分たちに有利な政治議論が起こるように仕向けていると言われています。

英国のEU離脱についても、ロシアのこうした動きの影響を受けていたということが、今ごろになってわかってきたということで、全くお粗末な話です。米大統領選挙においても暗躍したように、ロシアは相手の情報に入り込んで操作するのが非常にうまいと思います。

日本の対ロシア感情は必ずしも好意的ではありませんから、日本に対する情報操作はそれほど上手く機能していないようですが、欧米ではかなり成功していると言えるでしょう。

今国民投票を行えば、英国民はEU離脱を選択しない


英紙サンデー・タイムズが報じたところによると、英国議会の保守党議員40人がメイ首相に対する不信任表明に同意したことがわかりました。閣僚の相次ぐ辞任やEU離脱交渉で進展がないことで、メイ政権への逆風が強まっています。英最大野党である労働党のコービン党首も「メイ首相の指導力がないということが、あらゆる角度から示唆されている」と指摘しています。

メイ首相の指導力の無さは言わずもがなですが、母体の保守党が不信任に同意したというのは、メイ首相にとってはかなり痛手でしょう。私は任期である来年の3月までメイ首相は持たないと予想しています。EU離脱交渉も上手くいっていませんし、さらには外務大臣にボリス・ジョンソン氏を任命するなど最悪の意思決定だと思います。

メイ政権は一度崩壊して、もう一度国民投票をやり直すべきでしょう。再度国民投票を実施すれば、EU離脱に反対の国民が過半数以上いるということが判明するのではないかと思います。その結果をもって、EUも胸を撫で下ろすというシナリオを私は予想します。

そもそも、英国民はEUの離脱について正確な情報を知らされないまま投票してしまった、というのが実情です。「EUに帰属していることで、難民が来る」「その結果、自分たちの職が奪われている」というような「デメリット」ばかりを伝えられていました。結局のところ、現在の英国は完全雇用に近い状況であり、こうした情報も事実ではありませんでした。

EU離脱に伴い発生する8兆円の手切れ金のことや、多数の外資系企業が、英国がEU離脱するなら国外へ出ていくということなど、EU離脱に伴うマイナス情報を知らされないまま投票した人がほとんどだと思います。今は冷静になって、EUに残った方が良いと考えている英国民が多くなっていると私は見ています。


日本の政党はドイツの政党の政策に対する姿勢を見習うべき


ドイツのキリスト教民主・社会同盟、自由民主党、緑の党による3党連立に向けた協議が、メルケル首相の目指す16日の期限を過ぎてもまとまらず、週末にずれ込む可能性が出てきました。自由民主党のリントナー党首は、デジタル化や欧州といったテーマでは協議の進展がある程度あったが、移民と財政問題を巡り意見が対立していると述べています。もし3党が合意できなければ、再選挙の可能性も浮上してきます。

ドイツの「連立」に対する姿勢は非常に厳格です。各党がそれぞれドキュメントを残しており、「連立」にあたって合意文書が100ページを超えることもあります。

合意項目について、2ヶ月かけて1項目ずつ検討しています。各党首が苦虫を噛み潰したような表情になるのも頷けます。長い時間を掛けて、1つずつ合意形成を行っていくのは非常に大変なことだと思います。「いい加減な合意はしない」という、いかにもドイツ人らしい姿勢です。

この姿勢は日本も見習うべきです。本来、政党はそれぞれの主義主張を持っているべきです。「連立」に際して各党の主義主張を調整し、合意するのは簡単なことではありません。日本ではいい加減な連立が多すぎます。安保法制に反対でも、連立ありきで自民党と手を組む公明党。その昔社会党と連立を組んだ自民党。いずれも、党首が気軽に握手すれば連立が成立するというレベルで、そこに主義主張が存在しているとは全く感じられません。

今ドイツでは、財政問題、移民問題、男女の権利問題、地球環境問題など、様々なテーマで議論が行われています。メルケル首相としても、連立ありきで妥協するわけにはいきませんから、場合によっては再選挙をせざるを得ないという非常に苦しい状況です。

このようなドイツの各政党の主義主張に対する断固たる姿勢を見ていると、日本の希望の党など軽すぎて情けない限りです。さすがに選挙が終わった後、2ヶ月たっても政権が発足しないというのは長すぎると思いますが、日本の政党はドイツの政党を見習うべき点が多いと思います。


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※この記事は11月19日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は、イギリスやドイツの話題を中心にお届けいたしました。

移民と財政問題を巡り意見が対立しており、
ドイツでは連立協議が行き詰まるなか、
再選挙へ踏み出す可能性も浮上してきました。

このドイツの「連立」に対する姿勢を例に挙げ、
日本の政党はドイツの政党を見習うべき点が多いと
大前は指摘しています。

長い時間を掛けて、1つずつ合意形成を行っていくのは
非常に大変なことです。

しかし、この合意形成のプロセスを行っておくことで、
意思決定をスムーズにできたり、
実行段階で関係者の協力が得やすくなったりと、
メリットも多くあります。


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