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〔大前研一「ニュースの視点」〕KON205 新銀行東京は閉鎖すべき!新銀行東京の再建策のウラに隠された問題とは?

2008年3月28日

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新銀行東京
預金の5割は高金利 年利1.5%以上
都議会 400億円の追加出資可決へ
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●高金利よりも、
議員による「口利き」を認める姿勢の方が問題だ


 17日、多額の累積損失を抱え経営難に陥っている
 新銀行東京の預金残高のうち5割以上が、
 年利1.5%以上という高金利で集めた定期預金であることが
 明らかになりました。


 また、システム投資の失敗が相次いでいたことや、
 設立構想時に専門家の指摘に石原都知事が
 耳を貸さなかったことが明らかになっています。


 そうした中、400億円の追加出資案について、都議会与党が
 容認する検討を始めていることが分かってきています。


 私も、今週、新銀行東京の構想時に石原都知事に
 アドバイスをした人間として、多くの取材依頼を受けました。


 今回の新銀行東京の再建策について感想を述べるなら、
 問題だらけで全くお話にならないということになります。


 まず、何とかお金を集めることには成功したと言いますが、
 年利1.5%という高金利ですから、異常な集め方だ
 と非難されても致し方ないレベルだと思います。


 さらに、貸し出し方についても、審査をあまり行わず、
  チェックリストに従って機械的に処理されているのではないか
 という懸念があります。
 
 ただ、私が最も問題視しているのは、いわゆる「口利き」を
 認めるような見解を示しているということです。


 議員の人たちが、地元の困っている人たちを連れてきて、
 銀行に紹介するというのです。


 石原都知事は、この点について、
 「最終的に貸し出すか否かは銀行が決定することなので、
 議員が紹介するのは問題ではない。」
 というような見解を都議会で示しています。


 私に言わせれば、
 このようなことを言える都知事の神経を疑いたくなります。


 銀行というのは、本来、お金を借りたい人が赴くべき場所です。
 議員という立場にある人間が紹介するというのは
 正常なことではありません。


 何が何でも新銀行東京を救済しなくてはいけない
 という意識が強すぎて、明らかに正常な判断を欠いている
 と言わざるを得ない判断だと思います。



●新銀行東京の再建策は、独禁法違反であり、違法行為だ


 今回、新銀行東京に対する400億円の追加出資案が
 可決する方向で検討されているというのも、
 議員が口利きをしているという事実が
 大きく影響しているのではなかと私は見ています。


 おそらく、共産党を除く都議会議員の人たちは、
 「口利き」をしているという後ろめたさがありますから、
 あれこれと追求が深くなっていくのを避けたい
 という心理があるのではないかと感じます。


 だから、400億円の追加出資についても、
 手っ取り早く可決したいと動いたのではないでしょうか。


 400億円追加出資後の新銀行東京の再建計画では、
 2011年に損益分岐点に達し、
 2012年には8億円の黒字化を目途にしているとのことです。


 これだけを見れば、素晴らしい再建計画に見えますが、
 これには裏があると私は考えています。


 それは、例えば、朝日新聞の記事に出ていた
 次のような表現から読み取れると思います。


 「(新銀行東京は東京)都の公共事業を請け負う企業への
 貸し付けを拡大するなど都の政策との連動も強化し、
 11年度の単年度黒字を目指す」(2008年2月20日朝日新聞)


 端的に言えば、
 都の出入り業者に対して仕事を斡旋する代わりに、
 新銀行東京から(高金利で)お金を借りるように促す、
 ということでしょう。


 公共事業等の都が外部業者に発注する事業費を呼び水にして、
 この方法を使えば黒字化するのは簡単でしょうが、
 独占禁止法に抵触する可能性があり、
 これは違法行為になりえます。


 事業を発注する都が独占的な立場に基づいて
 商取引を強要するわけですから、
 公正取引委員会の調査対象になると思います。


 「そんなつもりはない」と否定するかも知れませんが、
 私に言わせれば、元東京都港湾局の局長だった津島隆一氏が、
 昨年11月、電撃的に新銀行東京の取締役兼代表執行役に
 就任したことへ疑惑の目をもって非難されるのも、
 文句は言えないと思います。


 東京都の局長だった人物が突然、
 銀行のトップに就任するという人事はかなり珍しいものです。


 しかも、それが港湾、埋め立てなどを取り仕切っていた
 港湾局長だとすれば、当時築き上げた都の出入り業者との
 関係を利用していくのではないかと考えるのは、
 自然なことでしょう。


 石原都知事としては、とりあえず400億円を追加出資して
 債務超過を消してしまえば、後は何とかなると
 考えているのでしょう。


 確かに、都の出入り業者に新銀行東京都の取引を強要すれば、
 利益は上がります。相手が取引業者であれば、
 かなりの高い金利での貸付も可能でしょうから、
 見かけ上は、まさにザクザク儲かると思います。


 しかし、これはやってはいけないことです。
 新銀行東京は、閉鎖するべきです。


 違法行為を容認してまで、新銀行東京の建て直しを
 優先するという、現在の都関係者の判断には、
 全く呆れるばかりです。


 もう「祭りの後」なのだということを認めて、
 この問題はさっさと終わりにしてもらいたいと思います。


 以上


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