大前研一「ニュースの視点」Blog

KON632「外国人労働者・外食産業・国内高級ホテル ~深刻化する外食産業の人手不足問題」

2016年7月29日 国内高級ホテル 外国人労働者 外食産業

本文の内容
  • 外国人労働者 陰る日本の魅力
  • 外食産業 外食の人手不足申告、IT活用進む
  • 国内高級ホテル 大手町「星のや東京」開業

外食業界の人手不足。ITにはビジネスチャンスも、日本の未来は厳しい。


日経新聞は18日、『外国人労働者、陰る日本の魅力』と題する記事を掲載しました。外国人労働者の「日本離れ」が静かに進んでいます。

単純労働者の受け入れを進めている台湾や韓国では、外国人労働者が増加する一方、日本は円安の影響もあり、賃金の優位性が薄れているとし、「日本に来るメリットがなくなっている」とする現場担当者の声を紹介しています。

根本的な問題として、国が外国人労働者を積極的に受け入れることについて態度を明確にしていません。
ただし、これまでの歴史を見ると、日本は「ウェルカムではない」国の代表と言ってもいいと思います。

アジア主要国の製造業ワーカーの平均賃金を見ると、日本が最も高く「2,373ドル/月」になっています。

日本につづくのは、ソウル:1,729ドル/月、シンガポール1,526ドル/月です。

日本は生活費が高いことを考慮すると、実際には賃金の差はほとんど感じられないというのが実態だと思います。

今、シンガポールでも台北でも人手が足りない状況になっていますが、日本でも外食の人手不足が深刻化しています。

日経新聞は18日、『外食の人手不足深刻、IT活用進む』と題する記事を掲載しました。

それによると、外食産業の人手不足は深刻で、2016年5月の有効求人倍率(パート含む)は外食など「接客・給仕」業が3.45倍と全職業平均の1.11倍を大きく上回る結果になっているとのことです。

逆に、営業や一般事務などは有効求人倍率で1倍を割り込んでいます。すなわち、いわゆる「3K」に近い職業では日本人の求人が集まらない状況になっているということです。

そうなると、外国人労働者にお願いしたいところですが、そのような職業は日本だけでなく世界中で人手不足になっているので日本にとっては厳しいところです。

老舗旅館・加賀屋が、食前の搬送に専用ロボットを使うということでニュースになっていましたが、飲食業界においては今の状況は「新しいビジネスチャンス」を狙えるタイミングとも言えます。

今、飲食業界では様々な新しいネットサービスが誕生しています。

・トレタ:予約台帳と顧客管理のクラウド型サービスを提供。予約・顧客管理、リアルタイムでネット予約を受け付ける
・ポケットメニュー:高級飲食店専門で予約から決済まで可能なアプリを提供
・米オープンテーブル:3万7000のお店が登録していて、空席状況を消費者に提供
・スタディスト:人材教育のクラウドツールを提供。写真や動画を組み合わせてマニュアルを作成。給仕/接客、調理方法を教える。

人手不足のため、素人でも仕事ができるようにする必要性が高まり、そこにネットサービスが入り込む余地が生まれています。

日本では人手不足は、今後さらに深刻化していくのは間違いありません。年々、労働者人口は減少しています。

移民を受け入れずにやっていくには、かなりサービスレベルを落とさざるを得ないでしょう。高級ホテルでも、接客・給仕の一部分を自分自身でやる必要が出てくるかも知れません。

あるいは、ハウステンボスのように受付からロボットが対応するのかも知れません。移民を受け入れないのならば、そういう未来が待っています。


都心に相次ぐ高級ホテル。高価格設定は、受け入れられるか。


ホテル運営の星野リゾートは20日、オフィス街の東京・大手町に旅館「星のや東京」を開業しました。

1階で靴を脱いで上がるなど、伝統的な日本旅館を現代風にアレンジした内装で料金は1泊1室7万8千円からということです。

食事を含まずにこの高額な料金設定で、果たして近隣のパレスホテルなどに比べて優位に立てるのか、正直疑問です。1階で靴を脱がせるというのも、外国人にとっては馴染みが薄く、どのように受け止められるのか懸念してしまいます。

ビーチリゾートならまだしも、東京のど真ん中で、このコンセプトが通じるでしょうか。日本人なら靴を脱ぐことにさほど抵抗はないと思います。

今の予約状況を見ると、外国人よりも日本人のほうが多いとのことですし、地方から来るエグゼクティブを狙っていくつもりなのでしょう。

ただ、1泊7万円以上の料金設定だと、よほどの人でなければ使わないでしょう。

なかなか普通の会社には受け入れられないでしょうから、どういう層を狙っていくのかあらためて考えたほうが良いかも知れません。

もう1つ高級ホテルといえば、「ザ・プリンスギャラリー東京紀尾井町」が、27日に開業します。

ここは「赤プリ」の愛称で親しまれたグランドプリンスホテル赤坂の跡地に建設中の新ホテルです。海外の富裕層などを取り込む狙いで、1泊6万円~59万円とこちらも強気の価格設定をしています。

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※この記事は7月24日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は飲食産業や外国人労働者の話題についてお届けしました。

労働者減少の影響をうけ、人手不足が深刻化している飲食産業。
大前は、その解決策となるネットサービスを紹介しつつ、「今の状況は新しいビジネスチャンスを狙えるタイミング」であると解説しています。

問題解決において、インパクトある解決策を生み出すためには、このチャンス、すなわち魅力ある市場機会を見つけることが大切です。

それに当たり、これまでの感覚や経験値に頼って闇雲に探そうとしてはいけません。

まずは市場や業界を取り巻く環境の変化に着目することが、機会の発見につながっていきます。


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