大前研一「ニュースの視点」Blog

KON621「三菱重工業・シャープ・日本電産・タカタ・国内ホテル業界~三菱自動車の最大の問題は何か?」

2016年5月13日 シャープ タカタ 三菱重工 国内ホテル業界 日本電産

本文の内容
  • 三菱重工業:三菱重工に相次ぐ試練
  • シャープ:連結最終赤字2500億円
  • 日本電産:大西徹夫氏が顧問就任へ
  • タカタ:エアバッグのリコール対象 1億台超に拡大へ
  • 国内ホテル業界:お台場の大型ホテルを買収へ

三菱自動車の最大の問題は?


日経新聞は先月25日、「三菱重工に相次ぐ試練」と題する記事を掲載しました。

三菱重工業は25日、大型客船の建造が遅れたため2016年3月期に508億円の特別損失を新たに計上すると紹介。筆頭株主でもある三菱自動車で燃費データの改ざんが発覚。相次ぎ襲いかかる試練が先行きに影を落としていると紹介しています。

上記以外にも、サンオノフレの原子炉で蒸気発生器の不具合で1500億円~2000億円の賠償が発生する可能性があり、原動機、船、自動車などトラブルを抱えている事業があちこちにあります。MRJの納品も完了しておらず、遅々として進まないうちに優位性も失われてしまうかも知れません。

各事業の業績を見ると、なんとか純利益は出しているものの、それぞれの事業で1000億円単位の損失が計上される可能性があり、全く油断はできないでしょう。

そして、三菱自動車の問題は深刻です。私が一番問題だと思うのは、三菱自動車の社内に「自分たちの会社だから何とかしなくては」という雰囲気がない、ということです。

三菱自動車は三菱重工業とクライスラーとの合弁事業としてスタートしました。その後、ダイムラーとの資本提携、トラックやバスなど大型車事業の分社化などを経て現在に至っていますが、結局のところ「銀行・商社・重工」が資本を入れて経営に口を出す体質になってしまっています。

当然のことながら、トップも送り込まれてくる形になっていて、現在の相原社長が久しぶりの生え抜きトップになるまで、三菱自動車の中から上がっていくシステムにはなっていませんでした。

ちなみに相原社長は三菱重工の元社長の息子です。三菱自動車の社内からすれば、技術的には良いものを持っていても、被征服民族のように感じているかもしれません。

商社も銀行も重工も無責任極まりないと私は思います。そして、結果としてそれが三菱自動車の社内においても、内部の人が責任を感じる雰囲気を失わせてしまったこと。これが最大の問題だと思います。

今後、三菱自動車はどうなるのか?この社内カルチャーを見る限り、おそらく第3者委員会を作ったところで改善するのは難しいと思います。

最終的には身売りしか道は残されていないでしょう。技術力を求めて、資金が豊富な中国や米国の企業が買収に名乗りをあげる可能性は大いにあると思いますし、それしかないと感じます。


債務超過のシャープは買収してもらえただけで、ありがたい


経営再建中のシャープが、2016年3月期連結決算で2500億円規模の最終(当期)赤字に陥る可能性が明らかになりました。私は以前から、決算を締めたら赤字になるのでは?と警鐘を鳴らしてきましたが、予想通りの展開になりました。

日本国内には、なんとなくシャープが鴻海に騙されたという印象を持つ人もいるようですが、実際には逆でしょう。おそらく鴻海は最終的な債務超過を知っていたと思います。債務超過の企業を買ってくれるだけでも、ありがたいと思うべきでしょう。

そのシャープの社員の受け入れ先として、日本電産が名乗りを上げています。日本電産は25日、シャープの大西徹夫前副社長執行役員を5月1日付で顧問に迎える人事を発表しました。

日本電産ではシャープの片山幹雄元社長も副会長を務めていますが、永守重信会長兼社長は、シャープ出身者の採用が100人を超えたことを明らかにし、「希望があれば、計300人ぐらいは採用したい」と述べたとのことです。

日本電産に行けば、永守会長兼社長の元、従順になる必要がありますが、それでもシャープにいるよりもマシだと思う人も多いと思います。


タカタの将来に光は見えない


タカタ製エアバッグのリコール(回収・無償修理)対象が現在の約6千万台から1億台超に拡大する見通しが明らかになりました。米道路交通安全局が5月中にも対象の拡大を決定する見通しです。

いわゆる「底なし沼」状態です。リコール費用で1兆円以上となると、そうとう厳しい状況です。タカタとしては、共同開発をしてきた自動車メーカーにも一部負担を依頼しているようですが、現状は芳しくないようです。

最も親密な関係だったホンダも、経営陣が実態を隠してきたことに嫌気が差したこともあり、今は距離を置いています。

再建といっても、タカタは東京電力のような公共事業体ではありませんから、その道はかなり厳しいものがあります。奇策を含めて考える必要があるでしょう。買収してくれる企業があるか?というと、1兆円の負担がなければ可能性はありますが、1兆円を負担するとなると無理でしょう。

そうなってくると、倒産する以外にはほとんど考えられません。非常に厳しい状況だと思います。


オークラブランドを利用した見事な転売事例


不動産大手のヒューリックは、東京・お台場の大型ホテル「グランパシフィック LE DAIBA」を京浜急行電鉄から5月に買収すると発表しました。

買収額は600億円超で、運営はホテルオークラが行うということです。京急がいかに経営下手か、を物語っています。ヒューリックは600億円で買って、運営をホテルオークラに任せるだけ、いわゆる「右から左」へ転売して収益を出す、ということです。

そもそも場所を考えれば、一泊1万円強の金額で提供しているのがおかしな話だと思います。きちんと手を入れて演出すれば、2万~4万の宿泊費を設定できるはずです。

「価値」を作るという意味では、今後海外のブランドも利用できるでしょう。とりあえず、「オークラ」というブランドを利用することで、いきなり価値創出に成功しました。これは1つの見事な転売成功事例になると思います。

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※この記事は5月8日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は三菱自動車の話題をお届けしました。

社員が責任を感じる雰囲気を失わせてしまった同社。大前は記事中、この点が最大の問題であると解説しています。

問題解決において、会社を変えるためにはトップではなく、社員一人ひとりの行動が重要となります。

トップにまかせるのではなく、当事者として自ら問題を認識し、解決の糸口を見つけ、そして反対勢力を巻き込み実行していくことが必要です。

分析のテクニックを身につけるだけでなく、前提としてこのような「姿勢」がなくては、問題解決者として成果を出すことは出来ません。

★ 問題解決のプロ斎藤顕一講師のメッセージ映像はこちら
問題解決力トレーニングプログラム(大前研一総監修)
http://tr.webantenna.info/rd?waad=VbqPsUOr&ga=WAAAAk-1

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