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税制改革 相続税の課税範囲拡大促し
EU経済 ブルガリア所得税率を大幅引き下げ方針
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●世界の流れは、相続税の撤廃へ。その理由とは?
8日、政府の経済財政諮問会議の民間議員は、
税制の抜本改革への提言を示しました。
これは、「世代間・世代内の公平」など三つの課題を掲げ、
具体策として相続税の課税範囲の拡大などを促すものです。
※「経済財政諮問会議民間議員の提言案」チャートを見る
この期に及んで相続税の課税範囲の拡大とは、
会議に出席した民間議員の見識の低さには呆れてしまいます。
そもそも、相続税は税効率が悪いものです。
日本の場合だと、約1.5兆円で税収全体の1.6%に過ぎません。
この点についてしっかり考察したのか、私は疑問に感じます。
そして、世界の潮流は相続税の廃止という方向へ
強く流れているのは明白です。
イタリア、カナダ、オーストラリアはすでに相続税が
廃止されています。
アメリカ、イギリス、フランスなど、他の大国でも、
今後相続税の廃止予定、もしくはその提案中という国が
非常に多くなっています。
※「相続税のない国、相続税廃止を検討している国」チャートを見る
相続税の廃止へと向かう理由は、大きく2つあります。
1つは、相続したときに大きく課税する従来の方法では、
相続税を納税するために土地の売却が必要になり、
土地が細分化してしまうという問題があったためです。
世界の国々では、資産課税のような形で末永く課税する
という税金ニュートラルの形へシフトしてきているのです。
もう1つには、相続税を抑えることで個人の富裕層を
呼び込めるからです。
これは、法人税を抑えて法人を呼び込む施策とセットに
なっていると考えてよいでしょう。
これらの施策というのは、今、世界の国々がボーダレス経済の
中で競争するにあたっては、至極当たり前の対策なのです。
●所得税もフラットタックスが世界の流れ。
高い所得税率がもたらす弊害とは?
日本以外の国は、一体、どういう動きをしているのか
という意味では、次のようなブルガリアの動向なども
とても分かりやすい事例です。
※「各国の個人所得税の最高税率」チャートを見る
5日、来日中のブルガリアのカルフィン副首相兼外相は
都内で日本経済新聞記者に会い、2008年から所得税率を
現在の最高25%から10%に大幅に引き下げると表明しています。
もちろん、所得税の引き下げの理由も相続税の場合と
同じ理由です。
所得税を引き下げることで自国へ富裕層を誘導したいと
考えているのでしょう。
ここ十数年で所得税のフラットタックスを採用する国が
増えてきています。
例えば、ロシア・ウクライナが13%、ルーマニアが16%の
フラットタックスを採用しています。
おそらく、ブルガリアとしては、これらの国を競争相手と
睨んだ上で、今回の10%への引き下げという決定を
下したのではないかと私は見ています。
※「フラットタックスを導入した旧共産国」チャートを見る
フラットタックスの効果の1つとして、
ロシアでは、課税を逃れるために隠していたお金が
表面に出てきて、経済が非常に好調になってきている
という点もしっかりと認識しておくべきでしょう。
そんな中、日本の所得税率は40%にのぼります。
所得税率だけを見ると、ベルギーやドイツなどが上回りますが、
日本の場合にはさらに地方税(住民税)が加算されますから、
結果として税率は50%になります。
この水準になってしまうと、「稼いでも半分も持っていかれる
なら、経費で使えばいい」という発想を誘発してしまいます。
例えば、守屋前事務次官のゴルフ接待問題なども、
ここに起因する部分が大きいと私は思います。
悲しいことに日本だけが、世界ボーダレス経済の中で、
世界の流れに逆行しています。
政治家・官僚の方は、少なくとも他の国々と競争できる
土俵に立てるように、今ボーダレス経済の中で
世界がどのように動いているのかという基本事項だけでも
勉強することから始めてもらいたいと強く願います。
以上