- 本文の内容
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- 独フォルクスワーゲン VW、アウディ車に大気浄化法違反の疑い
- 仏アレバ 三菱重工に仏アレバNPへの出資要請
- 世界ビール大手 英SABミラーに買収打診
ディーゼル市場全体が消し飛ぶ可能性もあるフォルクスワーゲンの不正
米環境保護局(EPA)は18日、独フォルクスワーゲン(VW)と傘下の独アウディの自動車で大気浄化法違反の疑いが見つかったと発表しました。EPAによるとVWなどは排ガスに関する試験をクリアするために、違法なソフトウエアを使っていたとのことです。
ピエヒ会長とヴィンターコーン社長とのお家騒動もあったフォルクスワーゲンの様子を見ていると、東芝と非常によく似ていると感じます。
競合のトヨタが米国で調子が良いところで苦戦するフォルクスワーゲンにとって、米国での成功は至上命題でした。その結果、生まれたのが今回発覚した違法ソフトだったのでしょう。
今や欧州全体を見ると、半分はディーゼルという時代ですから、この事件の影響は計り知れません。「ディーゼルは経済的に成り立つのか?」「本当にクリーンエネルギーになるのか?」という根本的な点に疑念を抱かれてしまうでしょう。
マツダもディーゼルを扱っていて、基準をクリアしたと言われていますが、煽りを食って疑われてしまう可能性も高いと思います。
どういうディーゼルは良いのか、どういうディーゼルはダメなのか、基準を設けることです。下手をするとディーゼル全てが否定される状況にもなりかねません。
フォルクスワーゲンは、トヨタ、GMと世界のトップを競っていました。3社の業績などを見ると、ディーゼル化によって急激にフォルクスワーゲンが伸びてきたことがわかります。
今年の前半だけで言えば、トヨタを抜き去りました。ベントレーやポルシェなど、ブランドも数多く保有しています。ただし時価総額はトヨタの24兆円に対して10兆円程度で、収益性が低いという課題を抱えていました。
そんなフォルクスワーゲンの焦りは、米国市場でした。欧州はともかく、かつてビートルで席巻した市場ですが、今は見る影もありません。
米国はクリーンエネルギーの規制が厳しい場所ですが、そこで地位を確立することが重要課題でした。そうして目をつけたのが、ディーゼルの規制をごまかす不正ソフトです。
検査・テストのときだけ、排ガスの数値を低く見せるというもので、実際の走行中には、検査時の40倍の数値を示したと言います。
現在、約3兆円~4兆円ほど時価総額が落ち込みましたが、これでは済まないでしょう。タカタのエアバッグ問題は「事故」でしたが、フォルクスワーゲンの場合は「確信犯」です。
また、そもそも規制をクリアしているディーゼル自体が開発されているかもわからないので、リコールで収まるかも不明です。
フォルクスワーゲンは解体に追い込まれると思います。最終的には、フォルクスワーゲンとアウディ以外の保有するブランドも売ることになるかも知れません。
このタイミングでトヨタが手を出すと批判があるかも知れませんが、ポルシェやベントレーなどをトヨタが手に入れるのも面白いと思います。
いずれにせよ、フォルクスワーゲンとアウディのみで何とか生き残るしか道は残されていないと私は見ています。
三菱重工がフランスの犠牲者にならないために
三菱重工業は24日、経営再建中の仏原子力設備大手アレバの原子炉子会社アレバNPへの出資について、仏側と協議していると発表しました。これは三菱重工にとって、毒入りきのこ弁当を食べるようなものでしょう。
仏電力公社(EDF)がマジョリティを持つということは、フランスが絡んでくるということになります。日産、ルノーでもさんざん痛い目にあっていますが、フランスは非常に余計なことをしてくる厄介な存在です。
三菱重工に出資を要請しつつ、中国企業にも同様の動きを見せています。ゆえに、この枠組に入ると、三菱重工が開発するノウハウを中国に持っていかれる可能性が非常に高いと思います。
と言って要請を断れば、協業関係から閉めだされるのは間違いありません。その場合には、国際化への対応を自力でやり直す必要が出てきます。日立・GE側と一緒に、という方向性しかないでしょう。
フランスが関わってくるとなると、主導権は握れません。行くも地獄、去るも地獄という厳しい状況ですが、それでも今の三菱重工にとってやらざるを得ない選択肢です。
ノウハウが流出しないように、いかに自制を要求できるか、課題は山積しています。フランスはイスラエルに核兵器の作り方を教えたこともあるなど、何とも「調子がいい国」で油断できません。
三菱重工が犠牲者にならないことを祈るばかりです。
世界シェアの3分の1を占める合併は、独禁法に抵触しないのか
ビール世界首位でベルギーのアンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABインベブ)は16日、同業2位の英SABミラーに買収を提案すると発表しました。両社を合算すると世界シェアの約3分の1を占めるため、規制当局が買収を認めるかは不透明とのこと。
この合併が実現すると、他の企業は「やってられない」状況になるでしょう。ハイネケンも健闘していますがまだまだ小さいですし、日本勢にいたっては逆立ちしても及びません。
この合併を認めるなら、独禁法の意義が問われると私は思います。
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※この記事は9月27日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
三菱重工や中国企業に出資要請している仏アレバ。大前は、この協業を進めた場合、三菱重工のノウハウが中国に流れる恐れがあると指摘しています。
グローバルマーケットで戦うためには自社のみのリソースでは難しく、様々な海外プレーヤーとの協業が求められます。
ただし利害関係の調整は簡単なことではないため、ステークホルダーとの関係を慎重に作り上げていくことが重要です。自社にとってのリスクを把握した上で、事業を前に進める実行力が必要となります。
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