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〔大前研一「ニュースの視点」〕KON165 原油価格が高騰する背景とは?そのメカニズムを理解して対応するべき

2007年6月8日

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 NY原油3日続伸、21日、NYMEX先物相場
 WTI6月物、前週末比1.33ドル高
 ガソリン価格も最高値更新
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●原油価格の高騰を隠れ蓑にした、
          意図的なガソリン価格の高騰はおかしい。


21日のニューヨーク・マーカンタイル取引所の原油先物相場は、
取引の指標となるWTI(ウエスト・テキサス・インター
ミディエート)の6月渡しが、


前週末より1ドル33セント高い1バレル=66ドル27セントと、
およそ3週間ぶりの高値で取引を終えました。


一方、米エネルギー省が25日に発表した
レギュラーガソリンの平均小売価格
(1ガロン=3.218ドル、1ガロン=約3.785リットル)を


日本円に換算(5月25日時点:1ドル=121.76円)すると、
1リットル当たり103円ほどですから、
まだまだ日本よりは安いと言えるでしょう。


ただ、かつての米国のガソリン価格は日本のそれの4分の1ほど
でしたから、それと比較すると随分と値上がり
していると言えます。


原油価格の高騰に比例してガソリン価格が値上がりするのは
当然かも知れませんが、原油価格と小売価格の推移を見ると
おかしな点に気づきます。


※「米・原油高騰に関連する」チャートを見る
「米・原油高騰に関連する」チャート


「米・原油高騰に関連する」チャート


「米・原油高騰に関連する」チャート


昨年の夏、ピークを迎えたWTI先物原油価格は
約1バレル=75ドルほどでした。


今回はそれほどではなく、65ドルほどで落ち着いています。


しかし、ガソリンの小売価格は昨年の夏が1ガロン約3ドル
だったのに対し、今年はすでに3ドル20セントとなっています。


原油価格の高騰を言い訳にして意図的に価格を吊り上げているとしか思えません。


まだ日本ではガソリン価格高騰の兆候は見られませんが、
アメリカの流れを受けると、現在の1リットル135円から、
かつての高騰価格である145円ほどまで値上がりしても
おかしくない状況です。


万一、そのようになった場合には、日本は石油備蓄を
全て吐き出すなどの対処をすれば、産油国も困りますから、
対応策として有効だろうと私は思っています。



●ヘッジファンドの投機的な動きに惑わされないことが、大切だ。


去年に引き続き、今年もこの時期に原油価格が高騰している
のには、理由があります。


それは、投機家であるヘッジファンドが仕掛けているのです。


ですから、毎年、あたかも年中行事のように、
決まってこの時期に同じ現象が起こるのです。


ロイヤル・ダッチ・シェルなどの石油会社が先物手当ての
ために買っている場合とは違って、実需を伴わない“買い”に
なっています。


そのため、秋口に原油の需要がなさそうだとなると、
冬が来る前に保有する6ヶ月物を手放さざるを得なくなります。


おそらく今年も同じでしょう。


暖冬になりそうだという話になれば、実需が伴わないので
冬が来る前にヘッジファンドは売りに出ます。


そして、結果として、原油価格は下落してくるでしょう。


現在、原油先物を買っているのはその8割以上が
実需家以外の石油トレーダー、金融機関、ファンド等
ですから、このような現象になるのは避けがたいと言えます。


ファンドや金融機関等の投機的理由のためだけに、
原油価格やガソリン価格が変動するというのは、
本質的ではありませんし、何ともみっともない話です。


ただ、ここ数年の動きを見ていると、そのやり方やパターンも
分かってきましたから、私たちとしては慌てることなく、
粛々と対応することが大切だと思います。


表面的な現象だけを見て、感情的に対応するだけでは
何事も上手く行かないでしょう。


現象の背景やパターンなどを見抜き、論理的な対応を取ること。


起きた現象に左右されるのではなく、自らの判断した
考えによって物事を進めていくことが大切だと私は思います。


ぜひ、これからのガソリン価格の変動をそのような目で
見て判断してもらいたいと思います。


                                  以上


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