大前研一「ニュースの視点」Blog

KON543「トヨタ自動車・ヤマハ発動機・ソニー・ソフトバンク~人を巻き込む技術を考える」

2014年11月14日 ソニー ソフトバンク トヨタ ビジネスコミュニケーション ヤマハ

本文の内容
  • トヨタ自動車 連結純利益1兆1268億円(14年4~9月期)
  • ヤマハ発動機 連結純利益600億円(14年12月期予想)
  • ソニー スマホ「撤退せず改革」
  • ソフトバンク 「金の卵」を生み続ける

トヨタは2兆円もの資金をどう使うべきか?


トヨタ自動車が5日に発表した14年4~9月期の連結純利益が過去最高を更新しました。主力の北米市場で販売を伸ばし、新興国や消費増税後の回復が遅れる国内の低迷をカバーしました。

また、15年3月期の連結業績予想は上方修正しています。売上高は前期比3%増の26兆5000億円、営業利益は9%増の2兆5000億円、純利益は10%増の2兆円を見込んでいるとのことです。

好調だった2008年をも上回る数字になっており、純利益で2兆円というのは、すごいレベルだと思います。

唯一の課題と言えば、この2兆円というお金をどう使うのか?ということでしょう。

トヨタが一番避けたい事態は、フォルクスワーゲンとフィアットクライスラーの合併だと私は思います。フォルクスワーゲンの欧州車をクライスラーの販売網を活用して米国で販売することができるからです。

フォルクスワーゲンは販売台数約1000万台でトヨタと争っているわけですが、フィアットクライスラーを買収すると、それだけで400万台プラスになります。

先日、フィアットクライスラーは上場しましたが、時価総額は1兆円です。私がトヨタの経営者なら、ためらわずに買収を決断します。2兆円の純利益の半分で買えるわけですから、全く問題ありません。しかも2兆円は純利益ですから、キャッシュフローで見ればさらに余裕があります。

フォルクスワーゲンとの競争に終止符を打つには、この買収が最も効果的だと思います。トヨタはこのような買収を好まない傾向にありますが、放っておくと逆にフォルクスワーゲンに買収されてしまうかも知れません。

そうなってしまったら、もう遅すぎます。その前に手を打って、いち早く「ダントツ」という状況を創りあげるべきだと私は思います。

市場でダントツの状況を創りあげて好調を見せているのが、ヤマハ発動機です。ヤマハ発動機は6日、2014年12月期の連結純利益が前期比36%増の600億円になる見通しだと発表しました。

ヤマハというと2輪車を思い浮かべる人も多いかも知れませんが、2輪車の市場ではホンダに太刀打ち出来ていません。ヤマハの調子が良い理由は、マリン関連です。マリン関連の利益は400億円にも達し、世界でもダントツの1位です。

かつては、マークルーザーやボルボも競合していましたが、今は全く相手になりません。完全にヤマハが独占し、圧倒しています。市場を完全に独占したときの利益・強さというのを、あらためてヤマハを見ていると感じます。

 

混迷のソニー。敢えて「スマホ撤退しない」と発言する必要がない。


ソニーの吉田憲一郎最高財務責任者(CFO)は日経新聞のインタビューの中で、今期大幅な赤字を見込むスマホ事業について構造改革の具体案を来年2月頃に示すとしながら、中国で展開している10機種のうち、数機種の中国専用モデルの開発を今期中に中止することなどを明らかにしました。

ソニーのセグメント別の売上を見ると、金融は変わらず黒字、またゲームは今後期待できるかも知れないという状況です。一方で、テレビは大した利益を出しておらず、モバイル関連は完全な赤字です。

このような状況を受けて、吉田CFOは「次回の説明会でスマホの方向性を示す。スマホは撤退しない」と発言したのでしょうが、私には理解に苦しみます。わざわざ「撤退しない」などと発言したら、「撤退を検討している」ということを明言しているようなものです。

平井社長が示す戦略と矛盾します。CFOという立場にある人がこのような発言をするのは禁句だと私は感じます。

 

ソフトバンクは金の卵を産むガチョウ。孫社長のストーリーテリング力。


インターネットメディア・ログミーは、4日、「ソフトバンクは”金の卵”を生み続ける」と題する記事を掲載しました。

これはソフトバンクの第2四半期決算説明会で孫社長が語った話です。私もこの孫社長の話を聞きましたが、正直、驚きました。孫社長のストーリーテリングのレベルは高いと知っていましたが、ここまで見事な話をするのかと感じました。

第2四半期決算説明会レベルで、あそこまでの話をされてしまうと、他社は全く歯がたたないのではないでしょうか。イソップ寓話の金の卵を産むガチョウになぞらえて、ソフトバンクがまさに金の卵を産むガチョウだと紹介していました。

米ヤフーやアリババなど、これまでの投資の成功事例を見ればベンチャーキャピタルよりも優れた数字を残しているということ。

ウォーレン・バフェット氏が経営するバークシャー・ハサウェイには、バフェットプレミアムが乗っかった時価総額になっている一方で、ソフトバンクの時価総額は逆に半減しているが、これは孫正義ディスカウントであるということ。

バフェット氏がその実績から高い評価を受けるのは正しく、ソフトバンクもいつの日か「もしかしたら金の卵をまた産んでくれるかもしれない」という市場からの評価が、時代の経過とともに高まってくると思っていること。

そして、これからはインドへ投資をしていくということ…。

正直に言えば、アリババがなければ、孫正義ディスカウントというほどの数字ではないのでは?など、いくつか指摘したいポイントはありました。

しかしそれを差し引いても素晴らしいプレゼンテーションだったと思います。ぜひ、実際の孫社長の説明動画を見て欲しいと思います。

 

今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


自社を「金の卵を産むガチョウ」と表現した孫社長。今回は、ソフトバンクの決算説明会に関する話題をお届けしました。

問題解決に必要なのは情報収集力や分析力だけではありません。解決策実行のため、関係者を巻き込むプレゼンテーション力も必要です。

いくら長い時間をかけて作成した成果物でも、プレゼンテーションの時間は15~30分ほど。

このような短い時間の中で、実行に向けた情熱を聞き手に伝えられる、高いレベルの技術が求められます。

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